7-4 Castle in the Clouds
5/5、「ぼくらの七日間戦争」が来年アニメ化されることが発表されました。
え?今頃?と思いましたが、意外と今の小学生にも人気あるそうです。
「City Hunter」劇場版もそうですが、リバイバルのタイミングから見て、TM NETWORK35周年を絡めることも前提に動いていたんじゃないかとも感じさせます。
ちなみに3/2からNHKで開催されていた「全ガンダム大投票」の投票結果は5/5に発表されましたが、ガンダムソングス部門では「Beyond The Time」が4位でした。
木根さんのソロツアーが発表されました。
6/23~9/16開催で、タイトルは「2525ツアー」とのことです。
良く分からないですけど、ソロ25年目のツアーということでしょうか。
FC予約はもう始まっているようです。
小室さんの近況について、5/9に「超英雄祭 KAMEN RIDER × SUPER SENTAI LIVE & SHOW 2018」のBlu-rayがリリースされました。
現状で唯一のPANDORAライブ映像の商品化となります。
2月のbillboardのライブ、商品化しないんでしょうかねえ。
4/25には「Guardians」主題歌のショートバージョンMVが公開されました。
曲名は「Guardian」です。
PANDORAでも組んだBeverlyさんがゲストボーカルを務めています。
MVには小室さんも出演し、フルオーケストラでの演奏風景が収録されています。
曲はとてもいいですね。
こういう聞かせる曲て、久しぶりな気がします。
それにMVでは小室さんが目立ちまくりです。
avex、小室さんの状態次第では、復帰の舞台を整えようとしているんでしょうか。
同じ4/25には、小室さんが8/31公開の映画「SUNNY」の音楽を担当することが発表されました。
90年代に女子高生だった6人が20数年ぶりに再会する物語で、6人の女子高生時代のシーンでは、90年代の音楽やファッションをちりばめて当時を再現するようです。
小室さんは90年代を席巻したヒットメーカーとして、このたび登用されました。
映画中では当時のヒット曲が用いられますが、小室さんの曲としては安室奈美恵「Don't wanna cry」「Sweet 19 Blues」、hitomi「Candy Girl」、trf「survival dAnce」「EZ Do Dance」の5曲が使われます。
その他に小室さん制作の劇伴24曲も用いられます。
この映画、主演は篠原涼子さんとのことです。
今回は篠原さんが歌うと言う情報は出ていませんが、ともかく小室さんの引退完了の直前に、映画を通じて再び絡むことになりました。
この仕事は「Guardians」と同じく、1年前に引き受けた話だったそうです。
そろそろ年代的に90年代リバイバルが来るころでしょうし、引退がなければ、今後もこういう話が来ることになったかもしれないです。
小室さんは今回のお仕事について、以下のようにコメントしています。
「最後」をやたらと強調していますね…。
ただ監督の大根仁さんは小室さんの音楽について、以下のように言ってくれています。
4/27~5/3の一週間、ニコニコ動画では、「小室哲哉GOLDEN WEEK SP~TK GREATEST WORKS~」のプログラムが組まれました。
特に新しいものはなかったようですが、この期に及んで小室さんを売り出そうとするのはなぜ?と思っていました。
すると5/1に理由が分かりました。
小室さんのベスト盤「TETSUYA KOMURO ARCHIVES」が6/27にリリースされるそうです。
リリースはavexですが、収録曲にはavex以外のものもあるようです。
(現時点で発表されているものではSONY作品あり)
T盤4枚組50曲、K盤4枚組50曲、T盤+K盤+ボーナスディスク合計9枚の3パターンでのリリースとなります。
値段は4枚組で3500円、9枚組で8500円です。
ボーナスディスク…なんでしょうねえ。
いや、どうせもうTMの新音源なんて出ないでしょう。
ただ9枚組の方は、ソニーミュージックダイレクトでの販売なんですよね。
ボーナスディスクにはSONY時代の音源が入るのか…?
以上のように小室さん、意外といろんな情報が出ています。
そしてそのような中で、5/7にインスタグラムが更新されました。
引退会見直後以来3ヶ月半ぶりのSNS更新となります。
非公開なので私は見られないのですが、報道によれば、近況の報告があったようで、
などと書かれていたようです。
これを見る限り、堅実に生活を立て直しているようで安心しました。
そのような中で、「皆さま」(ファン?)のためにどうすれば良いかも考えているようです。
今後も近況が発表される可能性があるとのことで、まだ何か発表すべき活動や商品リリースがあるということでしょうか。
以上、今回は予想外に小室さんの話が多くなりました。
では本題に入ります。
今回からはようやくTM NETWORKの話です。
本ブログ、しばらくはTMモードで行きます。
------------------------------------
2001年1月以来1年以上休止状態だったTM NETWORKに、ある話が舞い込んだ。
日本テレビ開局50周年・吉本興業創業90周年企画キャンペーン「Laugh & Peace 笑いはニッポンを救う。」のキャンペーンソング担当の件である。
TMは2002/8/27に日本テレビで記者会見を行い、キャンペーンソングの担当と再始動を発表した。
同日にはR&Cで、TM NETWORKのサイトが開設され、「本格的再始動」が宣言された。
またキャンペーンソングのCDリリースは10/30とされた。

記者会見、1年半ぶりの3人集結。
プロジェクトリーダーを中心に。
「Laugh & Peace」のキャンペーンは9/1~10/5だったが、その中でも10/1~5には日本テレビでキャンペーン番組が組まれ、特に10/5には特番「生ラフピー笑いはニッポンを救う」「Laugh & Peace!! 笑いは日本を救うスペシャル」が放送された。
TMの新曲はこれらの番組で公開され、特番ではTM3人もコメント出演をしている。
また10/4~12には、日本テレビ「HAMASHO」という深夜番組のエンディングテーマにも使われたらしい。
だがそれ以後はリリースまで18日間、タイアップがなかった。
キャンペーンソングとはいっても、ありがたみがあまりないタイアップという印象を受ける。
なお2001年4~6月放送の日本テレビ系列の人気ドラマに「明日があるさ」があった。
その出演者は、主演の浜田雅功をはじめ、吉本芸人を中心としていたが、このドラマの放送終了直後、翌年の映画版「明日があるさ THE MOVIE」の上映計画が発表された。
特番「Laugh & Peace」は、この映画の全国公開の日に放送されており、映画プロモーション企画の発展形という側面もあったようである。
キャンペーンソングの話がいつTMに来たのかははっきりしないが、2002/7/29には小室と木根がこの件で会合を行なっており、7月中には決定していたらしい。
ただ話はこれ以前からあったという。
以前言及したところだが、ウツ・木根の吉本移籍が決まった2002年1月の時点で、おおよその話は決まっていた可能性は高いと思われる。
7/29の会合には、日本テレビプロデューサーの土屋敏男も加わり、キャンペーンのコンセプトなどが説明された。
土屋は日本テレビの「Laugh & Peace」企画にも関与していた。
また人気番組「進ぬ!電波少年」に関わっていたため、その番組内でもTMの新曲を使うことになっていた。
ただし後述の通り、実際には同番組ではほとんど使われなかった。
土屋から要求されたのは聴く人に元気を与える明るい曲調であり、80年代風のテイストだった。
