6-26 Major Turn-Round
あと2日で「Quit30 Huge Data」のBD/DVDがリリースされます
7/9にはジャケットも公開されました
”「宇宙から飛来した物質」をイメージしたデザイン”だそうです
youtubeにも「Huge Data」の「Seven Days War」「Still Love Her」「We love the EARTH」に加え、
「Quit30」の「君がいてよかった」「The Point of Lovers' Night」のサンプル動画がアップされています
小室さんはglobe「Remode1」のレコーディングを終えたようです
2枚組20曲入りで、さらに冬に「Remode2」も出す予定だとか
え、TMでもそれくらいやってよ!…とも思いましたが、
TMは新曲をたくさん作ってくれたしライブもいっぱいあったし、
かけてくれたエネルギーを考えれば文句は言えませんね
globeはライブをやれない分リミックスに力を入れているんでしょうし…
個人的には、最近小室さんが達観を始めたのが少し心配です
たとえば7/13のtweetでは、
とかつぶやいています
「僕はもう無理だけど」ですか…
こういうことをこの人が言い出すのは意外です
また7/5のTweetには以下のようにあります
今の仕事が自分の人生の最後の波だと言っています
なんかもう音楽人生終わりモードみたいな…
2012年のTM再始動の頃の、音楽を楽しんでいた感じとはかなり違うものを感じます
TMは30周年でケリをつけ、今年のglobeで音楽活動ひと段落みたいな感覚なんじゃないかと不安になります
しかも曲が作れなくてスランプになっているわけではないのにこの発言…
まあまた気分次第で発言も変わるかもしれませんけど
そういや「TK Dance Camp 2015」の計画は流れた感じです
最難関ぽい安室奈美恵あたりの調整が付かなかったんでしょうか
7/10・11には大阪・東京でクラブイベントがあり、
大阪では鈴木亜美さん、東京ではMarc PantherもDJで共演したようです
7/26には愛知でもイベントがあるようです
7/12には小室さんが「関ジャム 完全燃SHOW」に出演し、
自慢話したりシンセのパフォーマンス披露したりしていました
ただ個人的には共演のJUJUさんが鬼平犯科帳の大ファンで、
楽しそうにプレゼンしていた方が印象的でした(しかもさいとうたかをの漫画の方)
7/22にはJFN系列「坂本美雨のDear Friends」に出演します
美雨さんの産休直前です
出演日から見て、TMのBD/DVDの宣伝もしてくれると思います
7/29には恒例の「FNSうたの夏まつり」に出演します
Marc Pantherも出るようなので、globeの曲をやるんでしょうか
歌はE-girlsあたりがやるとかして
木根さんは、いよいよレギュラー番組「木根テレ!」が始まりました!
…が、なんですかこれは?
おっさん(木根&徹貫)がしゃべるだけの通販番組でした
基本的に毎回二人が懐メロCDのセールストークをして、
あと毎回最後に一曲二人で懐メロを演奏します
7/18には湘南の由比ヶ浜でロケもやってきた模様
正直、無理して見なくても良いとは思いましたが、
一応毎回TMの話もしてくれています(第3回までは)
3回目は西城秀樹さんのポップンロールバンドという、
TMファンにとってもなかなかコアな話題が出ました
7/15には「水曜日のダウンタウン」に出演しましたが、
木根さんは芸人が出すネタにコメントする側の立場で、
正直荷が重いと思いました
7/16には「ダウンタウンDXDX」に出演し、
こちらでは昔のTM話などをしていました
あと、すごい久しぶりにパントマイムを披露していました
まだ覚えてたんだ!?
また木根さんは「伊藤銀次の「POP FILE RETURNS」第114回・115回に出演し、
7/10・17にネット上で公開されました、
各40分以上のボリュームです
7/17公開分のトークではTM初期の話もしていました
初期のライブでは機材を同期させて流すと止まる恐れがあったため、
テープに録った音を流していたとか、なかなか興味深いことを暴露していました
多分「Electric Prophet」の頃の話だと思うのですが、
だとすれば、以前ポコ太さんが推測していたことがビンゴだったことになります
以上、近況のまとめでした
それでは本題に入ります
-----------------------------
TM NETWORK 9thアルバム「Major Turn-Round」は、
2000/12/25にリリースされた
インディーズレーベルROJAMからのリリースだったため、
セールスなどはチャート類に公表されていない
ただ本作は先行シングル3枚と異なり、
TSUTAYAと新星堂限定で店頭販売も行なったため、
おそらくシングルよりはまともに売れただろう
なおROJAM版・TSUTAYA版・新星堂版は、それぞれCDのデザインが異なった
ROJAM版は小室・ウツ・木根・3人の写真がプリントされる4パターンがあった
ROJAM版は通販のため、どれが来るかは運次第である
熱心なファンは全種類収集やお目当てバージョン獲得のため、
一人で何枚も購入する場合もあったが、
売り方としてはいささか疑問を感じさせるところもあった
ともかく1999年5月の再始動宣言から1年半をかけて、
ようやくTM NETWORKのオリジナルアルバムリリースが実現した
作品の内容以前に、まずはアルバムを作ることができたことが重要である
小室は2000年にMIYUKI、坂口実央、BALANCeなど、
多くの新人歌手・ユニットのプロデュースを始め、
いずれもアルバムリリースの予定があったが、どれもシングル数枚で終わった
シングルセールスの不振でSONYでのアルバムリリースを取りやめたTM NETWORKも、
この一つになる可能性は十分にあった
だが小室は2000年の後半を費やしてTMのアルバムを完成させ、
これをひっさげたツアーも敢行した
TMファンから見れば当たり前に見えるこの成果も、
当時の小室周辺を見れば、極めて特異で幸運なものだった
2001年以後、TM NETWORKをめぐる状況は悪化の一途をたどるが、
それでも2000年のアルバムリリースと全国ツアーという実績は、
ファンの離脱をある程度のところで食い止める役割を果たしただろう
ひいてはTMの継続を可能にしたと言っても良い
実績が0か1かの差は、非常に大きかったと思う
「Major Turn-Round」のコンセプトはプログレッシブロックだが、
この方針は7月の「Log-on to 21st Century」リハーサルの時に決まり、
先行シングル「Ignition, Sequence, Start」で示されていた
本作は全7曲の内、1曲目「Worldproof」はSE、
4~7曲目はバラードかミディアムテンポであり、
全体として非常に地味な構成である
ノリの良い曲は2曲目「Ignition, Sequence, Start」だけだが、
それも構成が複雑で、必ずしも受け入れやすい曲ではない
典型的なTM的ポップチューンを求めるファンには不満もあっただろう
だが本作はそもそも曲単位で聞くものではなく、
全体を通して1枚の作品として聞くべきものである
最後まで聞けば、本作にポップチューンなど入り込む余地などないことは分かるだろう
楽曲集ではなくアルバム1枚で一つの世界を作るという構想は、
かつて「CAROL」でも目指されたが、
その頃はEPIC/SONYの稼ぎ頭という立場上、
売れ線楽曲を入れることも求められ、
結果としてLP2枚組み中の1枚のみ「CAROL」組曲という、
中途半端な内容になった
これに対して「Major Turn-Round」は、
アルバム全体で一つの世界を描ききった
レコード会社上層部の意向を気にする必要のないインディーズという条件を最大限に生かした内容であり、
小室のROJAM移籍の最大の成果は、
本作のリリースにあったと言っても良いかもしれない
なおアルバムにはCDエクストラが付いており、
パソコンにセットするとCD購入者限定BBSへのリンクが開かれるというサービスがあった
(2001年初めにサービス終了)
「Major Turn-Round」というタイトルは9月下旬に発表された
タイトルは「メジャーがひっくり返る」とのことで、
「MAJOR」をひっくり返した「ROJAM」の社名を意識しており、
メジャーになる以前の「初心に帰る」ことを含意していた
70年代プログレは3人が若い頃に通ってきた道であり、
これに取り組むことはまさに「初心に帰る」試みだったのだろう
なおタイトルの「Turn-Round」は、
映画「Perfect Storm」で漁船が引き返すシーンのセリフ「Turn Around」から着想を得たらしい
小室によれば、「Turn Round」は「Turn Around」よりもポジティブなニュアンスだとのことである
(本当にポジティブなのかは知らない)
アルバムのジャケットには、
先行シングル2枚と同様に赤青オレンジ三色各1個の球体が描かれる
この球体は「Ignition, Sequence, Start」「We Are Starting Over」ジャケットにも描かれたが、
これらよりも接近した視点である
オレンジから青の球体には一筋の光が向かっているが、
これは各球体=TMメンバーのネットワークを表現するものだろう
本作は3人が影響を受けたプログレ作品のオマージュ的要素が強い
何よりも目立つのが「Major Turn-Round」のロゴで、
YESの「Close To The Edge」のロゴを意識しているのが明らかである
ジャケットデザインはWilliam Roger Deanに依頼されているが、
彼は「Close To The Edge」をはじめとするYES作品のデザインも手がけた人物である
アルバムの構成を見るに、
半分の時間は長大な「Major Turn-Round」組曲で占められ、
その中は「Ⅰ First Impression」「Ⅱ Second Impression」「Ⅲ Third Impression」の3楽章に分かれている
これは楽章名も含め、Emerson, Lake & Palmer「Brain Salad Surgery」の「Karn Evil」組曲と同じである
「Major Turn-Round」組曲は、
ある男性の内面の展開を表現したもので、
小室のイメージでは、場面は未来都市の生活空間だという
「Ⅰ First Impression」の始まりは、
マリブのキッチンの換気扇の音を加工したもので、
換気扇をぼんやりと眺めている男の姿がイメージされている
次の「Ⅱ Second Impression」は、
男が自分を見つめなおす場面であり、
最後の「Ⅲ Third Impression」は、
回想から現実に戻った後に見える未来の情景を示したものである
それは「光は見えてるんだけど、それほど楽観できない未来」らしい
作詞を担当した小室みつ子は、
閉じた世界でのたうっている心が、
少しずつ外への開放に向かうイメージと言っている
主人公の精神世界を長大な組曲で表現する手法は、
プログレ作品ではしばしば見られるものではあるが、
その代表作として「The Dark Side of the Moon」「The Wall」などPink Floydの作品群は小室の念頭にあったものと思う
この頃のインタビューでもPink Floydの話題はよく出ているし、
別章で触れる「Tour Major Turn-Round」でもPink Floydを意識した演出が見られた
つまり「Major Turn-Round」は、
YES・ELP・Pink Floydというイギリスの古典的三大プログレバンドを意識した作品だった
「Major Turn-Round」の制作過程を見てみよう
小室が8月初めにハワイで先行シングル「Ignition, Sequence, Start」jの制作に入り、
9月前半には次の「Major Turn-Round」組曲にも取り掛かっていたことは、
以前触れたところである
9/14には木根がハワイで小室と合流し、
日本で歌入れした「Ignition, Sequence, Start」の音源と、
「We Are Starting Over」のデモ音源を渡している
この時木根はさらに小室から、
アルバム用に6/8拍子の曲と3/4拍子の曲を作るよう注文があった
これがそれぞれ「Pale Shelter」「Cube」となる
木根は9/14「We Are Stating Over」をレコーディング、
9/15「Pale Shelter」作曲、
9/16~17「Cube」作曲と、実に調子よく曲が出来た
帰国は9/18のことである
このように見ると、
7月にシングルとしてリリース済みだった「MESSaGE」を含め、
インタールードの「Worldproof」を除く6曲は、
リリース3か月前の9月中旬には原型ができていたか制作に入っていたことになる
さらに当初の計画では、
「10 Years After」「Happiness×3 Loneliness×3」「80’s」
などTRUE KiSS DiSC時代の楽曲も収録の予定だったらしい
9/28「Beat Club」で放送されたハワイでの木根・小室対談で、
小室がこのことを明言した上で、合計12曲前後になると言っている
(「it’s gonna be alright」は忘れていた?)
