7-12 ソロ11年目のウツと木根
松浦勝人さん、11/8にInstagramに小室さんのピアノ演奏を配信しましたが、11/11にもInstagramに小室さんのピアノ演奏シーンの動画をアップしました。
小室さんがいる店も服も、11/8とは別です。
しかも今回は歌付きで、歌はTUBEの前田亘輝さんでした。
大変意外なコラボです。
曲は尾崎豊「I Love You」で、これまた意外な選曲でした。
松浦さんはコメントで、「前ちんは酔ってて、歌えないのに、小室さんとの再会に無理して歌ってくれました!」と書いています。
こちらの動画はすでに見ることができなくなっていますが、ネットニュースでも何箇所かで取り上げられています。
10~11月の相次ぐ小室さんの露出は何なんだろう?と思っていましたが、まもなく判明しました。
11/27の小室さん還暦誕生日に、新商品「TETSUYA KOMURO ARCHIVES PROFESSIONAL PRODUCTS」のリリースが発表されたのです。
2019/3/27発売予定で、mumo限定で完全受注生産とのことです。
小室さんと松浦さんが会っていたのも、一つにはこの打ち合わせがあったんでしょう。
今年の6/27には4枚組の「TETSUYA KOMURO ARCHIVES "T"」「TETSUYA KOMURO ARCHIVES "K"」、さらに両作品にボーナスディスクを加えた9枚組の「TETSUYA KOMURO ARCHIVES BOX」がリリースされましたが、今回の「PROFESSIONAL PRODUCTS」は、「ARCHIVES BOX」の9枚を含む49枚組BOXとなっています。
要するに「PROFESSIONAL PRODUCTS」を購入する方にとって、「ARCHIVES BOX」はまったく無用のものとなります。
「PROFESSIONAL PRODUCTS」の内容は、これまでの小室さんソロ名義のアルバム・DVD作品を集めたものです。
ただし「V2 Special Live Virginity」「TK Dance Camp」「ELECTRONIC NIGHT」など、小室さん以外のミュージシャンも参加しているものは含まれていません。
収録ディスクの中には、「SPEED TK-REMIX」「Blue Fantasy」など、一部のシングルも入っています。
「Blue Fantasy」はアルバム版ではないんですね。
それならアルバムとして配信された「Arashiyama」とかもCDにして入れれば良いのに、とも思います。
一方で「サイボーグ009」シリーズのサウンドトラックとか、DJTK名義の「Cream of J-POP」が入っていないなど、いまいち採否の基準がよく分からないところもあります。
「TK 1998」収録の「Latest Works」とか、「TETSUYA KOMURO Special Live @DOMMUNE」の付属ライブCDもないですね。
まあ、これらの需要がどれくらいあるかは怪しいですけども…。
今回の目玉は、「PANDORA Billboard LIVE Off Shot Movie」のDVDです。
現時点で小室さん最後の公式ライブの映像ということになります。
スタッフのtwitterによると、「二日間しか開催されなかった伝説のBillboard Liveでの秘蔵オフショット」が収録されているとのことです。
オフショットだけなのか、肝心のライブは入るのか、いまいちよく分からない表現です。
これまで出るかどうかはっきりしなかった「ガーディアンズ」のサウンドトラックも収録されます。
他に、これまで配信音源しかなかった「DEBF EDM 2013 SUMMER」が、今回初のCD化です。
「tk-trap」のライブ映像も、DVDになるのはこれが初めてです(今までVHSしかなかったはず)。
他にEUROGROOVE名義の楽曲を集めた「EUROGROOVE TK Selection」という新編集アルバムも2枚入っています。
以上のような内容の「PROFESSIONAL PRODUCTS」ですが、49枚組という分量のため、定価は108000円というぶっとび価格です。
一万八千円じゃなく、十万八千円です。
いやあ、ファンの高齢化に応じた収奪強化が進んでいますねえ…。
もちろん多くの方にとっては、おいそれと手が出せるものではないでしょうし、それを念頭に置いて売上を予想した上での値段設定なのでしょう。