また、必ずしも「Laugh & Peace」のコンセプトにきっちりと適合しなくてもよいので、分かりやすいものを作ってほしいという注文もあった。
おそらくTMの前作「Major Turn-Round」や、globeやGaballなど小室の近作を参照した上で「このようにはしてほしくない」と感じたのだろう。
こうした話し合いを経て制作されたのが、2年ぶりのニューシングル「Castle in the Clouds」である。
キャンペーンソングと言うこともあり、耳なじみの良い音で、分かりやすい構成で作られている。
作曲は小室哲哉、作詞は小室みつ子が担当した。
小室は本作を、J-POPと呼んでいる。
明るいポップな曲調で、Aメロ・Bメロ・サビという典型的な構成となっており、前作「Major Turn-Round」とは大きく異なる作風である。
TMに限らず、21世紀の小室が作ってきたすべての楽曲と異質である。
土屋のオファーを全面的に受け入れたということでもあろう。
小室はおそらく8月の記者会見の前後に、本作のプリプロダクションを行なっていた。
9/2からは渋谷の文化村スタジオで、本格的なレコーディングが始まる。
当時ウツはソロツアー「Tour Ten to Ten」の最中であり、レコーディング参加は9/2・9・20の3日のみだった。
9/1は札幌、9/8には大阪でライブがあったが、その翌日に東京のスタジオでレコーディングに参加した。
かなり無理な日程だったことになる。
本来のスケジュールは、9/2にウツの仮歌を入れ、9/9に最終的な歌入れを行なうというものだったと考えられる。
9/11にはレコーディングがひと段落したという。
楽器パートのレコーディングはこの頃までに完了したのだろう。
9/13には「Castle in the Clouds」の曲名が発表されている。
しかしレコーディングは実際にはその後ももう少しかかった。
9/9には小室みつ子もスタジオに来たが、この時土屋プロデューサ-が歌詞の書き直しを求める一幕があった。
音源を何度も聞いたが、釈然としないものを感じたのだと言う。
お笑い番組で使うには照れくさいというのが率直な感想だったらしい。
土屋が聞いたのは9/2の仮歌入りデモ音源だろう。
みつ子がこの要求に応じて一週間ほど悩んで歌詞を書き直した後、9/20には新旧両バージョンでボーカルの録り直しが行なわれ、同日吉田建・小室哲哉がミックスダウンを行なった。
土屋はこのためにスケジュールの調整も行なったという。
10/1のイベントで楽曲とPVを公開することが決定していたので、本当にギリギリのスケジュールだった。
修正前のバージョンは、11/9「電波少年」の番組内で一度だけ流された。
お笑い芸人の矢部太郎がアフガニスタンに行って、会話を学びつつ現地人を笑わせると言う企画があり、そこで使われたものである。
これは後に「キヲクトキロク」に、「Yabe Version」として1番だけ収録された。
「Yabe Version」とシングル版を聞き比べると、歌詞がまったく変わっていることに気が付く。
土屋はみつ子に、ワンフレーズだけ直してほしいと頼んだが、みつ子は全部書き直したいといってこのようになった。
たとえばサビは以下のようになっている。
「Yabe Version」は、「電波少年」の矢部応援歌というべき内容になっている。
これに対してシングル版は、「笑いはニッポンを救う」のキャンペーンタイトルに沿い、笑いと幸せをテーマとした、より普遍的な内容である。
キャンペーンのキャッチフレーズ「Laugh & Peace」は、「Yabe Version」には入っていない。
実はみつ子は当初依頼を受けた時点で、このキャッチフレーズに抵抗感があったのだという。
だが土屋との話し合いの後、歌詞を考える中で、自分の言葉として消化できるようになったとのことである。
タイトルの「Castle in the Clouds」は、実はサビの歌詞にもAメロ・Bメロの歌詞にも登場せず、最後のサビ繰り返しの直前にワンフレーズ登場するだけである。
(「Yabe Version」段階でも同じ場所に入っていた)
意味は「架空の城」である。
この曲名について、小室みつ子の説明を以下に引用しておこう。
これによれば「Castle in the Clouds」とは、はかないけれども人を幸せな気持ちにできるかもしれないものを表現したものであり、それは愛情・笑い・平和を望む気持ち・夢などということもできる。
人を幸せにできる存在としてのお笑いという点で、「Laugh & Peace」のコンセプトにも適合する発想だった。
ただ正直に言って、上記のみつ子の解説を読まなければ、歌詞だけ見て「Castle in the Clouds」の意味を理解することは無理だろう。
その点ではあまり良いタイトルとは言いがたいと思う。
個人的評価を書くと、本作は歌詞も曲も企画の趣旨によく適合している。
企画者の意向に応えた楽曲と言えるだろう。
しかしこの曲が好きかと言われれば、NOである。
私としては、歴代シングル中でもっとも興味がない曲である。
前作「Major Turn-Round」の重厚な音を聞いた後だけに、ひどくつまらない、「こなした仕事」という印象が強い。
業界側で求めるTMの音がこれなのだとすれば、それに応えることは彼らの魅力を表現する上で何の役にも立たないということだろう。
ただ本シングルに収録される「Castle in the Clouds (TK Piano Version)」は結構好きだ。
これは小室のピアノを中心とした、穏やかなインストである。
最初にピアノ演奏をProToolsで録音した後で、上からシンセなどを加えたものだという。
このバージョンではメロディラインを中心に、曲のエッセンスを味わうことができる。
結局のところ、私がこの曲のオリジナルが苦手なのは、曲のためというよりは、似非80年代風の平均的なアレンジのためなのだと思う。
ただ小室は本作で工夫した箇所として、ドラムを途中でシンセから生に変えたと言っている。
イントロはシンセドラムで、歌に入ってからは生になっているようである。
他にあえて挙げると、1番の後でオケが一度アコギメインになり、2番Aメロを通じてだんだん勢いを増していく当たりは、まあまあ好きなところである(取り立てて面白いアレンジでもないが)。
だが全体としては、ポップスの定石的なアレンジを組み合わせただけに聞こえ、私としては聴いていて楽しくなるところがほとんどない。
本シングルについては、私はカップリングにむしろ注目したい。
曲名は「君がいる朝」で、木根作曲、みつ子作詞である。
みつ子はコーラスにも参加している。
木根が2000年に作ってドラマ主題歌のコンペに提出したが、最終選考で落とされたことは以前述べた。
その後2001年、木根がCO-PRODUCERとして、この曲をウツのソロ楽曲用に提供する案があった。
だがこの時は他にも木根の候補曲があり、ウツは「Hundred Nights, Hundred Stories」を選んだという。
これはROJAMでのウツソロ第一弾シングルとなった「Running To Horizon」のカップリングで、選曲とレコーディングは5月に行なわれている。
こうして「君がいる朝」はお蔵入りしたが、2002年にTM楽曲として、ようやく陽の目を見ることになった。
ウツは曲を知っていたので歌いやすかったと言う。
私としては曲の出来としては、「Castle in the Clouds」よりもこちらの方に軍配を上げたい。
作曲はピアノで弾き語りする形で行なわれた。
CD音源でもおだやかなピアノが印象に残る。
木根はアンプラグドの雰囲気にしたかったといい、小室もそれを意識してミックスを行なった。
実年齢にかかわらず若い印象の曲が多いTM楽曲の中で、「君がいる朝」は例外的に大人の雰囲気を強く出している曲である。
80年代ポップスを意識した「Castle in the Clouds」と続けて聞くと、なおさらそう感じる。