結果としてTRUE KiSS DiSC期楽曲は収録されなかったが、
これは後にSONYからストップされたためか、
TM側の判断で収録を取りやめたものか、はっきりしない
このことは、後まで1999年の楽曲の存在感が薄くなる原因となったが、
「Major Turn-Round」という作品に統一性を持たせるためには、
収録しなくて正解だったと思う
この後もレコーディングは続いた
レコーディングはハワイの小室と東京のウツ・木根の間で、
インターネット回線で音源をやりとりすることで行なわれ、
3人が一緒にレコーディングすることは一度もなかった
小室は他の仕事も重ねていたためか、
10月にはシングル「We Are Starting Over」の制作に遅れが出ており、
アルバム曲の制作も半中断状態だった可能性がある
そのような中で10/24には3人がニューヨークで合流し、
10/27まで写真撮影や打ち合わせを行なっている
アルバムのジャケットもこの時に撮影された
この時点で残っていたのは、
「Pale Shelter」「Cube」「Major Turn-Round」の3曲だった
ウツ・木根は帰国後の10/31から東京で歌・ギターのレコーディングを始めた
スタジオには葛城哲哉や小室みつ子も詰めていた

レコーディングスタジオの木根
「Major Turn-Round」では、
シングルを含む全曲の作詞を小室みつ子が担当することは、
8月には決定していた
「Pale Shelter」「Cube」の作詞は10/28に依頼されたとされるが、
楽曲データがこの日に完成してみつ子に送られたということだろう
アルバム全曲の作詞を一人が担当したのはTM史上この時だけで、
みつ子にはプレッシャーだったらしい
その意味で本作は、実はTM史上みつ子成分がもっとも濃い作品となっている
同時期にロスアンゼルスでは、
TOTOのドラマーSimon Phillipsがレコーディングに参加していた
小室は80年代にTOTOの影響を大いに受けており、
TOTOのオリジナルメンバーでないとはいえ、
Simonにレコーディングに参加してもらえたことは光栄だっただろう
ベースのCarmine Rojasも同じスタジオにいたものだろうか
CarmineはかつてDavid BowieやRod Stewartのツアーやレコーディングに参加しており、
David Bowieファンの小室やRodファンのウツには嬉しい人選だったと思われる
2人の演奏は「Ignition, Sequence, Start」「Major Turn-Round」で味わうことができる
木根曲の歌入れは11/2~8にかけて「Cube」「Pale Shelter」の順に行なわれた
だがレコーディングのタイムリミットが2週間後に迫ったこの時点で、
肝心の「Major Turn-Round」はまだメロディができていなかった
これは1年前の「Happiness×3 Loneliness×3」と同じ状況である
すでにアルバムリリース日が決定していただけでなく、
一か月後にはツアーも控えていた以上、日程の変更は許されなかった
小室はみつ子に「なんか言葉を書いて送って」と頼み、
みつ子は「テーマみたいな散文」を送り、
小室はそれを組み替えて仮歌にしてメロディを作った
日本には小室から1日に何度も制作中の音源が届くという緊迫した状況だった
こうした中、11/13にようやくメロディ入り音源が出来上がった
みつ子は1日で「Ⅰ First Impression」、
その翌日に「Ⅲ Third Impression」の作詞を、
2晩半徹夜状態でやり遂げた
この難解な曲に2日で詞をつけることは困難を極めただろう
歌入れは11/15~18に「Ⅰ First Impression」「Ⅲ Third Impression」を各2日ずつ使って行なわれた
日本で作詞・歌入作業が行なわれている間、
小室は11/14~17にシングル3曲のアルバムバージョン制作を行なった
その後「Major Turn-Round」の歌入り音源のミックス作業に入ったと考えられるが、
11/20にはスタジオ作業を終えていたようで、11/21には日本に帰国している
マスタリング作業はその後もアメリカで続けられ、11/28に完了した
優先的にマスタリングされたと思しき「Major Turn-Round Ⅰ First Impression」は、
11/27にROJAM.COMのサイトで無料ダウンロード第三弾として公開されている
ここまでのレコーディング日程を見るに、
特に11月のアルバム曲レコーディングはかなり差し迫ったスケジュールで行なわれた
小室は大作「Major Turn-Round」で行き詰っていたようだが、
それまでのプロデュース作品群とは異質の楽曲なだけに、
確かに大変だっただろう
ただこの頃は小室が細木数子に傾倒し始める頃で、
スランプ的状況もあったのかもしれない
以下ではアルバム収録曲について触れよう
ただし先行シングル3枚は「Album Version」も含め、
すでにシングルを扱った際に触れているので、ここでは触れない
まず1曲目「Worldoproof」は、
事実上次の「Ignition, Sequence, Start (Album Version)」のイントロである
曲というよりもSEであり、
具体的にはワイヤレスマイクを海に落として録音した音である
歴代TMインストの中でも、もっとも地味な曲といえるだろう
正直次に続けて1曲にしてもまったく問題はないと思うが、
さすがに曲数が6曲なのはまずいということになったのだろうか
なお本作については、制作日程が一切分からない
ほとんど時間は使っていないのだろう
小室によれば、海は外から見た平穏さに対して、
内には暗澹さが秘められており、
いわば別世界への扉だということで、
そこに落ちていく音によって、
別世界に入るリアリティを表現したかったとのことである
ここから3曲目の「Major Turn-Round」組曲までが、
本作の核となる攻めのプログレ楽曲群となっている
「Major Turn-Round」についてはすでに延々と触れてきたが、
進行とともに次々と場面が変わる曲である
3部構成で、各10分程度、合計32:22の大作で、
一曲でアルバムの半分を占めている
TM史上最長の曲であり、今後もこれを越える曲は出ないだろう
(なお小室ソロでは「Far Easter Wind -Completer-」収録の「五常」が73:22で最長)
「Ⅰ First Impression」は、冒頭から重い曲調で始まる
「広大なのに閉じているこの世界 ただ君とつながりたい」
という歌詞からも分かるように、
「君」との接点のない閉塞した世界を嘆く主人公の心情がテーマである
3分半前後、「Right!」の掛け声とともに曲調が一転して明るくなる
だが歌詞の内容は、部屋の中で苦悩する主人公が「君」を求めるものである
5:40頃からは、歌詞のない沈んだ暗い曲が続く
主人公の沈んだ心情を反映しているのだろう
1分半ほど経つとまた曲が変わり、歌も少し入る
「You know, we can’t replay. 過ぎた日はもう二度と繰り返せはしない…」
という歌詞からは、
主人公が「君」との関係構築に失敗した過去を悔いていることが分かる
9:00頃からまたアップテンポな展開になるが、
緊迫感溢れる曲調とディストーションのかかったウツのボーカルからは、
退廃的な雰囲気が漂っている
「I’m in a cage」「無理矢理笑ってMidnight TV show」
などの歌詞を見るに、
絶望した主人公が現状を忘れようと自暴自棄になっているようだ
この部分、レコーディングでウツが苦労したそうである
最後は「missing you missing you…」と繰り返し、
別れた相手への想いをふっきれない苦悩が強調されて終わる
最後にボリュームを上げながら加わるシンセの演奏が、
個人的には大好きである
結局主人公は、落ち込んだ暗い精神状態から始まり、
救われるすべもないまま狂乱の度合いを高めて終わるのである
13分くらいからは中間のインスト部分、
「Ⅱ Second Impression」であり、
小室によれば過去の回想シーンである
曲調は「Ⅰ First Impression」から継続しており、
主人公は苦悩しながら過去を振り返っているようである
激しく重いギターが、絶望感を強調する
15分半頃から8分間は、小室のピアノがメインとなり、
ジャズ的な即興の要素も取り込み、時折激しい展開もあるものの、
全体としては穏やかな雰囲気になっていく
主人公が冷静になっていく様子を表現しているのだろう
「Major Turn-Round」では基本的に、
SimonとCarmineの演奏の上に小室のシンセ・ピアノがかぶせられたが、
「Second Impression」では小室の半即興のピアノが先に録音され、
その上にSimonらが音を重ねたという
その意味で「Second Impression」は、
小室のターンにSimonとCarmineが競演している部分と言えるだろう
なおこの部分は2000年末、
麻薬・覚醒剤乱用防止キャンペーンのCMに使われた
ただしテレビをよほどよく見ない限り、
TM NETWORKの曲と気づくことはなかっただろう
(よく見るとTV画面の端に「TM NETWORK」とあった)
23分半から9分間は最後の「Ⅲ Third Impression」である
冒頭から明るい曲調であり、主人公が過去から解放された印象を受ける
20分を越える長いタメの後、ここでようやく主人公は救われる
みつ子の歌詞もそれを表現しているのだろう
この後は「Turn round, turn around」のフレーズが繰り返される