さらにぶっ飛んでいるのは、本作の豪華版として、「TETSUYA KOMURO ARCHIVES PROFESSIONAL PRODUCTS + Mobile Mini Keyboard reface DX TK Special Edition」なる商品も発売されることです。
こちらは194400円で100セット限定、小室さん直筆サイン入りのミニキーボードが付属します。
しかし驚くべきことにこの豪華版、11/30に予約を開始して1日で売り切れてしまいました。
まじで!?と、びっくりしましたが、考えてみれば11万円出すほどのファンなら、19万だって出しますよね。
ここまで詳しく書いておいてなんですが、今回は(も)私は手を出しません。TM入っていませんしね。
PANDORAのDVDと「ガーディアンズ」サントラは気になりますけど、11万円払ってまで要らないかなあ…。
むしろTMの未発表ライブ映像1曲だけ収録とかという事態になったら、腹が立って仕方なかったと思いますが、今回は特に何も思いません。
ただ注文生産とのことなので、欲しい方は忘れる前にお早めに予約しておくと良いと思います。
他の話題としては、小室さんが2018年レコード大賞で、特別賞の一人に選ばれました。
これが今年の一連の引退記念受賞の最後になるでしょうか。
来年1/20にはNHK総合の「NHKスペシャル」で、「平成史スクープドキュメント 第4回」として、「アムロとコムロ~JPOPふたりのヒットメーカー~」なる特集を組むそうです。
この感じだと小室さんは後世、安室さんをヒットさせたプロデューサーとして語られるようになるんでしょうかね。
あとこの番組、小室さん引退から1年1日目となります。
もう1年になるんですねえ。
ウツは11/23を以って、2ヶ月に及ぶ「Tour Thanatos」を終えました。
これにて還暦記念を冠した2年間の活動も終わりました(ひっぱりすぎの感はありましたが)。
12/10発売の「Keyboard Magazine」2019年冬号には、ライブレポートが載るそうです。
今回のウツソロツアーはこれまでと異なり、MCが一切ない特殊なライブで、サポートもキーボード3人+ギター1人という特殊編成でした。
目的・コンセプトについては明言されていないようですが、小室さん引退の件も意識しているようで、セットリストには5曲も小室さん関連の曲が含まれていました。
(「必然の夢」「if you wish...」「Open Your Heart」「Ignition, Sequence, Start」「Running To Horizon」)
キーボードを強調したのもMCがなかったのも、TMを意識していたのかもしれません。
「Ignition, Sequence, Start」「Running To Horizon」は、2001年の「LOVE-iCE」収録のウツソロバージョンでした。
「Open Your Heart」も「Tour LOVE-iCE」のライブバージョンに準じたアレンジで、小室さん絡みの部分は「LOVE-iCE」関係が多かった印象です。
この3曲は今回のライブでは、本編終盤の盛り上がり5曲(インスト除く)の中で演奏されており、終盤一曲目が「Open Your Heart」、本編ラストが「Running To Horizon」でした。
セットリストにおける小室曲の位置の高さが分かると思います。
あと私、実はこの3曲、生で歌入りで聴くの初めてでした。
まあ「Ignition, Sequence, Start」が「LOVE-iCE」の「tatsumaki remix」というのは、予想もしていませんでしたが(ウツソロだから当たり前なんですけど)。
今回は3曲くらい演奏すると、ウツの休憩も兼ねて、サポートメンバーのソロコーナーが入るのですが、個人的にはnishi-kenさんの「Trilogy」がとても良かったです。
今さらですが、こういう後続世代のミュージシャンがTMをリスペクトしてくれているのは、嬉しいことですね。
あと生で聴いて良いなと思ったのは、「Be Truth」でした。
家で聞き流しても何も感じていなかったんですが、生で聴くと気付く魅力てあるものですね。
ウツはあとは年末のクリスマスディナーショーが控えています。
木根さんも羽田空港のTIAT HALLで、年末ライブ「new STORY」があります。
このライブタイトル、TMの「STORY」とかやるのかな?