木根はこの頃、40代の大人のTMの歌とはどのようなものかと考えていたという。
タイトルの「君がいる朝」からして、80年代TMではありえないシチュエーションである。
みつ子の歌詞は以下のように、朝に目覚めた男女の模様を描写するところから始まる。
歌詞の内容は、今後も添い遂げるであろう男女の日常の様子を描いたものである。
みつ子にとっても等身大の自分が表現できるのは、実はこういう曲なのかもしれない。
曲のテーマは「目の前にある永遠」で、サビのフレーズにも「ささやかに永遠は目の前にある」とある。
本シングルには以上の3テイクの他に、「Castle in the Clouds」と「君がいる朝」の「TV Mix」が収録されている。
メインボーカルを抜いてオケやコーラスのみを収録した音源で、特筆すべきところもない。
本シングルについて触れておかないといけないことがある。
私が苦手な「Castle in the Clouds」のアレンジとも関わるが、編曲に吉田建が加わっていることである。
しかも吉田はサポート役ではなく、メインのアレンジャーの立場にあった。
小室と吉田の関係は2001/4/15放送の「堂本兄弟」での共演に遡り、2002年春には吉田がglobeの「category trance」以下のツアーでベースを担当している。
2003年にはウツのアルバム「wantok」をプロデュースし、2007年には「TM NETWORK -REMASTER-」でベースを担当した。
吉田は小室逮捕前まで、小室やTMとは意外と深い関係にあった。
「Castle in the Clouds」はポップな曲調ということで、シンセ中心で制作することもできただろうが、意外にも生演奏を中心に制作されており、ベース吉田建、ドラム村石雅行、パーカッション大儀見元、ギター土方隆行、キーボード富樫春生が演奏している。
後に「Easy Listening」に収録された「Album Version」は、メインの音がほぼシンセで作られているため、聞いた時の印象はかなり異なる。
これら生パートのレコーディングは吉田が担当したものと見え、ライナーには「BAND ARRANGEMENT BY KEN YOSHIDA」とある。
小室はADDITIONAL SYNTHESIZERSとして参加しているが、木根のギターは入っていない。
小室は吉田の指揮下でレコーディングされたバンド音源を元に、最終的に手を加えて、ミックスダウンを行なった。
「Castle in the Clouds」の編曲が小室・吉田名義であるのに対し、「君がいる朝」の編曲は木根・吉田名義で、小室の名前は入っていない。
実際には小室も最後の仕上げとミックスダウンには関わっており、間奏のシンセパッドはこの時に小室が加えたものだというが、基本的には木根と吉田によって制作されたのだろう。
それまでTMのオリジナル楽曲は、原則として小室が編曲を務めた。
もっとも「EXPO」収録の「月はピアノに誘われて」(久保こーじ編曲)など例外もある。
再始動後でも「Major Turn-Round」中の木根曲「We Are Starting Over」「Pale Shelter」「Cube」は、CDのライナーに編曲者が明記されない(小室曲については小室編曲と明記)。
これらは小室以外のアレンジャーが関わっていたようにも思われる。
特に「We Are Starting Over」はシングルでもあった(本記事ジラルココさんコメント)。
だがそうだとしても、これまで小室以外の編曲者の参加は、おおっぴらに言われることはなかった。
これに対して「Castle in the Clouds」では、外注した編曲者の名が初めて表に出る。
この後、2004年シングル「NETWORK TM」収録の「風のない十字路」も、
「君がいる朝」と同様の体制が取られている。
小室はglobeについては2001年「outernet」で一部の作曲・編曲を外注しており、「global trance」でもリミックスを外注している。
この流れの中で、TM作品の制作・アレンジを外注することは、小室の中でそれほど違和感がなかったのかもしれないが、TMの歴史を考える場合、かなり特異な状況だった。
小室は当時トランスに注力していたが、日本テレビ側の要求である80年代風テイストの中に、トランスの要素を入れることは難しい。
小室はその落としどころを模索するのではなく、完全に仕事として割り切ってこの仕事を引き受けたのだろうが、そうならば小室自身が全面的に関与する必要は必ずしもない。
むしろ仕事を職人的にこなすには、自分よりも吉田の方が適任と考えたものかもしれない。
一方globeでは「Lights」以後、全曲小室自ら編曲を行なっており、温度差を感じるところである。
なお本作制作においては、木根が小室によって「プロジェクトリーダー」にされた。
1999年にも木根が「マネージャー」と言われたが、それを髣髴させる。
「プロジェクトリーダー」木根は、関係者のスケジュール調整や、R&C・日本テレビ関係者との連絡などを行なっていたようだ。
これも小室の無茶ぶり話として木根が冗談ぽく話しているものだが、やはり小室の積極性が薄いことは否めないと思う。
このような問題を抱えたシングル「Castle in the Clouds」は、2002/10/30にリリースされた。
シングルとしては「We Are Starting Over」から2年ぶり、メジャーシングルとしては「Happiness×3 Loneliness×3」から3年ぶりとなる。
ジャケットは黄色い車のドアを横から撮影したものである。
「LAUGH & PEACE」のロゴも入っているが、このロゴは「TM NETWORK」「CASTLE IN THE CLOUDS」のタイトルよりも目立っている。
その点でTMのCDという側面よりも、キャンペーンソングのCDという側面を強調したデザインと言えるかもしれない。
なおジャケットには3人の写真は見えないが、ライナーにはソファーに座った3人の写真が入っている。
この写真は、8/27の記者会見の後で撮影したものである。
本作はチャートでは初登場9位で、総合3.6万枚の売上である。
1999年リリースの前メジャーシングル「Happiness×3 Loneliness×3」は、当時問題にされるほど低い売上となったが、それでも9位、8万枚の成績を出していた。
そこから見ても半減したことになる。
ちなみに再始動後のTMのメジャーシングルの売上は、だいたい以下のようになる。
リリースのたびごとにかなり減少していることが分かるだろう。
・1999年「Get Wild Decade Run」23万
・1999年「10 Years After」17万(前作の2/3)
・1999年「Happiness×3 Loneliness×3」8万(前作の約1/2)
・2002年「Castle in the Clouds」4万(前作の約1/2)
TMが2000年に世間の目に触れない形で活動していた間に離れたファンも多かったのだろうが、それにしてもこの時のキャンペーンソング起用は、その時に離れたファンを取り戻す効果はほとんどなかったと言ってよい。
ただしglobeも2001年にはシングルで10万枚程度の売り上げを出していたが、最新作「dreams from above」(2002/7/31、globe vs push名義)は、12位・2.5万枚の成績に終わっている。
そのような中での「Castle in the Clouds」の成績は、小室関係の作品としてはそこそこだったともいえる。
だが状況は、小室にとって楽観視できるものではなかった。
小室作品の売上減少があらゆる部分で顕著になってきており、その大勢はキャンペーンソングのタイアップを得ても変わることはなかったということである。
小室のやる気も引き出されることはなかった。
この点については、次章以降で触れることにしよう。