過去にとらわれていた状態から、
未来を向いていた以前の状態に戻るということだろうか
26:15頃から曲調が変わる
歌は「君」との過去を忘れないことを誓う部分である
ウツ・木根の「I never forget」のところのコーラスワークと、
その後の激しいシンセはとてもかっこよい
27分からは1分ほど、
「something new, something good」のフレーズが繰り返されるが、
これは葛城哲哉のボーカルである
曲が32分あると気にならないが、
1分続けて葛城ボーカルが入っているというのは、
TM曲ではかなり特殊だろう
28分からは曲がクールダウンする
哀愁漂うギターが印象深い
ウツはじっくりとロックバラードとして歌い上げる
この部分の歌詞を見る限り、
主人公はなおまだ「君」との過去を忘れられずにいるらしい
結局主人公の葛藤が解決したのかどうか明確にされないままに曲は終わる
苦悩、回想、解放というハッピーエンドで分かりやすく終わらないところが、
この曲のミソなのだろう
ここまで32分、10回の場面転換を見せる大作だった
小室としては全力でやりきったとも言えるかもしれない
ウツや小室みつ子も、よくやったと思う
次の曲は4曲目、「Pale Shelter」である
小室のリクエストで木根が6/8拍子で作ったことはすでに述べた
ミディアムテンポの曲で、Aメロは切なげなピアノが雰囲気を作っている
Bメロからサビに向けては意外なほど盛り上げる
この曲は「Major Turn-Round」の一部に入れる案もあったらしい
(その場合、「Major Turn-Round」は小室・木根共作になったのだろうか)
ウツがこのアルバムで一番好きな曲だとのことで、
2009年には「SMALL NETWORK」でこの曲を演奏している
「Pale Shelter」のタイトルは、
都会を「青白い避難所」に見立てて名付けられた
「約束の場所はどこにもみつからない」とあるように、
全体としては救いのない場として描かれる
つまり「Pale Shelter」とは、
ネガティブなイメージで描かれた都会を表現したものである
具体的な場としては、南米の街の風景を意識しているという
「探し続けたShining El Dorado」というフレーズも、
南米が舞台であることを反映している
「白く乾いた道の向こうに荷台を引きずる痩せた馬が行く」
「残り少ないコイン数えて壁際寄りかかる旅人たち」
などの部分も南米のイメージなのだろう
歌詞のテーマは、閉塞した都市に守られて生きて行くのではなく、
そこから出ようという意志である
「Pale Shelter」は主人公にとって、
乗り越えるべき故郷を意味するということになろうか
歌詞の雰囲気はかなり異なるが、
「Get Wild」「Resitance」「We Are Starting Over」など、
先行する典型的なみつ子詞とテーマは共通している
みつ子はアルバム全体に漂う閉塞感の中で、
この曲からは開かれた場所というイメージを受け、
このような歌詞にしたのだという
閉塞しているけれど開かれてはいる場ということなのだろう
5・6曲目は「We Are Starting Over」「MESSaGE」の「Album Version」で、
ともに先行シングルのリミックスである
プログレのコンセプトが決定する以前に作られた曲で、
その点でアルバムの中では異質な部分とも言える
最後の曲は「Cube」である
木根が小室から3/4拍子の曲を依頼されて作ったことはすでに述べたが、
小室はモデルとして、Pink Floydのビデオを見せたという
具体的にはBilly Joel「Piano Man」をPink Floydがピアノで演奏するシーンである
「Cube」で歌がオクターブ上がるところは、
「Piano Man」に基づいているという
木根はこの曲を依頼された時に難色を示したが、
Aメロだけで良いと小室から説得されて作ったのだという
メロディが基本的に同一の展開で最初から最後まで通されているのも、
Aメロだけで作ると言う条件があったからだろう
小室は本アルバムの木根曲でも、「Cube」を特に絶賛しており、
「20年か30年に1曲の名曲」と称えたという
小室は、木根の仮歌入れの場に現れた時、この曲を聞いて気に入り、
その場で木根が撮ったピアノパートの上にオルガンパートを加え、
木根の仮歌の上に小室が即興でハモるという、
セッション感覚でデモを作成した
「Cube」はピアノとオルガンのみのシンプルな曲だが、
それが曲の魅力をよく伝えている
しかも歌は1番のみ、2分あまりで終わり、
その後はピアノとオルガンのセッションが続く
最後はオルガンの長い間奏をはさみ、
ウツの優しい歌でしっとりと終える
歌い手としてはこれからというところであえて終わる構成にしたというが、
すっきりと終わらせない構成は「Major Turn-Round」にも通じている
「密室みたいに世界は息苦しい」のフレーズに見るように、
歌詞はアルバムのテーマである閉塞感をよく反映する
「欲しいのはただどこかにいる君だけ」というフレーズも含め、
「Major Turn-Round Ⅰ First Impression」
と近い雰囲気の歌詞である
みつ子によれば、「Cube」の詞では俯瞰の視点からズームインして、
空から主人公の心へと迫っていくという手法を取ったのだという
「Cube」(立方体)という曲名は意味がよく分からない
「cube」という単語は歌詞の中では、
「I'm in the cube」「I don’t care what’s going on out of my tiny and empty cube」の部分で用いられている
みつ子自身のサイトでは、これらのフレーズは、
「僕は立方体の中」「この空っぽな立方体の外で何が起こっているかなんてどうでもいいんだ」と訳されている
このcube(立方体)は外から主人公をとらえているものらしい
主人公は「どこかにいる君」に対して「届くはずのない声で」「Come back to me」と叫び続けるが、
それは自分がcubeから出ることができないからである
主人公は外に出られないからこそ、
外で何が起こっていようが気にならないのだ
ただ実際にここで描かれているのは、
「君」を失って外に出る気力が出ない主人公の姿と考えられ、
主人公はそのことを「cubeの中にいる」と言っているのだろう
ここまで書いてもよく分からないのは、
主人公をとらえるものをなぜ「cube」と表現しているのかである
鉄筋コンクリート製の四角い無機質な部屋をイメージしているのかもしれないが、
実は他にもこの言葉には背景がある可能性がある
映画「キューブ」である
これは1997年公開のVincenzo Natali監督の映画で、立方体の迷宮から脱出する話で、
ウツが「Tour Major Turn-Round」の後で刊行された「Third Impression」の中でウツが挙げたお勧め映画の一つとして、これを挙げている
(しんさんより情報提供)
ウツはこの映画の話を知り合いから聞いて、
DVDを借りて見たのだという
この映画は日本では1998年9月に公開され、翌年3月にDVD化された
ウツが見たのはこの後となるが、
タイミングから見て曲名に反映された可能性は十分にある
また立方体の迷宮に閉じ込められるという設定は、
閉塞感を前面に出したアルバムのコンセプトにもよく合っていた
そこでウツやその他の関係者は、
作詞に先立ってこの映画を持ち出してきたのではないだろうか
この曲の作詞やレコーディングを行なった10~11月頃は、
ウツ・木根・みつ子が一緒にスタジオで作業を行なっていたから、
アイデアを出し合う環境もあっただろう
だとすれば人をとらえるものの象徴として「cube」の語を用いたのは、
この映画を前提としていると考えられよう
歌詞はともかくとして、
「Cube」は小室が絶賛した通り、
アルバムのラストにふさわしい名曲だと思う
再始動前とは異なる木根の魅力が存分に発揮されている
この曲は「Tour Major Turn-Round」でも、本編最後という重要な箇所で演奏された
その後二度と演奏されないだろうと思われたが、
2014年「the beginning of the end」で、
まさかの新アレンジ・新歌詞版が披露されている
(2015/7/20執筆、2016/7/13、2020/4/4加筆)
7/9にはジャケットも公開されました
”「宇宙から飛来した物質」をイメージしたデザイン”だそうです
youtubeにも「Huge Data」の「Seven Days War」「Still Love Her」「We love the EARTH」に加え、
「Quit30」の「君がいてよかった」「The Point of Lovers' Night」のサンプル動画がアップされています
小室さんはglobe「Remode1」のレコーディングを終えたようです
2枚組20曲入りで、さらに冬に「Remode2」も出す予定だとか
え、TMでもそれくらいやってよ!…とも思いましたが、
TMは新曲をたくさん作ってくれたしライブもいっぱいあったし、
かけてくれたエネルギーを考えれば文句は言えませんね
globeはライブをやれない分リミックスに力を入れているんでしょうし…
個人的には、最近小室さんが達観を始めたのが少し心配です
たとえば7/13のtweetでは、
世界的に有名になった、 バンドのどきュメントを、 眠れなくって観ちゃった。 僕は、残念ながらもう無理だけど あと10年くらいで、日本から、 もしかしたら、いよいよ登場 する気もする。 僕は21世紀の 黒船は観れたし、乗れたなぁ。 まだまだ繋ぎ役はやるよ〜。
とかつぶやいています
「僕はもう無理だけど」ですか…