12/6からは、来年の木根さん・佐藤竹善さんのコラボライブ(名古屋・神戸)のチケット一般発売が始まります。
なおまだ分からないのですが、私がこれから数ヶ月多忙になる可能性があり、今後春まではブログの更新ができないかもしれません。
案外普通に更新できるかもしれないのですが、なかなか更新がなくても、気長にお待ちください。
これでやめるということはしません。
何しろ次回からは、いよいよ第七部最大の盛り上がりですからね!
え? こんな最悪の沈む話ばかり続いているのに、何が盛り上がりだ、ですって?
何を言っているんですか!
第七部ではこれが一番ハッピーな時代ですよ!
今がつらいとか言っている方に言っておきますが、あと10回くらいのハッピーシーズンが終わったら、その後はどんどん深く沈む一方ですからね!!
てことで、本題に入ります。
----------------------------
前章では2002年後半から2003年にかけての小室哲哉の状況をまとめたが、その頃ウツと木根は、「TM NETWORK tribute LIVE」と並行してソロ活動も行なっていた。
2人は2002年にソロ10周年を迎えたが、11年目となった2003年には、ともに新たな活動形態を模索する。
まずはウツについて見てみよう。
ウツがソロ名義で活動した1996~2004年の中で、最後の2年はネームバリューのあるミュージシャンの登用を積極的に打ち出した点に特徴がある。
2003年は吉田建、2004年は原田真二である。
ウツが吉田建にアルバムのトータルプロデュースを依頼した後、初めて話し合いの場を持ったのは、1月下旬のことだった。
打診は年末年始頃と思われ、ならば2003年のアルバムリリースが中止になった後のこととなる。
ウツが初めて吉田に会ったのは、2002年9月「Castle in the Clouds」レコーディングの時だったらしい。
ただこの時、ウツはソロツアー「Tour Ten To Ten」の最中だったため、9/2・9・20の3日しかスタジオに入っておらず、吉田ともそれほど深く話すことはなかったようだ。
あまり親しくもなかった吉田に何を求めてプロデュースを依頼したのか、ウツが明言しているのを、私は見たことがない。
あるいはこの件では、主導権はスタッフ側にあったのかもしれない。
吉田もTMやウツソロの曲を聞いたことはあまりなく、プロデュースの話が来てから曲を聞いてみたと言う。
要するにウツと吉田のタッグは、音楽的に親しい間柄で行なわれたものというよりは、「仕事」としてウツから依頼され、吉田が引き受けたものだった。
レコーディングは3月から始まり、「tribute LIVE」を挟んで7/16まで行なわれた。
なお「tribute LIVE」中にレコーディングされた「ウィークエンドファイアー」では、「tribute LIVE」のサポートだった葛城哲哉と阿部薫が参加している。
ソロアルバム制作は、「tribute LIVE」の準備・実施と並行して行なわれた。
かなり無理のあるスケジュールである。
そもそも2003年にはTMの活動を行なう予定だったのだから、ソロ活動は当初想定されていなかった可能性がある。
TMの活動がなくなる可能性が生じた2002年11~12月頃の段階で、急遽ソロ活動の計画が始動したのかもしれない。
吉田とのミーティングが1月からであるのも、そのことを感じさせる。
ウツは5月、「tribute LIVE」開催直前に、9~10月のソロツアー開催の告知を行なった。
またアルバムからの先行シングル「道~walk with you~」は、「tribute LIVE」最終公演前日の6/25にリリースされた。
「tribute LIVE」がソロ活動宣伝の場として活用されたことが分かる。
「道」は米倉利德(利紀)の提供曲である。
意外な提供元だが、どのような縁なのだろうか(吉田経由?)。
この頃になるとウツのCDセールスは低く安定し、「道」の成績も前作と変わるところはないが(71位・3000枚)、個人的には好きな曲だ。
吉田も良い仕事をしたと思う。
本作を収めたアルバム「wantok」は、9/3にリリースされた。
アルバムタイトルは、パプアニューギニアで使われているピジン語である。
英語「one talk」(同じ言葉を話す人)に由来し、仲間・絆などの意味を持つという。
アルバムはこの「仲間・絆」をテーマに据えたものだった。