え?今頃?と思いましたが、意外と今の小学生にも人気あるそうです。
「City Hunter」劇場版もそうですが、リバイバルのタイミングから見て、TM NETWORK35周年を絡めることも前提に動いていたんじゃないかとも感じさせます。
ちなみに3/2からNHKで開催されていた「全ガンダム大投票」の投票結果は5/5に発表されましたが、ガンダムソングス部門では「Beyond The Time」が4位でした。
木根さんのソロツアーが発表されました。
6/23~9/16開催で、タイトルは「2525ツアー」とのことです。
良く分からないですけど、ソロ25年目のツアーということでしょうか。
FC予約はもう始まっているようです。
小室さんの近況について、5/9に「超英雄祭 KAMEN RIDER × SUPER SENTAI LIVE & SHOW 2018」のBlu-rayがリリースされました。
現状で唯一のPANDORAライブ映像の商品化となります。
2月のbillboardのライブ、商品化しないんでしょうかねえ。
4/25には「Guardians」主題歌のショートバージョンMVが公開されました。
曲名は「Guardian」です。
PANDORAでも組んだBeverlyさんがゲストボーカルを務めています。
MVには小室さんも出演し、フルオーケストラでの演奏風景が収録されています。
曲はとてもいいですね。
こういう聞かせる曲て、久しぶりな気がします。
それにMVでは小室さんが目立ちまくりです。
avex、小室さんの状態次第では、復帰の舞台を整えようとしているんでしょうか。
同じ4/25には、小室さんが8/31公開の映画「SUNNY」の音楽を担当することが発表されました。
90年代に女子高生だった6人が20数年ぶりに再会する物語で、6人の女子高生時代のシーンでは、90年代の音楽やファッションをちりばめて当時を再現するようです。
小室さんは90年代を席巻したヒットメーカーとして、このたび登用されました。
映画中では当時のヒット曲が用いられますが、小室さんの曲としては安室奈美恵「Don't wanna cry」「Sweet 19 Blues」、hitomi「Candy Girl」、trf「survival dAnce」「EZ Do Dance」の5曲が使われます。
その他に小室さん制作の劇伴24曲も用いられます。
この映画、主演は篠原涼子さんとのことです。
今回は篠原さんが歌うと言う情報は出ていませんが、ともかく小室さんの引退完了の直前に、映画を通じて再び絡むことになりました。
この仕事は「Guardians」と同じく、1年前に引き受けた話だったそうです。
そろそろ年代的に90年代リバイバルが来るころでしょうし、引退がなければ、今後もこういう話が来ることになったかもしれないです。
小室さんは今回のお仕事について、以下のようにコメントしています。
「最後」をやたらと強調していますね…。
僕は音楽全般を担当させて頂きましたが、最後の僕の映画音楽になります。一本の映画で自分の音をこれほどまで多く耳にする事は中々無いだろうなと思うと同時に、締め切り間近になればなるほど最後の仕事で「映画音楽とは」を教えてもらった気がします。
ただ監督の大根仁さんは小室さんの音楽について、以下のように言ってくれています。
90年代の大ヒット曲はもちろん、2018年の現在でも進化し続けるTKサウンドをご期待ください!この映画を観たら、誰しもが「引退してる場合じゃないでしょ!!」と思うはずです。マジでヤバいですよ。
4/27~5/3の一週間、ニコニコ動画では、「小室哲哉GOLDEN WEEK SP~TK GREATEST WORKS~」のプログラムが組まれました。
特に新しいものはなかったようですが、この期に及んで小室さんを売り出そうとするのはなぜ?と思っていました。
すると5/1に理由が分かりました。
小室さんのベスト盤「TETSUYA KOMURO ARCHIVES」が6/27にリリースされるそうです。
リリースはavexですが、収録曲にはavex以外のものもあるようです。
(現時点で発表されているものではSONY作品あり)
T盤4枚組50曲、K盤4枚組50曲、T盤+K盤+ボーナスディスク合計9枚の3パターンでのリリースとなります。
値段は4枚組で3500円、9枚組で8500円です。
ボーナスディスク…なんでしょうねえ。
いや、どうせもうTMの新音源なんて出ないでしょう。
ただ9枚組の方は、ソニーミュージックダイレクトでの販売なんですよね。
ボーナスディスクにはSONY時代の音源が入るのか…?
以上のように小室さん、意外といろんな情報が出ています。
そしてそのような中で、5/7にインスタグラムが更新されました。
引退会見直後以来3ヶ月半ぶりのSNS更新となります。
非公開なので私は見られないのですが、報道によれば、近況の報告があったようで、
「まずはストレスからの精神安定、難聴など。介護の解決策など山積ですが、おかげさまで静かに生活させていただいています」
「皆さまが少しでも笑顔になれる僕の役目は何か、日々考えています」
「また、また、何かしらからから近況が、報告されるかもしれませんが、メディアの皆さんも暖かいです。では、また」
などと書かれていたようです。
これを見る限り、堅実に生活を立て直しているようで安心しました。
そのような中で、「皆さま」(ファン?)のためにどうすれば良いかも考えているようです。
今後も近況が発表される可能性があるとのことで、まだ何か発表すべき活動や商品リリースがあるということでしょうか。
以上、今回は予想外に小室さんの話が多くなりました。
では本題に入ります。
今回からはようやくTM NETWORKの話です。
本ブログ、しばらくはTMモードで行きます。
------------------------------------
2001年1月以来1年以上休止状態だったTM NETWORKに、ある話が舞い込んだ。
日本テレビ開局50周年・吉本興業創業90周年企画キャンペーン「Laugh & Peace 笑いはニッポンを救う。」のキャンペーンソング担当の件である。
TMは2002/8/27に日本テレビで記者会見を行い、キャンペーンソングの担当と再始動を発表した。
同日にはR&Cで、TM NETWORKのサイトが開設され、「本格的再始動」が宣言された。
またキャンペーンソングのCDリリースは10/30とされた。

記者会見、1年半ぶりの3人集結。
プロジェクトリーダーを中心に。
「Laugh & Peace」のキャンペーンは9/1~10/5だったが、その中でも10/1~5には日本テレビでキャンペーン番組が組まれ、特に10/5には特番「生ラフピー笑いはニッポンを救う」「Laugh & Peace!! 笑いは日本を救うスペシャル」が放送された。
TMの新曲はこれらの番組で公開され、特番ではTM3人もコメント出演をしている。
また10/4~12には、日本テレビ「HAMASHO」という深夜番組のエンディングテーマにも使われたらしい。
だがそれ以後はリリースまで18日間、タイアップがなかった。
キャンペーンソングとはいっても、ありがたみがあまりないタイアップという印象を受ける。
なお2001年4~6月放送の日本テレビ系列の人気ドラマに「明日があるさ」があった。
その出演者は、主演の浜田雅功をはじめ、吉本芸人を中心としていたが、このドラマの放送終了直後、翌年の映画版「明日があるさ THE MOVIE」の上映計画が発表された。
特番「Laugh & Peace」は、この映画の全国公開の日に放送されており、映画プロモーション企画の発展形という側面もあったようである。
キャンペーンソングの話がいつTMに来たのかははっきりしないが、2002/7/29には小室と木根がこの件で会合を行なっており、7月中には決定していたらしい。
ただ話はこれ以前からあったという。