こういうことをこの人が言い出すのは意外です
また7/5のTweetには以下のようにあります
人生、発想の波の3回目、 まあ、最後だとは思うけど、 それの象徴が、REMODE1.2 その他今年から、来年出来上がる ものな気がしてます。 今も、音が鳴って寝れないんだよ。 嬉しいけどね。
今の仕事が自分の人生の最後の波だと言っています
なんかもう音楽人生終わりモードみたいな…
2012年のTM再始動の頃の、音楽を楽しんでいた感じとはかなり違うものを感じます
TMは30周年でケリをつけ、今年のglobeで音楽活動ひと段落みたいな感覚なんじゃないかと不安になります
しかも曲が作れなくてスランプになっているわけではないのにこの発言…
まあまた気分次第で発言も変わるかもしれませんけど
そういや「TK Dance Camp 2015」の計画は流れた感じです
最難関ぽい安室奈美恵あたりの調整が付かなかったんでしょうか
7/10・11には大阪・東京でクラブイベントがあり、
大阪では鈴木亜美さん、東京ではMarc PantherもDJで共演したようです
7/26には愛知でもイベントがあるようです
7/12には小室さんが「関ジャム 完全燃SHOW」に出演し、
自慢話したりシンセのパフォーマンス披露したりしていました
ただ個人的には共演のJUJUさんが鬼平犯科帳の大ファンで、
楽しそうにプレゼンしていた方が印象的でした(しかもさいとうたかをの漫画の方)
7/22にはJFN系列「坂本美雨のDear Friends」に出演します
美雨さんの産休直前です
出演日から見て、TMのBD/DVDの宣伝もしてくれると思います
7/29には恒例の「FNSうたの夏まつり」に出演します
Marc Pantherも出るようなので、globeの曲をやるんでしょうか
歌はE-girlsあたりがやるとかして
木根さんは、いよいよレギュラー番組「木根テレ!」が始まりました!
…が、なんですかこれは?
おっさん(木根&徹貫)がしゃべるだけの通販番組でした
基本的に毎回二人が懐メロCDのセールストークをして、
あと毎回最後に一曲二人で懐メロを演奏します
7/18には湘南の由比ヶ浜でロケもやってきた模様
正直、無理して見なくても良いとは思いましたが、
一応毎回TMの話もしてくれています(第3回までは)
3回目は西城秀樹さんのポップンロールバンドという、
TMファンにとってもなかなかコアな話題が出ました
7/15には「水曜日のダウンタウン」に出演しましたが、
木根さんは芸人が出すネタにコメントする側の立場で、
正直荷が重いと思いました
7/16には「ダウンタウンDXDX」に出演し、
こちらでは昔のTM話などをしていました
あと、すごい久しぶりにパントマイムを披露していました
まだ覚えてたんだ!?
また木根さんは「伊藤銀次の「POP FILE RETURNS」第114回・115回に出演し、
7/10・17にネット上で公開されました、
各40分以上のボリュームです
7/17公開分のトークではTM初期の話もしていました
初期のライブでは機材を同期させて流すと止まる恐れがあったため、
テープに録った音を流していたとか、なかなか興味深いことを暴露していました
多分「Electric Prophet」の頃の話だと思うのですが、
だとすれば、以前ポコ太さんが推測していたことがビンゴだったことになります
以上、近況のまとめでした
それでは本題に入ります
-----------------------------
TM NETWORK 9thアルバム「Major Turn-Round」は、
2000/12/25にリリースされた
インディーズレーベルROJAMからのリリースだったため、
セールスなどはチャート類に公表されていない
ただ本作は先行シングル3枚と異なり、
TSUTAYAと新星堂限定で店頭販売も行なったため、
おそらくシングルよりはまともに売れただろう
なおROJAM版・TSUTAYA版・新星堂版は、それぞれCDのデザインが異なった
ROJAM版は小室・ウツ・木根・3人の写真がプリントされる4パターンがあった
ROJAM版は通販のため、どれが来るかは運次第である
熱心なファンは全種類収集やお目当てバージョン獲得のため、
一人で何枚も購入する場合もあったが、
売り方としてはいささか疑問を感じさせるところもあった
ともかく1999年5月の再始動宣言から1年半をかけて、
ようやくTM NETWORKのオリジナルアルバムリリースが実現した
作品の内容以前に、まずはアルバムを作ることができたことが重要である
小室は2000年にMIYUKI、坂口実央、BALANCeなど、
多くの新人歌手・ユニットのプロデュースを始め、
いずれもアルバムリリースの予定があったが、どれもシングル数枚で終わった
シングルセールスの不振でSONYでのアルバムリリースを取りやめたTM NETWORKも、
この一つになる可能性は十分にあった
だが小室は2000年の後半を費やしてTMのアルバムを完成させ、
これをひっさげたツアーも敢行した
TMファンから見れば当たり前に見えるこの成果も、
当時の小室周辺を見れば、極めて特異で幸運なものだった
2001年以後、TM NETWORKをめぐる状況は悪化の一途をたどるが、
それでも2000年のアルバムリリースと全国ツアーという実績は、
ファンの離脱をある程度のところで食い止める役割を果たしただろう
ひいてはTMの継続を可能にしたと言っても良い
実績が0か1かの差は、非常に大きかったと思う
「Major Turn-Round」のコンセプトはプログレッシブロックだが、
この方針は7月の「Log-on to 21st Century」リハーサルの時に決まり、
先行シングル「Ignition, Sequence, Start」で示されていた
本作は全7曲の内、1曲目「Worldproof」はSE、
4~7曲目はバラードかミディアムテンポであり、
全体として非常に地味な構成である
ノリの良い曲は2曲目「Ignition, Sequence, Start」だけだが、
それも構成が複雑で、必ずしも受け入れやすい曲ではない
典型的なTM的ポップチューンを求めるファンには不満もあっただろう
だが本作はそもそも曲単位で聞くものではなく、
全体を通して1枚の作品として聞くべきものである
最後まで聞けば、本作にポップチューンなど入り込む余地などないことは分かるだろう
楽曲集ではなくアルバム1枚で一つの世界を作るという構想は、
かつて「CAROL」でも目指されたが、
その頃はEPIC/SONYの稼ぎ頭という立場上、
売れ線楽曲を入れることも求められ、
結果としてLP2枚組み中の1枚のみ「CAROL」組曲という、
中途半端な内容になった
これに対して「Major Turn-Round」は、
アルバム全体で一つの世界を描ききった
レコード会社上層部の意向を気にする必要のないインディーズという条件を最大限に生かした内容であり、
小室のROJAM移籍の最大の成果は、
本作のリリースにあったと言っても良いかもしれない
なおアルバムにはCDエクストラが付いており、
パソコンにセットするとCD購入者限定BBSへのリンクが開かれるというサービスがあった
(2001年初めにサービス終了)
「Major Turn-Round」というタイトルは9月下旬に発表された
タイトルは「メジャーがひっくり返る」とのことで、
「MAJOR」をひっくり返した「ROJAM」の社名を意識しており、
メジャーになる以前の「初心に帰る」ことを含意していた
70年代プログレは3人が若い頃に通ってきた道であり、
これに取り組むことはまさに「初心に帰る」試みだったのだろう
なおタイトルの「Turn-Round」は、
映画「Perfect Storm」で漁船が引き返すシーンのセリフ「Turn Around」から着想を得たらしい
小室によれば、「Turn Round」は「Turn Around」よりもポジティブなニュアンスだとのことである
(本当にポジティブなのかは知らない)
アルバムのジャケットには、
先行シングル2枚と同様に赤青オレンジ三色各1個の球体が描かれる
この球体は「Ignition, Sequence, Start」「We Are Starting Over」ジャケットにも描かれたが、
これらよりも接近した視点である
オレンジから青の球体には一筋の光が向かっているが、
これは各球体=TMメンバーのネットワークを表現するものだろう
本作は3人が影響を受けたプログレ作品のオマージュ的要素が強い
何よりも目立つのが「Major Turn-Round」のロゴで、
YESの「Close To The Edge」のロゴを意識しているのが明らかである
ジャケットデザインはWilliam Roger Deanに依頼されているが、
彼は「Close To The Edge」をはじめとするYES作品のデザインも手がけた人物である
アルバムの構成を見るに、
半分の時間は長大な「Major Turn-Round」組曲で占められ、
その中は「Ⅰ First Impression」「Ⅱ Second Impression」「Ⅲ Third Impression」の3楽章に分かれている
これは楽章名も含め、Emerson, Lake & Palmer「Brain Salad Surgery」の「Karn Evil」組曲と同じである
「Major Turn-Round」組曲は、
ある男性の内面の展開を表現したもので、
小室のイメージでは、場面は未来都市の生活空間だという
「Ⅰ First Impression」の始まりは、
マリブのキッチンの換気扇の音を加工したもので、
換気扇をぼんやりと眺めている男の姿がイメージされている
次の「Ⅱ Second Impression」は、