「wantok」を掲げた全国ツアー「Tour wantok」は、9/20~10/26に開催された。
途中で寸劇「wantok X」(TV番組「プロジェクトX」のパロディ)が入るなど、余計な演出もあったが、それよりも注目すべきはバンドメンバーである。
キーボード・コーラス以外の3人(ギター・ベース・ドラム)が、Fence of Defenseのメンバーだったのである。

すみませんが、マットシはほとんど見えません(左端)
山田亘は1993年「Live Butterfly」から2000年「Tour White Room」まで、しばしばウツのライブサポートを務めてきたし、北島健二も2002年「Tour Ten To Ten」でサポートを務めたが、西村麻聡も含めて3人で一緒にサポートを務めたのはこれが初めてである。
ライブでも、西村作曲の「Angel」やFence代表曲「SARA」が演奏された。
(「SARA」は2000年「Tour White Room」でも演奏された)
Fenceは1987年にデビューした後、1999年に活動を休止しており、ウツが声をかけた時点ではバンド活動をしていなかった。
しかし「Tour wantok」で一緒にステージに上がったことをきっかけとして、3人はFence of Defenseの活動再開を宣言し、「Tour wantok」ファイナル後、10/31に再始動ライブを行なっている。
その点でこのツアーは、ウツだけでなくFence3人にとっても重要なものだった。
これは2004年TM NETWORK「Double-Decade Tour Final」や、2009年ウツソロ「SMALL NETWORK」でのFence登用の前提にもなっている。
話題を木根に移そう。
2003年の木根は年始から、野心的な試みを提示していた。
2003年に46歳を迎えることに因み、年内に46本のライブを敢行するというものである。
ウツと違って一人でもライブができる木根の強みを生かした企画とも言える。
2003年最初のライブとなったのは、3/6「talk & live 番外編 vol.3」吉祥寺Star Pine's Café公演である。
ツアー前半は7/25まで24本行なわれ、さらに8/23・24には「SUMMER SPECIAL」と題するツアー特別版も開催された。
この間は木根1人、ギターのみでの演奏となった。
このツアーは「tribute LIVE」中も並行して開催されており、「tribute LIVE」の公演日前後に、その近くで開催されることも多かった。
木根もウツと同様に、「tribute LIVE」をソロの宣伝に活用していた。
9/24~10/17のツアー後半9本では、ピアノも導入された(サポートは無し)。
さらに11/22~12/27には、バンドスタイルの「talk & live vol.8~Ci è la musica~」が11本行なわれた。
なお「talk & live vol.8」でキーボードを務めた佐々木真理は、10月までウツの「Tour wantok」にも参加していた。
以上、木根は「talk & live 番外編」「talk & live」を合わせて、宣言通り合計46の公演をやりとげた。
(公演数については本記事コメント欄でharuさんに御確認いただきました)
ツアー期間正味7ヶ月で46本だから、4~5日に1公演をこなしていたことになる。
なおこの他に年末には、年越しライブ「talk talk talk & live」も開催されている。
木根はツアーと並行して、ミニアルバムの制作も行なった。
木根は2002年にソロ10周年を終えるとともに、「CAROL」以来となるファンタジー小説執筆を計画していた。
すでに2002/12/21には、「Ci è la musica〜約束された物語」がリリースされていたが、これはその小説のストーリーに沿った内容だった。
小説とアルバムの連動という企画は、「CAROL」を意識したものかもしれない。
木根としては、ソロ十周年の節目に第二の出発点となる作品を書きたいという意欲だったという。
木根は「talk & live 番外編vol.3」と並行して、春から夏まで執筆を行なった。
春の木根はソロツアー・「tribute LIVE」・小説執筆の3つを、同時並行で行なっていたことになる。