以前言及したところだが、ウツ・木根の吉本移籍が決まった2002年1月の時点で、おおよその話は決まっていた可能性は高いと思われる。
7/29の会合には、日本テレビプロデューサーの土屋敏男も加わり、キャンペーンのコンセプトなどが説明された。
土屋は日本テレビの「Laugh & Peace」企画にも関与していた。
また人気番組「進ぬ!電波少年」に関わっていたため、その番組内でもTMの新曲を使うことになっていた。
ただし後述の通り、実際には同番組ではほとんど使われなかった。
土屋から要求されたのは聴く人に元気を与える明るい曲調であり、80年代風のテイストだった。
また、必ずしも「Laugh & Peace」のコンセプトにきっちりと適合しなくてもよいので、分かりやすいものを作ってほしいという注文もあった。
おそらくTMの前作「Major Turn-Round」や、globeやGaballなど小室の近作を参照した上で「このようにはしてほしくない」と感じたのだろう。
こうした話し合いを経て制作されたのが、2年ぶりのニューシングル「Castle in the Clouds」である。
キャンペーンソングと言うこともあり、耳なじみの良い音で、分かりやすい構成で作られている。
作曲は小室哲哉、作詞は小室みつ子が担当した。
小室は本作を、J-POPと呼んでいる。
明るいポップな曲調で、Aメロ・Bメロ・サビという典型的な構成となっており、前作「Major Turn-Round」とは大きく異なる作風である。
TMに限らず、21世紀の小室が作ってきたすべての楽曲と異質である。
土屋のオファーを全面的に受け入れたということでもあろう。
小室はおそらく8月の記者会見の前後に、本作のプリプロダクションを行なっていた。
9/2からは渋谷の文化村スタジオで、本格的なレコーディングが始まる。
当時ウツはソロツアー「Tour Ten to Ten」の最中であり、レコーディング参加は9/2・9・20の3日のみだった。
9/1は札幌、9/8には大阪でライブがあったが、その翌日に東京のスタジオでレコーディングに参加した。
かなり無理な日程だったことになる。
本来のスケジュールは、9/2にウツの仮歌を入れ、9/9に最終的な歌入れを行なうというものだったと考えられる。
9/11にはレコーディングがひと段落したという。
楽器パートのレコーディングはこの頃までに完了したのだろう。
9/13には「Castle in the Clouds」の曲名が発表されている。
しかしレコーディングは実際にはその後ももう少しかかった。
9/9には小室みつ子もスタジオに来たが、この時土屋プロデューサ-が歌詞の書き直しを求める一幕があった。
音源を何度も聞いたが、釈然としないものを感じたのだと言う。
お笑い番組で使うには照れくさいというのが率直な感想だったらしい。
土屋が聞いたのは9/2の仮歌入りデモ音源だろう。
みつ子がこの要求に応じて一週間ほど悩んで歌詞を書き直した後、9/20には新旧両バージョンでボーカルの録り直しが行なわれ、同日吉田建・小室哲哉がミックスダウンを行なった。
土屋はこのためにスケジュールの調整も行なったという。
10/1のイベントで楽曲とPVを公開することが決定していたので、本当にギリギリのスケジュールだった。
修正前のバージョンは、11/9「電波少年」の番組内で一度だけ流された。
お笑い芸人の矢部太郎がアフガニスタンに行って、会話を学びつつ現地人を笑わせると言う企画があり、そこで使われたものである。
これは後に「キヲクトキロク」に、「Yabe Version」として1番だけ収録された。
「Yabe Version」とシングル版を聞き比べると、歌詞がまったく変わっていることに気が付く。
土屋はみつ子に、ワンフレーズだけ直してほしいと頼んだが、みつ子は全部書き直したいといってこのようになった。
たとえばサビは以下のようになっている。
(Yabe Version)
Endless dream 見知らぬ街角で 君はただ一人きりでも大丈夫だろうか
Endless road 大地走る道は いつか探した場所に
たどりつくはず 時間を越えて過ちを越えて
めぐり逢おうもう一度
(シングル版)
Endless night ふたりきりの夜は 君をほんの一秒でも幸せにしたくて
Endless day やりきれない朝は 憂鬱な自分の顔笑い飛ばして
We can bring back Laugh & Peace, We can bring back Laugh & Peace
今日のドアを開けよう
「Yabe Version」は、「電波少年」の矢部応援歌というべき内容になっている。
これに対してシングル版は、「笑いはニッポンを救う」のキャンペーンタイトルに沿い、笑いと幸せをテーマとした、より普遍的な内容である。
キャンペーンのキャッチフレーズ「Laugh & Peace」は、「Yabe Version」には入っていない。
実はみつ子は当初依頼を受けた時点で、このキャッチフレーズに抵抗感があったのだという。
だが土屋との話し合いの後、歌詞を考える中で、自分の言葉として消化できるようになったとのことである。
タイトルの「Castle in the Clouds」は、実はサビの歌詞にもAメロ・Bメロの歌詞にも登場せず、最後のサビ繰り返しの直前にワンフレーズ登場するだけである。
(「Yabe Version」段階でも同じ場所に入っていた)
意味は「架空の城」である。
この曲名について、小室みつ子の説明を以下に引用しておこう。
人が求めるもののほとんどは形のないもので、なかなか手に入らなかったり、届かなかったり…。愛情も、笑いも、平和を望む気持ちも、個人的な夢も、架空の城を求めるようなもの。架空の城のようにすぐに消えてしまうかもしれないけれど、誰かを一瞬だけでも幸せな気持ちにできるかもしれない。できなくても、そういう架空の城を持っていたい――そういう気持ちでタイトルにしました。
これによれば「Castle in the Clouds」とは、はかないけれども人を幸せな気持ちにできるかもしれないものを表現したものであり、それは愛情・笑い・平和を望む気持ち・夢などということもできる。
人を幸せにできる存在としてのお笑いという点で、「Laugh & Peace」のコンセプトにも適合する発想だった。
ただ正直に言って、上記のみつ子の解説を読まなければ、歌詞だけ見て「Castle in the Clouds」の意味を理解することは無理だろう。
その点ではあまり良いタイトルとは言いがたいと思う。
個人的評価を書くと、本作は歌詞も曲も企画の趣旨によく適合している。
企画者の意向に応えた楽曲と言えるだろう。
しかしこの曲が好きかと言われれば、NOである。
私としては、歴代シングル中でもっとも興味がない曲である。
前作「Major Turn-Round」の重厚な音を聞いた後だけに、ひどくつまらない、「こなした仕事」という印象が強い。
業界側で求めるTMの音がこれなのだとすれば、それに応えることは彼らの魅力を表現する上で何の役にも立たないということだろう。
ただ本シングルに収録される「Castle in the Clouds (TK Piano Version)」は結構好きだ。
これは小室のピアノを中心とした、穏やかなインストである。
最初にピアノ演奏をProToolsで録音した後で、上からシンセなどを加えたものだという。
このバージョンではメロディラインを中心に、曲のエッセンスを味わうことができる。
結局のところ、私がこの曲のオリジナルが苦手なのは、曲のためというよりは、似非80年代風の平均的なアレンジのためなのだと思う。
ただ小室は本作で工夫した箇所として、ドラムを途中でシンセから生に変えたと言っている。
イントロはシンセドラムで、歌に入ってからは生になっているようである。