男が自分を見つめなおす場面であり、
最後の「Ⅲ Third Impression」は、
回想から現実に戻った後に見える未来の情景を示したものである
それは「光は見えてるんだけど、それほど楽観できない未来」らしい
作詞を担当した小室みつ子は、
閉じた世界でのたうっている心が、
少しずつ外への開放に向かうイメージと言っている
主人公の精神世界を長大な組曲で表現する手法は、
プログレ作品ではしばしば見られるものではあるが、
その代表作として「The Dark Side of the Moon」「The Wall」などPink Floydの作品群は小室の念頭にあったものと思う
この頃のインタビューでもPink Floydの話題はよく出ているし、
別章で触れる「Tour Major Turn-Round」でもPink Floydを意識した演出が見られた
つまり「Major Turn-Round」は、
YES・ELP・Pink Floydというイギリスの古典的三大プログレバンドを意識した作品だった
「Major Turn-Round」の制作過程を見てみよう
小室が8月初めにハワイで先行シングル「Ignition, Sequence, Start」jの制作に入り、
9月前半には次の「Major Turn-Round」組曲にも取り掛かっていたことは、
以前触れたところである
9/14には木根がハワイで小室と合流し、
日本で歌入れした「Ignition, Sequence, Start」の音源と、
「We Are Starting Over」のデモ音源を渡している
この時木根はさらに小室から、
アルバム用に6/8拍子の曲と3/4拍子の曲を作るよう注文があった
これがそれぞれ「Pale Shelter」「Cube」となる
木根は9/14「We Are Stating Over」をレコーディング、
9/15「Pale Shelter」作曲、
9/16~17「Cube」作曲と、実に調子よく曲が出来た
帰国は9/18のことである
このように見ると、
7月にシングルとしてリリース済みだった「MESSaGE」を含め、
インタールードの「Worldproof」を除く6曲は、
リリース3か月前の9月中旬には原型ができていたか制作に入っていたことになる
さらに当初の計画では、
「10 Years After」「Happiness×3 Loneliness×3」「80’s」
などTRUE KiSS DiSC時代の楽曲も収録の予定だったらしい
9/28「Beat Club」で放送されたハワイでの木根・小室対談で、
小室がこのことを明言した上で、合計12曲前後になると言っている
(「it’s gonna be alright」は忘れていた?)
結果としてTRUE KiSS DiSC期楽曲は収録されなかったが、
これは後にSONYからストップされたためか、
TM側の判断で収録を取りやめたものか、はっきりしない
このことは、後まで1999年の楽曲の存在感が薄くなる原因となったが、
「Major Turn-Round」という作品に統一性を持たせるためには、
収録しなくて正解だったと思う
この後もレコーディングは続いた
レコーディングはハワイの小室と東京のウツ・木根の間で、
インターネット回線で音源をやりとりすることで行なわれ、
3人が一緒にレコーディングすることは一度もなかった
小室は他の仕事も重ねていたためか、
10月にはシングル「We Are Starting Over」の制作に遅れが出ており、
アルバム曲の制作も半中断状態だった可能性がある
そのような中で10/24には3人がニューヨークで合流し、
10/27まで写真撮影や打ち合わせを行なっている
アルバムのジャケットもこの時に撮影された
この時点で残っていたのは、
「Pale Shelter」「Cube」「Major Turn-Round」の3曲だった
ウツ・木根は帰国後の10/31から東京で歌・ギターのレコーディングを始めた
スタジオには葛城哲哉や小室みつ子も詰めていた

レコーディングスタジオの木根
「Major Turn-Round」では、
シングルを含む全曲の作詞を小室みつ子が担当することは、
8月には決定していた
「Pale Shelter」「Cube」の作詞は10/28に依頼されたとされるが、
楽曲データがこの日に完成してみつ子に送られたということだろう
アルバム全曲の作詞を一人が担当したのはTM史上この時だけで、
みつ子にはプレッシャーだったらしい
その意味で本作は、実はTM史上みつ子成分がもっとも濃い作品となっている
同時期にロスアンゼルスでは、
TOTOのドラマーSimon Phillipsがレコーディングに参加していた
小室は80年代にTOTOの影響を大いに受けており、
TOTOのオリジナルメンバーでないとはいえ、
Simonにレコーディングに参加してもらえたことは光栄だっただろう
ベースのCarmine Rojasも同じスタジオにいたものだろうか
CarmineはかつてDavid BowieやRod Stewartのツアーやレコーディングに参加しており、
David Bowieファンの小室やRodファンのウツには嬉しい人選だったと思われる
2人の演奏は「Ignition, Sequence, Start」「Major Turn-Round」で味わうことができる
木根曲の歌入れは11/2~8にかけて「Cube」「Pale Shelter」の順に行なわれた
だがレコーディングのタイムリミットが2週間後に迫ったこの時点で、
肝心の「Major Turn-Round」はまだメロディができていなかった
これは1年前の「Happiness×3 Loneliness×3」と同じ状況である
すでにアルバムリリース日が決定していただけでなく、
一か月後にはツアーも控えていた以上、日程の変更は許されなかった
小室はみつ子に「なんか言葉を書いて送って」と頼み、
みつ子は「テーマみたいな散文」を送り、
小室はそれを組み替えて仮歌にしてメロディを作った
日本には小室から1日に何度も制作中の音源が届くという緊迫した状況だった
こうした中、11/13にようやくメロディ入り音源が出来上がった
みつ子は1日で「Ⅰ First Impression」、
その翌日に「Ⅲ Third Impression」の作詞を、
2晩半徹夜状態でやり遂げた
この難解な曲に2日で詞をつけることは困難を極めただろう
歌入れは11/15~18に「Ⅰ First Impression」「Ⅲ Third Impression」を各2日ずつ使って行なわれた
日本で作詞・歌入作業が行なわれている間、
小室は11/14~17にシングル3曲のアルバムバージョン制作を行なった
その後「Major Turn-Round」の歌入り音源のミックス作業に入ったと考えられるが、
11/20にはスタジオ作業を終えていたようで、11/21には日本に帰国している
マスタリング作業はその後もアメリカで続けられ、11/28に完了した
優先的にマスタリングされたと思しき「Major Turn-Round Ⅰ First Impression」は、
11/27にROJAM.COMのサイトで無料ダウンロード第三弾として公開されている
ここまでのレコーディング日程を見るに、
特に11月のアルバム曲レコーディングはかなり差し迫ったスケジュールで行なわれた
小室は大作「Major Turn-Round」で行き詰っていたようだが、
それまでのプロデュース作品群とは異質の楽曲なだけに、
確かに大変だっただろう
ただこの頃は小室が細木数子に傾倒し始める頃で、
スランプ的状況もあったのかもしれない
以下ではアルバム収録曲について触れよう
ただし先行シングル3枚は「Album Version」も含め、
すでにシングルを扱った際に触れているので、ここでは触れない
まず1曲目「Worldoproof」は、
事実上次の「Ignition, Sequence, Start (Album Version)」のイントロである
曲というよりもSEであり、
具体的にはワイヤレスマイクを海に落として録音した音である
歴代TMインストの中でも、もっとも地味な曲といえるだろう
正直次に続けて1曲にしてもまったく問題はないと思うが、
さすがに曲数が6曲なのはまずいということになったのだろうか
なお本作については、制作日程が一切分からない
ほとんど時間は使っていないのだろう
小室によれば、海は外から見た平穏さに対して、
内には暗澹さが秘められており、
いわば別世界への扉だということで、
そこに落ちていく音によって、
別世界に入るリアリティを表現したかったとのことである
ここから3曲目の「Major Turn-Round」組曲までが、
本作の核となる攻めのプログレ楽曲群となっている
「Major Turn-Round」についてはすでに延々と触れてきたが、
進行とともに次々と場面が変わる曲である
3部構成で、各10分程度、合計32:22の大作で、
一曲でアルバムの半分を占めている
TM史上最長の曲であり、今後もこれを越える曲は出ないだろう
(なお小室ソロでは「Far Easter Wind -Completer-」収録の「五常」が73:22で最長)
「Ⅰ First Impression」は、冒頭から重い曲調で始まる
「広大なのに閉じているこの世界 ただ君とつながりたい」
という歌詞からも分かるように、
「君」との接点のない閉塞した世界を嘆く主人公の心情がテーマである
3分半前後、「Right!」の掛け声とともに曲調が一転して明るくなる
だが歌詞の内容は、部屋の中で苦悩する主人公が「君」を求めるものである
5:40頃からは、歌詞のない沈んだ暗い曲が続く
主人公の沈んだ心情を反映しているのだろう