「talk & live 番外編vol.3」が終わった後は、8月を挟んで(この間に目の手術を行なっている)9月から、ミニアルバム「Ci è la musica due」の制作に入る。
「Ci è la musica」の続編である。
これは11/19にリリースされ、さらに11/28には小説「七つの角笛〜Ci è la musica〜」が発売された。
「Ci è la musica due」リリース直後から開催された「talk & live vol.8」は、「Ci è la musica」2作を軸に行なわれた。
木根はこのように1年間の周到な活動を経て、2枚のミニアルバム・小説・46本のツアーという構想を実現させた。
ただ「七つの角笛」は、2018年時点で木根の最後の単行本の小説となっている。
この頃になると執筆業もあまり成果が出なくなって来ていたのだろうか。
一方2003/3/14には木根の著作物として、「まっすぐ進む夢へのヒント54」なる本も出ている。
3月に始まった「talk & live 番外編 vol.3」は、この本の販促も一つの目的だった。
「まっすぐ進む夢へのヒント54」は人生指南書のような内容で、それまで小説を中心としてきた木根の執筆業の中では異質である。
小説業の雲行きが怪しくなってきた中で、新分野への進出も考えるようになったものかもしれない。
しかしこの方面の出版も後に続くことはなかった。
結局木根の継続的な執筆業は、TMファンをターゲットとした「電気じかけの予言者たち」シリーズを除くと、2003年の2作を以ってほぼ終わりを告げた。
(一応あと数作は断続的に出るが)
これに代わって木根は、2005年から舞台に力を注ぐようになる。
この前提として注目される木根の仕事が、2003/11/6~12/10に開催されたミュージカル「天使は瞳を閉じて」への楽曲提供である。
「天使は瞳を閉じて」は、1988年以来長く上演されてきた舞台演目だが、その演出を担当した鴻上尚史が、これをミュージカル版に作り替えた。
音楽プロデューサーは森雪之丞が担当したが、杏里・デーモン閣下・高橋幸宏・岸谷香・中西圭三・山本恭司など錚々たる面々の中の一人として、木根も森から声をかけられた。
舞台音楽は「天使は瞳を閉じて・ミュージックファイル」としてリリースされたが、インスト担当のRay Cameronを除くと、木根は最多の3曲が収録されている。
(「誰もいなくなってしまった」「世界で一番倖せな歌」「HISTORY」)
この時点では木根は舞台に出演はしていないものの、以後舞台への進出を考えるようになる一つの前提となったのかもしれない。
以上のように2003年の木根は、ミニアルバム制作、頻繁なソロライブ、書籍の出版、ミュージカル音楽の提供などを行なった。
もちろんこれに加えて、「tribute LIVE」出演や断続的なTMの仕事もあった。
この年の木根の精力的な活動には驚かされる。
2004年のTM20周年まで実質的にTMをひっぱってきたことも含め、木根の努力は評価されるべきだろう。
以上前章からこれまで、2003年の小室・ウツ・木根の活動を見てきたが、TM名義ではない形で3人が接点を持つこともあった。
2003/12/1「AAA」である。
ウツ・木根は1993年の第一回「AAA」以来、本イベントの常連として出演し続けた。
そして1997年年末にTM再始動宣言が出されてからは、1998年以後毎年このイベントで、TMの曲を1曲演奏してきた。
2003年にもやはり、TMの曲が演奏された。
ところがこの時は、少し事情が違った。
以下、この時の公演の様子を見てみよう。
最初はウツ・木根が狩人の「あずさ2号」を演奏したが、その途中で狩人本人らがサプライズ出演し、4人で一緒に昭和歌謡5曲のメドレーを歌った。
メドレーの選曲はウツ・木根と狩人の加藤高道で決めたと言う。
そして狩人が退場すると、今度は入れ替わりで小室とKEIKOがサプライズ出演した。
小室はKEIKOソロシングル「KCO」のリリースを宣伝した上で、KEIKOがメインボーカルを取って、「Dreams of Christmas」を演奏した(小室もキーボードで演奏に参加)。
アレンジは「KCO」収録のKEIKO版で、ウツはサビのコーラスを担当しただけである。
一応TMの曲で締めた形にはなったが、ウツによるTM曲を期待したファンには期待外れだっただろう。