他にあえて挙げると、1番の後でオケが一度アコギメインになり、2番Aメロを通じてだんだん勢いを増していく当たりは、まあまあ好きなところである(取り立てて面白いアレンジでもないが)。
だが全体としては、ポップスの定石的なアレンジを組み合わせただけに聞こえ、私としては聴いていて楽しくなるところがほとんどない。
本シングルについては、私はカップリングにむしろ注目したい。
曲名は「君がいる朝」で、木根作曲、みつ子作詞である。
みつ子はコーラスにも参加している。
木根が2000年に作ってドラマ主題歌のコンペに提出したが、最終選考で落とされたことは以前述べた。
その後2001年、木根がCO-PRODUCERとして、この曲をウツのソロ楽曲用に提供する案があった。
だがこの時は他にも木根の候補曲があり、ウツは「Hundred Nights, Hundred Stories」を選んだという。
これはROJAMでのウツソロ第一弾シングルとなった「Running To Horizon」のカップリングで、選曲とレコーディングは5月に行なわれている。
こうして「君がいる朝」はお蔵入りしたが、2002年にTM楽曲として、ようやく陽の目を見ることになった。
ウツは曲を知っていたので歌いやすかったと言う。
私としては曲の出来としては、「Castle in the Clouds」よりもこちらの方に軍配を上げたい。
作曲はピアノで弾き語りする形で行なわれた。
CD音源でもおだやかなピアノが印象に残る。
木根はアンプラグドの雰囲気にしたかったといい、小室もそれを意識してミックスを行なった。
実年齢にかかわらず若い印象の曲が多いTM楽曲の中で、「君がいる朝」は例外的に大人の雰囲気を強く出している曲である。
80年代ポップスを意識した「Castle in the Clouds」と続けて聞くと、なおさらそう感じる。
木根はこの頃、40代の大人のTMの歌とはどのようなものかと考えていたという。
タイトルの「君がいる朝」からして、80年代TMではありえないシチュエーションである。
みつ子の歌詞は以下のように、朝に目覚めた男女の模様を描写するところから始まる。
朝が来て一筋の光の中にたたずんで
ゆっくりと服をまとっていく君を見ていた
「眠ろうよもう少し」 シーツから手を伸ばしても
たしなめるような微笑みで振り返るだけ
歌詞の内容は、今後も添い遂げるであろう男女の日常の様子を描いたものである。
みつ子にとっても等身大の自分が表現できるのは、実はこういう曲なのかもしれない。
曲のテーマは「目の前にある永遠」で、サビのフレーズにも「ささやかに永遠は目の前にある」とある。
本シングルには以上の3テイクの他に、「Castle in the Clouds」と「君がいる朝」の「TV Mix」が収録されている。
メインボーカルを抜いてオケやコーラスのみを収録した音源で、特筆すべきところもない。
本シングルについて触れておかないといけないことがある。
私が苦手な「Castle in the Clouds」のアレンジとも関わるが、編曲に吉田建が加わっていることである。
しかも吉田はサポート役ではなく、メインのアレンジャーの立場にあった。
小室と吉田の関係は2001/4/15放送の「堂本兄弟」での共演に遡り、2002年春には吉田がglobeの「category trance」以下のツアーでベースを担当している。
2003年にはウツのアルバム「wantok」をプロデュースし、2007年には「TM NETWORK -REMASTER-」でベースを担当した。
吉田は小室逮捕前まで、小室やTMとは意外と深い関係にあった。
「Castle in the Clouds」はポップな曲調ということで、シンセ中心で制作することもできただろうが、意外にも生演奏を中心に制作されており、ベース吉田建、ドラム村石雅行、パーカッション大儀見元、ギター土方隆行、キーボード富樫春生が演奏している。
後に「Easy Listening」に収録された「Album Version」は、メインの音がほぼシンセで作られているため、聞いた時の印象はかなり異なる。
これら生パートのレコーディングは吉田が担当したものと見え、ライナーには「BAND ARRANGEMENT BY KEN YOSHIDA」とある。
小室はADDITIONAL SYNTHESIZERSとして参加しているが、木根のギターは入っていない。
小室は吉田の指揮下でレコーディングされたバンド音源を元に、最終的に手を加えて、ミックスダウンを行なった。
「Castle in the Clouds」の編曲が小室・吉田名義であるのに対し、「君がいる朝」の編曲は木根・吉田名義で、小室の名前は入っていない。
実際には小室も最後の仕上げとミックスダウンには関わっており、間奏のシンセパッドはこの時に小室が加えたものだというが、基本的には木根と吉田によって制作されたのだろう。
それまでTMのオリジナル楽曲は、原則として小室が編曲を務めた。
もっとも「EXPO」収録の「月はピアノに誘われて」(久保こーじ編曲)など例外もある。
再始動後でも「Major Turn-Round」中の木根曲「We Are Starting Over」「Pale Shelter」「Cube」は、CDのライナーに編曲者が明記されない(小室曲については小室編曲と明記)。
これらは小室以外のアレンジャーが関わっていたようにも思われる。
特に「We Are Starting Over」はシングルでもあった(本記事ジラルココさんコメント)。
だがそうだとしても、これまで小室以外の編曲者の参加は、おおっぴらに言われることはなかった。
これに対して「Castle in the Clouds」では、外注した編曲者の名が初めて表に出る。
この後、2004年シングル「NETWORK TM」収録の「風のない十字路」も、
「君がいる朝」と同様の体制が取られている。
小室はglobeについては2001年「outernet」で一部の作曲・編曲を外注しており、「global trance」でもリミックスを外注している。
この流れの中で、TM作品の制作・アレンジを外注することは、小室の中でそれほど違和感がなかったのかもしれないが、TMの歴史を考える場合、かなり特異な状況だった。
小室は当時トランスに注力していたが、日本テレビ側の要求である80年代風テイストの中に、トランスの要素を入れることは難しい。
小室はその落としどころを模索するのではなく、完全に仕事として割り切ってこの仕事を引き受けたのだろうが、そうならば小室自身が全面的に関与する必要は必ずしもない。
むしろ仕事を職人的にこなすには、自分よりも吉田の方が適任と考えたものかもしれない。
一方globeでは「Lights」以後、全曲小室自ら編曲を行なっており、温度差を感じるところである。
なお本作制作においては、木根が小室によって「プロジェクトリーダー」にされた。
1999年にも木根が「マネージャー」と言われたが、それを髣髴させる。
「プロジェクトリーダー」木根は、関係者のスケジュール調整や、R&C・日本テレビ関係者との連絡などを行なっていたようだ。
これも小室の無茶ぶり話として木根が冗談ぽく話しているものだが、やはり小室の積極性が薄いことは否めないと思う。
このような問題を抱えたシングル「Castle in the Clouds」は、2002/10/30にリリースされた。
シングルとしては「We Are Starting Over」から2年ぶり、メジャーシングルとしては「Happiness×3 Loneliness×3」から3年ぶりとなる。
ジャケットは黄色い車のドアを横から撮影したものである。
「LAUGH & PEACE」のロゴも入っているが、このロゴは「TM NETWORK」「CASTLE IN THE CLOUDS」のタイトルよりも目立っている。
その点でTMのCDという側面よりも、キャンペーンソングのCDという側面を強調したデザインと言えるかもしれない。