1分半ほど経つとまた曲が変わり、歌も少し入る
「You know, we can’t replay. 過ぎた日はもう二度と繰り返せはしない…」
という歌詞からは、
主人公が「君」との関係構築に失敗した過去を悔いていることが分かる
9:00頃からまたアップテンポな展開になるが、
緊迫感溢れる曲調とディストーションのかかったウツのボーカルからは、
退廃的な雰囲気が漂っている
「I’m in a cage」「無理矢理笑ってMidnight TV show」
などの歌詞を見るに、
絶望した主人公が現状を忘れようと自暴自棄になっているようだ
この部分、レコーディングでウツが苦労したそうである
最後は「missing you missing you…」と繰り返し、
別れた相手への想いをふっきれない苦悩が強調されて終わる
最後にボリュームを上げながら加わるシンセの演奏が、
個人的には大好きである
結局主人公は、落ち込んだ暗い精神状態から始まり、
救われるすべもないまま狂乱の度合いを高めて終わるのである
13分くらいからは中間のインスト部分、
「Ⅱ Second Impression」であり、
小室によれば過去の回想シーンである
曲調は「Ⅰ First Impression」から継続しており、
主人公は苦悩しながら過去を振り返っているようである
激しく重いギターが、絶望感を強調する
15分半頃から8分間は、小室のピアノがメインとなり、
ジャズ的な即興の要素も取り込み、時折激しい展開もあるものの、
全体としては穏やかな雰囲気になっていく
主人公が冷静になっていく様子を表現しているのだろう
「Major Turn-Round」では基本的に、
SimonとCarmineの演奏の上に小室のシンセ・ピアノがかぶせられたが、
「Second Impression」では小室の半即興のピアノが先に録音され、
その上にSimonらが音を重ねたという
その意味で「Second Impression」は、
小室のターンにSimonとCarmineが競演している部分と言えるだろう
なおこの部分は2000年末、
麻薬・覚醒剤乱用防止キャンペーンのCMに使われた
ただしテレビをよほどよく見ない限り、
TM NETWORKの曲と気づくことはなかっただろう
(よく見るとTV画面の端に「TM NETWORK」とあった)
23分半から9分間は最後の「Ⅲ Third Impression」である
冒頭から明るい曲調であり、主人公が過去から解放された印象を受ける
20分を越える長いタメの後、ここでようやく主人公は救われる
みつ子の歌詞もそれを表現しているのだろう
締め切っていた窓 夜更けに開く
脱ぎ捨てられたまま 椅子にしおれたDress
愛と闇の残骸 みつめ続けて
孤独な嘘にただ 逃げ込んでいた
もう留まれない 壁の内側
ガラスのショウケース 過去には飽きた
失った時間今 夜空に解き放て
新しいぬくもり 抱きしめるのさ
この後は「Turn round, turn around」のフレーズが繰り返される
過去にとらわれていた状態から、
未来を向いていた以前の状態に戻るということだろうか
26:15頃から曲調が変わる
歌は「君」との過去を忘れないことを誓う部分である
ウツ・木根の「I never forget」のところのコーラスワークと、
その後の激しいシンセはとてもかっこよい
27分からは1分ほど、
「something new, something good」のフレーズが繰り返されるが、
これは葛城哲哉のボーカルである
曲が32分あると気にならないが、
1分続けて葛城ボーカルが入っているというのは、
TM曲ではかなり特殊だろう
28分からは曲がクールダウンする
哀愁漂うギターが印象深い
ウツはじっくりとロックバラードとして歌い上げる
この部分の歌詞を見る限り、
主人公はなおまだ「君」との過去を忘れられずにいるらしい
引き寄せられて 同じ時間駆け抜けて
傷んだ胸を合わせた 同じ夢をたどってた
Was it true? Woo Was it true?
結局主人公の葛藤が解決したのかどうか明確にされないままに曲は終わる
苦悩、回想、解放というハッピーエンドで分かりやすく終わらないところが、
この曲のミソなのだろう
ここまで32分、10回の場面転換を見せる大作だった
小室としては全力でやりきったとも言えるかもしれない
ウツや小室みつ子も、よくやったと思う
次の曲は4曲目、「Pale Shelter」である
小室のリクエストで木根が6/8拍子で作ったことはすでに述べた
ミディアムテンポの曲で、Aメロは切なげなピアノが雰囲気を作っている
Bメロからサビに向けては意外なほど盛り上げる
この曲は「Major Turn-Round」の一部に入れる案もあったらしい
(その場合、「Major Turn-Round」は小室・木根共作になったのだろうか)
ウツがこのアルバムで一番好きな曲だとのことで、
2009年には「SMALL NETWORK」でこの曲を演奏している
「Pale Shelter」のタイトルは、
都会を「青白い避難所」に見立てて名付けられた
「約束の場所はどこにもみつからない」とあるように、
全体としては救いのない場として描かれる
つまり「Pale Shelter」とは、
ネガティブなイメージで描かれた都会を表現したものである
具体的な場としては、南米の街の風景を意識しているという
「探し続けたShining El Dorado」というフレーズも、
南米が舞台であることを反映している
「白く乾いた道の向こうに荷台を引きずる痩せた馬が行く」
「残り少ないコイン数えて壁際寄りかかる旅人たち」
などの部分も南米のイメージなのだろう
歌詞のテーマは、閉塞した都市に守られて生きて行くのではなく、
そこから出ようという意志である
「Pale Shelter」は主人公にとって、
乗り越えるべき故郷を意味するということになろうか
歌詞の雰囲気はかなり異なるが、
「Get Wild」「Resitance」「We Are Starting Over」など、
先行する典型的なみつ子詞とテーマは共通している
みつ子はアルバム全体に漂う閉塞感の中で、
この曲からは開かれた場所というイメージを受け、
このような歌詞にしたのだという
閉塞しているけれど開かれてはいる場ということなのだろう
5・6曲目は「We Are Starting Over」「MESSaGE」の「Album Version」で、
ともに先行シングルのリミックスである
プログレのコンセプトが決定する以前に作られた曲で、
その点でアルバムの中では異質な部分とも言える
最後の曲は「Cube」である
木根が小室から3/4拍子の曲を依頼されて作ったことはすでに述べたが、
小室はモデルとして、Pink Floydのビデオを見せたという
具体的にはBilly Joel「Piano Man」をPink Floydがピアノで演奏するシーンである
「Cube」で歌がオクターブ上がるところは、
「Piano Man」に基づいているという
木根はこの曲を依頼された時に難色を示したが、
Aメロだけで良いと小室から説得されて作ったのだという
メロディが基本的に同一の展開で最初から最後まで通されているのも、
Aメロだけで作ると言う条件があったからだろう
小室は本アルバムの木根曲でも、「Cube」を特に絶賛しており、
「20年か30年に1曲の名曲」と称えたという
小室は、木根の仮歌入れの場に現れた時、この曲を聞いて気に入り、
その場で木根が撮ったピアノパートの上にオルガンパートを加え、
木根の仮歌の上に小室が即興でハモるという、
セッション感覚でデモを作成した
「Cube」はピアノとオルガンのみのシンプルな曲だが、
それが曲の魅力をよく伝えている
しかも歌は1番のみ、2分あまりで終わり、
その後はピアノとオルガンのセッションが続く
最後はオルガンの長い間奏をはさみ、
ウツの優しい歌でしっとりと終える
歌い手としてはこれからというところであえて終わる構成にしたというが、
すっきりと終わらせない構成は「Major Turn-Round」にも通じている
「密室みたいに世界は息苦しい」のフレーズに見るように、
歌詞はアルバムのテーマである閉塞感をよく反映する
「欲しいのはただどこかにいる君だけ」というフレーズも含め、
「Major Turn-Round Ⅰ First Impression」
と近い雰囲気の歌詞である
みつ子によれば、「Cube」の詞では俯瞰の視点からズームインして、
空から主人公の心へと迫っていくという手法を取ったのだという
「Cube」(立方体)という曲名は意味がよく分からない
「cube」という単語は歌詞の中では、
「I'm in the cube」「I don’t care what’s going on out of my tiny and empty cube」の部分で用いられている
みつ子自身のサイトでは、これらのフレーズは、
「僕は立方体の中」「この空っぽな立方体の外で何が起こっているかなんてどうでもいいんだ」と訳されている
このcube(立方体)は外から主人公をとらえているものらしい
主人公は「どこかにいる君」に対して「届くはずのない声で」「Come back to me」と叫び続けるが、
それは自分がcubeから出ることができないからである
主人公は外に出られないからこそ、
外で何が起こっていようが気にならないのだ
ただ実際にここで描かれているのは、
「君」を失って外に出る気力が出ない主人公の姿と考えられ、
主人公はそのことを「cubeの中にいる」と言っているのだろう
ここまで書いてもよく分からないのは、
主人公をとらえるものをなぜ「cube」と表現しているのかである
鉄筋コンクリート製の四角い無機質な部屋をイメージしているのかもしれないが、
実は他にもこの言葉には背景がある可能性がある
映画「キューブ」である
これは1997年公開のVincenzo Natali監督の映画で、立方体の迷宮から脱出する話で、
ウツが「Tour Major Turn-Round」の後で刊行された「Third Impression」の中でウツが挙げたお勧め映画の一つとして、これを挙げている
(しんさんより情報提供)
ウツはこの映画の話を知り合いから聞いて、
DVDを借りて見たのだという
この映画は日本では1998年9月に公開され、翌年3月にDVD化された
ウツが見たのはこの後となるが、
タイミングから見て曲名に反映された可能性は十分にある
また立方体の迷宮に閉じ込められるという設定は、
閉塞感を前面に出したアルバムのコンセプトにもよく合っていた
そこでウツやその他の関係者は、
作詞に先立ってこの映画を持ち出してきたのではないだろうか
この曲の作詞やレコーディングを行なった10~11月頃は、
ウツ・木根・みつ子が一緒にスタジオで作業を行なっていたから、
アイデアを出し合う環境もあっただろう
だとすれば人をとらえるものの象徴として「cube」の語を用いたのは、
この映画を前提としていると考えられよう
歌詞はともかくとして、
「Cube」は小室が絶賛した通り、
アルバムのラストにふさわしい名曲だと思う
再始動前とは異なる木根の魅力が存分に発揮されている
この曲は「Tour Major Turn-Round」でも、本編最後という重要な箇所で演奏された
その後二度と演奏されないだろうと思われたが、
2014年「the beginning of the end」で、
まさかの新アレンジ・新歌詞版が披露されている
(2015/7/20執筆、2016/7/13、2020/4/4加筆)
この記事へのコメント
遂にきました。学生時代に生まれて初めて出会ったプログレ。「1曲の演奏時間が長い楽曲or組曲は素晴らしい」「1970年代の古いシンセサイザーはアグレッシブ」という偏見を私に植え付け、その後ELP・Pink Floyd・Yesを中心に私が様々なプログレ作品を買い漁る原因を作った因縁のCD(苦笑)。
「Second Impression」の「流れるのが当たり前」の様に流麗なソロと途中での重そうな鐘をイメージするシンセの違和感の無さから始まるドラマチックな展開にしびれたあの頃から今日まで続いている私とプログレのお付き合いは始まりました。
まだまだ話したいことは沢山ありますが、しつこくなりますのでまたの機会にします。失礼致しました。
私にとっては、「RHYTHM RED」を最後にワクワクするTMの作品がありませんでしたが、MTRは10年ぶりにワクワクさせられました。TMはまだ健在だと素直に思えた作品でした。
MTRの途中、ピアノインストっぽくところ、たしかにCMで使われてましたね。あれ、曲調といいCMの雰囲気といい、リゲインEB錠のCM「energy flow」の坂本龍一とめっちゃ似ていて、よく覚えてます。タイミング的にも少なからず坂本曲の影響はあるのかなあと思います。次回は、いよいよMTRツアーの記事ですかね。楽しみにしています。
MTRは思い出がありすぎて。復活後やっと出た、まともなフルアルバムで、しかもプログレという聴いたことのないジャンルの音で、配信で小出しにネタバレしてくれたりと、否が応でも期待が高まってのリリースでしたから。
>なおROJAM版・TSUTAYA版・新星堂版は、それぞれCDのデザインが異なった
>ROJAM版は小室・ウツ・木根・3人の写真がプリントされる4パターンがあった
>ROJAM版は通販のため、どれが来るかは運次第である
>熱心なファンは全種類収集やお目当てバージョン獲得のため、
>一人で何枚も購入する場合もあったが、
はい、熱心なファンでしたw
当時は私の地元にも新星堂があったので、新星堂版、TSUTAYA版、ROJAM版の3枚とも買いましたとも。
CDに限らず、このころの書籍やらDVDやら全部買った気がします。
ROJAM時代って(私だけの感覚かもしれませんが)ファンが直接メンバーを支えてる感が強くって、だから「買ってあげなきゃ」って気持ちが半端なかったです。
やまびこさんが仰ってるように、世界観がほかのアルバムと違いすぎるので、今となっては、ちょっと気合を入れないと聴けない作品になってしまいました(特に組曲は)。
曲の方は、「Ⅲ Third Impression」の、「Turn round, turn around」の部分が、初めて聴いたとき、なんとなくアルフィーっぽく聴こえたのは私だけでしょうか?
Cubeは、大好きな曲です。好きすぎて、数年後に同じ名前の車を買ってしまったくらいに。二度と聴けないと思っていたので、「the beginning of the end」で聴けたときは腰を抜かすほど驚きました(アレンジの変わりっぷりを含め)。
長文失礼しました。ツアーの記事も楽しみにしてます!!
出戻りFANKSの私が終了以降一番衝撃を受けたアルバムです。
>なおROJAM版・TSUTAYA版・新星堂版は、それぞれCDのデザインが異なった
こんなにいろんなバージョンがあったとは知りませんでした。兎に角中古で持ってないアルバムを片っ端から購入してたので、自分のはどうなんだろう?と見てもよく分かりません。
EXPOの時はなんかLiveでもてっちゃんは上の空っぽい感じが(自分はそう思ってた。ライブ後の夜の活動の方に気が行ってたんじゃないかと)してあまりアルバムも曲も好きではなかったのですが、「Major Turn-Round」はやればできるじゃん!!て思った素敵な作品です。でも、こんなに切羽詰まった時間ぎりぎりの苦しい状況があって生まれた作品だとは当時全く離れていた私には知るよしもなく、それでもこんなに惹きつけられる曲を完成するなんてさすがだなぁと思いました。どの曲が好きとかはなくアルバムまるっとが一つの作品のように聞くことができます。
また、次回の記事楽しみにしてます。
そういえば、このアルバムって、TM史上唯一の「CDエクストラ」でした。PCに入れるとランチャーが出て、BBSへのリンクになってました。
このBBS、ライブの感想を書き込みましょう、的な趣旨で、ツアー期間中限定の開設という説明があって。
SONYのBBS閉鎖事件を目の当たりにした直後で、CD購入者限定の「平和」なBBSだったので、閉鎖予定日(確か2001年1月末だったはず)には閉鎖を惜しむFANKSが大挙して一晩中書き込みをしまくって、閉鎖を物理的に阻止するというということもありました。そのせいか、その年の春ぐらいまではBBSが存続したと思います。
きっと後半にバラードが集中してたのと、みつ子さんの歌詞のおかげでそう感じたのかもしれません。
私もBBS書き込みまくってました。閉鎖阻止というより、閉鎖ギリギリにコメント書いて、自分が最後になってやろうという、ちっちぇ願望がありまして。でも、書いても書いても終わらず、けっこう続いてましたよね。
プログレッシブ・ロックという非常に困難かつ時代遅れなジャンルを2000年という記念すべき年にリリースした価値は非常に高いと思います。何より鍵盤楽器界の化石とまで言われたメロトロンをふんだんに使った功績はもっと評価されるべきではないかと…。様々な音色の奥から優しく奏でられる独特な響きが最高に気持ち良く、ハモンドオルガンやミニモーグなどのアナログシンセも含め往年のプログレ作品に対するリスペクトが十二分に伝わってきますね。こだわりまくってマニアックに作りあげられた作品だけに聴くほうも神経を使うので好き嫌いはあるかと思いますが、一旦ハマると抜けられなくなる業の深いアルバムだと思います。
アナログ盤のみに入っていたとされるSLOWDOWN MIX聴いてみたいです。単純にBPM下げてるだけですかね??
みなさまと違い、私には難解な作品で、解説が欲しかったからですが…(汗)
ラジオでたまたまニューアルバム出たと知って、ツタヤで買ったのですが、地元を離れてボッチFANKSし始めで孤独の重みに耐えきれず(具体的にはTKはそこそこ好きだった夫にも受け入れられず、貸してほしいと言ってくれる友達もなく)長いこと一緒に冬眠していたアルバムです。
解凍されたのはこのブログに辿り着いてからなので、ビギエンのCUBEはもったいないことした~!
みなさまが大好き!とおっしゃられるほど味わえてなかったので、今一度向かい合ってみます。
MTRって難解でよく分からなかったんですが、結構女々しい事を歌ってたんですね…
今以て、プログレなるものがよく分かってないのですが、TMにしか表現出来ないと思える好きなアルバムです。
このツアーDVDが観たくて、プレステ買っちゃったのは、良い思い出です。
Major Turn-Roundでプログレに触れてはまったんですね
日本はプログレファンが多いそうですが、そうした遺伝子をいくらか残す役割をTMも果たしたのだとしたら、メンバーも喜ぶと思います
>やまびこさん
特に組曲は、今後二度と演奏されることはなさそうです
おっしゃる通り、TMの他のアルバムと比べても顕著に、独特の空気を漂わせている作品ですね
TMがまだ死んでいないことをファンに伝えられたと言う点でも、本作はTM史上極めて重要だと思います
>kuri566さん
仕事から帰ってから書き出すと、いつも遅くなっちゃうんですよー
そういやenergy flowもこの少し前でしたか
私は連想したことはありませんでしたが、影響はあるんでしょうかね
ただ私にとってはCMで使われた部分は組曲の中ではあまり印象は深くないんですよね
むしろその前のセッション的なところの方が印象的でして
>鉄曜日のライオンさん
熱いMESSaGE、ありがとうございます!