なおジャケットには3人の写真は見えないが、ライナーにはソファーに座った3人の写真が入っている。
この写真は、8/27の記者会見の後で撮影したものである。
本作はチャートでは初登場9位で、総合3.6万枚の売上である。
1999年リリースの前メジャーシングル「Happiness×3 Loneliness×3」は、当時問題にされるほど低い売上となったが、それでも9位、8万枚の成績を出していた。
そこから見ても半減したことになる。
ちなみに再始動後のTMのメジャーシングルの売上は、だいたい以下のようになる。
リリースのたびごとにかなり減少していることが分かるだろう。
・1999年「Get Wild Decade Run」23万
・1999年「10 Years After」17万(前作の2/3)
・1999年「Happiness×3 Loneliness×3」8万(前作の約1/2)
・2002年「Castle in the Clouds」4万(前作の約1/2)
TMが2000年に世間の目に触れない形で活動していた間に離れたファンも多かったのだろうが、それにしてもこの時のキャンペーンソング起用は、その時に離れたファンを取り戻す効果はほとんどなかったと言ってよい。
ただしglobeも2001年にはシングルで10万枚程度の売り上げを出していたが、最新作「dreams from above」(2002/7/31、globe vs push名義)は、12位・2.5万枚の成績に終わっている。
そのような中での「Castle in the Clouds」の成績は、小室関係の作品としてはそこそこだったともいえる。
だが状況は、小室にとって楽観視できるものではなかった。
小室作品の売上減少があらゆる部分で顕著になってきており、その大勢はキャンペーンソングのタイアップを得ても変わることはなかったということである。
小室のやる気も引き出されることはなかった。
この点については、次章以降で触れることにしよう。
この記事へのコメント
私もこの曲のアレンジは好きではなく、吉田さん関与のせいかなと思ってましたが、小室さんの積極性の薄さが要因かなと納得しました。
君がいる朝の歌詞は当時、ここまで来たか~、と少々驚きがありました。(その2年後にPRESENCEやSCREEN OF LIFEでもっと驚くのですが笑)
このシングルがもう少し売れてれば2004年のEASY LISTENINGももっと気合い入って作ってくれたかもですね。。
なんか、シングルっぽい
LIVEでも歌わないし肯定派の人は意外と少数なのかな~
たまには、聴いてみよう~と
このあとの「Easy Listening」は、どの曲も音に艶があってとてもクリアな音像だっただけに、この曲のシングル版のチープさがより際立ちます。ただ”Easy~”に入っているアレンジは、メロディのポップ感とバックトラックのクールな感じがあまり合っていない気がして、いま一つ消化不良ぎみでした。
実は、「Dress 2」発売時に、本曲が重厚なEDMアレンジを施して収録されていないかと期待していました。「Resistance」や「一途な恋」がライブで見事にEDMとしてリアレンジされていたのがとてもカッコ良かっただけに、本曲も様変わりするところを見て見たかったなあ、というのが正直なところです。
ピアノVer.は本当に美しく、小室メロディの美味しいところが詰まっていて、数ある小室さんのピアノ曲でもトップ3に入ると思っています。
Be the oneやGuardianがいい曲なだけに引退は惜しいですね
新しさを追うのがTMの存在価値だと思っていたので、この何とも言えない古臭いサウンド?というかアレンジというかメロディというか、それが嫌でした。
そして、形にこだわってしまう私としては、編曲欄にメンバー外の人がいる、というのも、とてもじゃありませんが納得できるものではありませんでした。
(同じ理由で、作詞がメンバーの小室さんと木根さんのみだった「SPEEDWAY」は、僕にとって最高だったのでした)
ところで、TMN時代、編曲のクレジットがない場合がよくありますが、これはどういうことなんでしょうか?
「EXPO」の歌詞カードの最後の、スタッフ一覧みたいなところでは、Arrangerとして複数の人が載ってますね……
「Major Turn-Round」では、小室さん曲は「編曲小室」となっているのに、木根さん曲では編曲者の欄すらない。
当時の僕はこれを、小室さん以外の人もアレンジに関わっているということだと思い、何だか残念な気持ちになったものでした。
何か僕が勘違いや間違いをしているようであれば、お教えいただければと思います。
曰く付きのインスタグラムでの写真ですが不謹慎を承知で言いますが、「美しい」と感じてしまいました。背景の寒さ・広さ・クールさと小室先生のスタイルが見事にシンクロしていて、この状況に及んでもなお、「飾らない自分なんて見せたくない、今の自分をどの様に美しく見せるか」という小室先生の芸術家としての「性」を見せつけられた様な気がしました。
当時「ニューシングルだったの?」と全然見たこともない車が印象的でした。店の方に「確か再結成したんですよね?」と右も左もわからないとはいえ、変な質問をした私に対して、「一時的な再結成というのもあるんですよ…」と教えられました。今考えると薄ら寒いです。
当時小室先生を取り巻く状況も知らないで、私はよく「新しい曲だー!」と楽しんでいたもんだ…としみじみ。記事を読んでTM版「outernet」もありえたのかな…としみじみ。
失礼致しました。
端的に言えば吉田さんのアレンジつまんなかったんですよね。
吉田さんにとっても「こなした」仕事だったんじゃないかな。わかんないですけど。
「このシングルが売れていれば2004年の~」のくだりですが、
実は私はこのシングルについて、実現しなかった予定がったと考えています。
それはあと数回後に書きますので、夏頃に見に来てください。
>まかろんさん
Castle~好きだって、前言ってましたよね。
ここらへんは個人的な嗜好もあるでしょうね。
私も間奏の他、イントロも期待させる感じがして、嫌いではないです。
シングルっぽいシングルとしては、たしかにWild Heaven以来11年ぶりだったかもしれません。
Decade RunとかIgnition~とか、幅広いユーザーが買う作りじゃなかったですしね。
>pocoさん
Easy~のアレンジについては、私も同じ印象を持っています。
Easy~版のバックトラックは結構好きなんですよ。
ただ歌と合わさった時に、メロディとオケが相乗効果を生んでいるかというと、
むしろその逆で、打ち消し合っているという印象です。
その意味では仰る通り、Dress2で取り上げても良かったのかもしれません。
ピアノ版はホント、ベストテイクですね。
素材は良かったんじゃないかと思うだけに、ホントもったいないです。
Easy~のアレンジについては、私も同じ印象を持っています。
Easy~版のバックトラックは結構好きなんですよ。
ただ歌と合わさった時に、メロディとオケが相乗効果を生んでいるかというと、
むしろその逆で、打ち消し合っているという印象です。
その意味では仰る通り、Dress2で取り上げても良かったのかもしれません。
ピアノ版はホント、ベストテイクですね。
素材は良かったんじゃないかと思うだけに、ホントもったいないです。
>kuri566さん
TMがあまりにも久しぶりすぎて(世間的には1999年以来3年ぶり)、
完全に過去の懐メロと思われていたんでしょうね。
私は発売後数週してから、たまたま立ち寄った町の小さいCDショップで、
棚に一枚だけ見つけて購入しました。
Bメロとサビの接続に無理があるというのはそうかもですね。
私が一番気に食わないところは、サビの最後の盛り上げ部分、
「笑い飛ばして」以後、無理に盛り上げようとしている感じがするところでしょうか。
はじめまして!