3枚買ったんですか! ROJAMの送料入れたら1万円ですねえ
ビギエンツアーのCubeは、私もびっくりしたし、感激しました
バラードがあんなふうにアレンジされるのも、かなり珍しいんじゃないでしょうか
あれが選曲された事情とかも知りたいですね
小室さん、もう一回やりたかったのかな
あとCDエクストラの件、うっかり忘れていました!
ちょっくら追記しておきますね!
後から買ったんですね
実はROJAM版・TSUTAYA版・新星堂版以外に、キヲクトキロクのおまけ版もありまして、もしかしたらその可能性もなきにしもあらずです
Major~は生み出すのに苦労した作品のようですが、全力で作っていたことも事実だと思います
歴代のアルバムを見ても、これほど統一感のあるものはないと思いますし、TK時代のヒットシングル詰め込みアルバムとは対極の作品だったところもうれしかったところです
>エドさん
みつ子さんの歌詞で印象に受け入れやすさに影響が出ていることはあるかもしれないですね
みつ子歌詞中心のアルバムてCAROL以来なんですよね
この後のアルバムで「うっ」てなる一つの要因が小室さん自作詞というのは、否定できないところではあると思います
もちろんだからこそTMの作品だという立場もあると思いますし、小室詞がダメというわけではないですけど
>GAUZEさん
それまで一貫して海外の流行を意識していた小室さんが、この時だけ流行と無関係な音楽をやったことは、TM史のみならず小室さんの歴史の中で見てもなかなか面白いと思います
小室さんが自らのルーツに遡って自らの好きな音楽を全力でやってみたということですよね
楽器のこだわりも含め、若い頃からやってみたかったことを、「今この年で」やることができたことは、やはり楽しかったんじゃないかなと思っています
そしてそういうことが可能なユニットだったという点が、TMの強みであり魅力だったんでしょうね
>youさん
木根さんも大事にしてあげて下さい(笑
SLOWDOWN MIXは別の機会に取り上げます(これ、なぜかよく聞かれますね)
ただSLOWDOWN MIXは、多分ミックスダウンを丁寧にやったということで、曲のBPM自体は変わらないですよ
なかなかこれを貸してくれと言う人は少ないでしょうね
ちなみに私の場合、Simon Phillipsのドラムを聞きたいという人に貸したことがあります
その人の感想は「なんで今プログレなの?」でした
まあ、そりゃあそう思いますよね(笑
ともかくこれからCubeも含めてじっくり味わってくださいね!
>しもやん
そうなんですよ!
実は重くて哲学的な曲と思わせておいて、一言で言えば女々しい失恋ソングなんですよ!
その点ではPink Floydの「The Wall」のような深いテーマの作品とは言い難いですね
ただ「TMにしか表現出来ないと思える」←ここ重要だと思います!
飛ばしてしまってすみません
いらっしゃると思っていました!
多分私なんかより詳しく熱い記事を書けるのではないでしょうか
TSUTAYAでは善行を積みましたね!(笑
そのコメント、どんなものだったのでしょうか?
しかし良いタイミングでTSUTAYAに勤めていましたね
では次回と次々回、ツアー記事行きますね
双璧は「CAROL」なのですが、TMはアルバムごとに音楽性やジャンルが変わるので、
特にこの2枚はポップ性を排除したマニアックな作りが気に入っています。
2012年の再活動以降はすべてのライブに行った私ですが、
この頃はライブ鑑賞という手段は何故か頭から抜けており、もっぱら映像で観る派でした。
で、これまた何故かポニーキャニオンからリリースされたDVDでウツの劣化ぶりにぶっ飛んだ記憶が(笑)
ちなみにROJAM版を買って哲ちゃんピクチャーでした。
やっぱりホッとしました(笑)
みつ子さんも難題をよく乗り越えられその点も評価したいです。
出戻りしTMのアルバムを集めMTRを初めて聴いた時すっかりハマってしまい暫くリピ状態でした。
Ignitionのインパクトが強くてCUBEはあまりよく聴いていなかったんですがこちらでの高評価を参考にじっくり聴いたところ勿体ないことをした~と後悔しています。
プログレをWikipediaで調べましたが理解するのが難しくMTRを聴きながら自分なりに解釈していくつもりです(笑)
ROJAM版はピクチャーレーベルを指定できず、誰の絵かは届いてからのお楽しみというグリコのオマケ?的な販売法には当時私も大いに疑問を感じました。(今思えば、そうでもしなければ採算が取れなかったのかもしれませんが。)ジャケットや収録曲は皆同じということで私も一枚だけ注文しました。ちなみに宇都宮さんでした。(まぁ、数年前に某オークションで小室・木根版を格安で落札しましたが…。)ちなみにメンバー3人が一枚のディスクにプリントされたレア盤?は未だにオークションとかで見かけたことはありません。
しかしMTRリリース時に、一つのシングル・アルバムを何種類ものバージョンで売るのが当たり前の時代が来るなんて思いもしませんでした。個人的にはファンが納得して複数買っているのならまあいいか、という気もしますが、いくらミリオン連発していても自分がその某アイドルグループのCDを手にすることは一度たりともないだろう…。
21世紀もこの流れ、この勢いに乗ってTMが継続的に活動してくれると信じていたんですが…。
90年代後半~00年代はTKプロデュースのオーバーワークによるアレルギーで完全にTMに対して引いていた時期ですが、発売当初は復活後はつのアルバムという事でどんなもんかお手並み拝見、と完全に上から目線でTSUTAYAで購入しましたが、何か思ってたのと違う・・・さすがに先生も歳取って勢い無くなったな~と肩透かしを覚えた記憶があります。
しかし30thの活動でまたTM熱が再燃し聞き直すと、本当に傑作!先生の作家性が凝縮された一枚で、今では大好きなアルバムです。
最大のアーティストは最大のリスナーという言葉通り、音楽を愛する小室哲哉が裸で作り上げたアルバムかと思います。しかしプロデューサーとしての側面から見ると、この後の暗黒期?へと転げ落ちていく象徴ともなってしまったのかなと。
稀代のアンビバレンスを持つ先生を象徴する一枚ですね、TM史を語る上でも間違いなく一二を争う名盤かと思います。
>椎名さん
私もこのツアーの頃は気持ちが冷え切っていたので、このツアーは行っていません
今思うと本当に残念なことをしました…
ウツの劣化はよく言われますが、今見るとやはり若くて元気がありますよね
2013年はもちろん、2015年のライブも、なかなか心配になりました
>ワイン好きさん
みつ子さんはある意味、このアルバムに関しては一番大変な目に遭ったかもしれません(笑
Ignition~はやっぱあのイントロから、ワクワクしますよね
アルバムの終りの方の曲の魅力に数年してから気付く… よくあることです(私も)
>haruさん
私は当時アルバム発売後になったゆっくりと買いましたが、アルバムは割とすぐ届いた印象です
事前に予約して発売日前に入手した方もいたんですね
レア盤、私も都市伝説かもと思っていたんですが、最近、実在を確認したとの話を聴きました
オークションとかに出ないから、なかなか見かける機会がないのでしょうね
Major Turn-Roundは、リリースできて本当に良かったです
これが実現できていなかったら、30周年までTMが続けられていたか分からなかったと思います
すでにかなりアウトな状態になっていましたが、本当に退場直前にギリギリホームインできたという感じだと思います
終了前のTMシングルや90年代半ばのTKプロデュースのイメージを抱いていたら、なんだこりゃてなるでしょうね
しかし30周年は、過去作品の再評価のきっかけにもなったみたいで、やはりライブ活動はやるべきですね
同様のケースとしては、20周年で10 Years Afterを演奏したら、急にこの曲の人気が上がったというのもありましたね
おっしゃる通り、Major Turn-Roundはプロデューサーとして成功していたかというと微妙ですよね
ただTMファンの場合、プロデューサー小室よりは、ミュージシャン小室の方を歓迎する方が多いと思います
その点ではTRUE KiSS DiSC時代のTMでは、小室さんはいかにもプロデューサーでしたよね
先日のTK-FRYDAYで小室さんがELPの「キエフの大門」のことに触れていました。この時は北の大地の大騒動のことで触れていたのですが、後日グルチャでもELPのことを言っていたので、気になって、ELPの「展覧会の絵」を見てきました。そしたら、まさにTMのメジャタンじゃんって思いまして、ここに書き込みに来ました。
もちろん楽曲や楽想は全く異なります。Liveの編成も違いますが、何か感じるものがありました。これが小室さんの原点の一つなのかもなあと。
「Major Turn-Round」はTMのイメージを変えた楽曲だなと思います。終了前までのアイドルテイストではなく、まさにミュージシャンという印象にです。この楽曲があまり世間に知られていないのは少し残念です。あまつさえ、私もTMを好きになるまでは全く知りませんでした。今思えばなんとも惜しいことをしていました。
もちろんメジャタンにも大いに影響していると思います。
しかしあのパートがキエフの大門というタイトルなのは知りませんでした。
今こそキエフの大門を元にした超マイナー曲「Memories」の復権の時?