小室さん引退ニュースで小室さんに関心を持つ方がいらっしゃるんですね。
40年生み出してきた数々の曲には、駄作も名作もたくさんありますが、
参考になれば嬉しい限りです。
Guardianを聴くと、やっぱり残念ですね。
正直ラストアイドルを聞いた時は、もう引退も仕方ないのかもなて思いましたが。
>ジラルココさん
いささか先取りになりますが、私もSPEEDWAYは、
実は再始動後に初めて3人が寄り添って作った作品として意味があると思っています。
それまではほとんどが小室さんとウツ・木根さんが別々にレコーディングしていましたからね。
あれはEXPO以来16年ぶりの、3人の共同作品だったと思うんです。
実はその間の数少ない例外がCastle~なのですけどね。
EXPOについては、月ピは久保こーじさんが編曲したらしいので、単曲では外注もありましたね。
Major~の編曲者については気付いていませんでした。
たしかに書いていないだけで、小室さん以外の人が編曲を担当していたように見えます。
シングルでもWe Are Starting Overは小室さんが編曲になっていませんし。
ただ小室さん以外の編曲者を出してくるのは、やはり初めてではあると思います。
まあ吉田さんの名前を伏せるわけにはいかなかったのでしょうけどね…
ここらへん、少し加筆しておきます。
ご指摘ありがとうございました。
>feさん
事実上、「一時的な再結成」になりましたよね…。
ジャケットの車は、一体なんなんでしょうね。
意図がつかみかねます。何の含意も感じられませんし。
ライナーについている3人の写真でいいんじゃないかとも思うんですが、
メンバー写真はむしろ不利という判断があったんでしょうか。
Castle in the Cloudsオイラは嫌いじゃないんですけどね
かといってめっちゃ好きなわけでもありませんが
まあこれといって「らしさ」を感じる曲でもありませんし
アレンジャーの問題もあるんですかねえ
コード進行が好きだ嫌いだと言う人がいますが、コード進行が聞いててもサッパリわからないのでうらやましいです……
この曲、人によって結構評価分かれますね。
次のScreen of Lifeもかなり分かれそうですが、ファンの意見が一定しなかったのも、3人がTMやりづらかった原因なんでしょうね。
コード進行とか専門的なことは私もよく分かんないんですが、私の感想は「つまんない音だなあ」ていうことでしょうか。
特に響くところがなかったです。
youさん、今まで紛らわしいニックネームですみませんでした。m(_ _)m
私もいかにも狙った80年代っぽい感じなところとサビ前のドラムで繋げたところが流れをぶった切ってる感じで特別好きではありませんでした。ただ2番Aメロを通じてだんだん勢いを増していく辺りは高揚感があって好きです。
Ignition~やMessageは大好きで「これが新しいTMのスタンダードだ!」と思っていたので、happiness~やCastle~は「TMらしい新しさ」を感じられませんでしたが、なるほど後者はどちらも企画ありきで作られた楽曲だったなと腑に落ちました。
ちなみに、Castleはシングルでは分かりやすい曲&アレンジに全振りだったのをアルバムではアレンジを変えたことで逆に中途半端になってしまっていると感じていて私はシングルの方が好きです。(というかhappiness同様アルバムに入れなくても良かったのでは?アルバムの収録曲的にさらにヤバくなりますが。汗)
歌詞については、春の一連の小室の報道の中で「TMのメンバー3人が夜中に会って明け方まで小室を励ましていた(?)」という記事を読んで、これはまんまCastleの一番の歌詞と重なるなと思い、少し印象が変わりました。
Yabe Versionの歌詞も割と好きですが、個人的な応援ソングになっているという意味ではやはりリリース版の方が完成度は高いですね。
長文失礼しました。それではまた。m(_ _)m
小室さんとしては、自分を慰める曲として作ったわけではないんでしょうけど(笑)
アルバムバージョンは多分小室さんはほとんど関与していないと思っています。新アレンジはDAVE FORDの仕事かと。
多分小室さんから、今風に直してと言われたんでしょう。
君がいる朝とか、歌詞とはまったくかみ合わないアレンジになってましたしね(あれはあれで一周回って好きなんですが)。
というのも、2月にリリースしたLightsがTommy february6のファーストアルバムに敗れて2位になったからです。
このアルバムは2週連続1位、更に70万枚という売り上げとなり80年代リバイバルの牽引役となりましたが、
当時を知る人が聴けばコンピ盤かと勘違いしそうなそのまんまなアルバムで、これが売れてしまったことをトレンドに敏感な小室さんが気にしてなかったとは言えないと思います。
(作品そのものは、当時もののアナログシンセを使用しアナログテープによる録音というこだわりのサウンドで高品質だし、初回盤にDVDが付いた最初のアルバムでもあります)
ちなみに続編の2はモンゴル800のアルバムに抜かれてこちらも2位でした。
この後のglobeはまさかのYOSHIKI様加入でテコ入れをやろうとしたり、更に売るのを諦めたかのようなLEVEL4を経てポップス回帰しますが、もしかするとそのきっかけの一端となったのがこのTMの曲だったり…と妄想してしまうのです。
ただ懐古的という方向性では意識はしているかもしれませんね。
昔風の音でも売れるのかもしれないと思ったとか。
もっともcastleの方向性は第一には日テレの注文によるものであって、tommyを意識していたとしても、castleの制作に関しては二次的なものだったと思います。
あとglobeが原点回帰を標榜したpops/rockは、私は評価が定まっていません。ただ80年代風のポップスというよりは、90年代の小室サウンドの再現という感じなんじゃないかなと漠然と思っています。
否定っぽい返事で失礼しました。ただTommy Februaryとか考えてもいなかったので、興味深かったです。またご意見などあればお聞かせください。