(別にTM曲をやるという告知があったわけではないが)
なおウツ・木根は2004・2005年にも「AAA」に出演したが、TMの曲は演奏していない。
結局この「Dreams of Christmas」が、「AAA」で最後に演奏されたTM曲となった。
「AAA」と比べると参加できたファンはかなり限定されるだろうが、TMファンとしては盛岡都南文化会館の「宇都宮隆・木根尚登 Christmas Accoustic Live」の方が、参加の意味はあったかもしれない。
12/10にFM岩手主催で800名を抽選で無料招待し、公開録音したものである(12/23放送)。
このライブにはウツ・木根が出演し、山本英美もゲスト出演した。
それぞれのソロ曲や歌謡曲の他、TMの「Another Meeting」「Dreams of Chistmas(TMN版)」を演奏した。
ライブ中にはTM20周年の宣伝が行なわれ、これと関連して小室のテープでのコメントも流された(大したコメントではない)。
12/23小田原ダイナシティから公開生放送されたFM横浜「Day Light Splash」も、ウツ・木根2人が出演したが、この時も20周年の宣伝および4月の横浜アリーナライブの告知が行なわれた。
概していえば、この頃のTMの宣伝活動はウツ・木根2人が行ない、小室はKEIKOと一緒に自宅・スタジオに籠るという形態だった。
この形態はTMのレコーディングの体制にも影響するのだが、これについては別章でTMの活動を取り上げる際に触れることにしたい。
小室さんがいる店も服も、11/8とは別です。
しかも今回は歌付きで、歌はTUBEの前田亘輝さんでした。
大変意外なコラボです。
曲は尾崎豊「I Love You」で、これまた意外な選曲でした。
松浦さんはコメントで、「前ちんは酔ってて、歌えないのに、小室さんとの再会に無理して歌ってくれました!」と書いています。
こちらの動画はすでに見ることができなくなっていますが、ネットニュースでも何箇所かで取り上げられています。
10~11月の相次ぐ小室さんの露出は何なんだろう?と思っていましたが、まもなく判明しました。
11/27の小室さん還暦誕生日に、新商品「TETSUYA KOMURO ARCHIVES PROFESSIONAL PRODUCTS」のリリースが発表されたのです。
2019/3/27発売予定で、mumo限定で完全受注生産とのことです。
小室さんと松浦さんが会っていたのも、一つにはこの打ち合わせがあったんでしょう。
今年の6/27には4枚組の「TETSUYA KOMURO ARCHIVES "T"」「TETSUYA KOMURO ARCHIVES "K"」、さらに両作品にボーナスディスクを加えた9枚組の「TETSUYA KOMURO ARCHIVES BOX」がリリースされましたが、今回の「PROFESSIONAL PRODUCTS」は、「ARCHIVES BOX」の9枚を含む49枚組BOXとなっています。
要するに「PROFESSIONAL PRODUCTS」を購入する方にとって、「ARCHIVES BOX」はまったく無用のものとなります。
「PROFESSIONAL PRODUCTS」の内容は、これまでの小室さんソロ名義のアルバム・DVD作品を集めたものです。
ただし「V2 Special Live Virginity」「TK Dance Camp」「ELECTRONIC NIGHT」など、小室さん以外のミュージシャンも参加しているものは含まれていません。
収録ディスクの中には、「SPEED TK-REMIX」「Blue Fantasy」など、一部のシングルも入っています。
「Blue Fantasy」はアルバム版ではないんですね。
それならアルバムとして配信された「Arashiyama」とかもCDにして入れれば良いのに、とも思います。
一方で「サイボーグ009」シリーズのサウンドトラックとか、DJTK名義の「Cream of J-POP」が入っていないなど、いまいち採否の基準がよく分からないところもあります。
「TK 1998」収録の「Latest Works」とか、「TETSUYA KOMURO Special Live @DOMMUNE」の付属ライブCDもないですね。
まあ、これらの需要がどれくらいあるかは怪しいですけども…。
今回の目玉は、「PANDORA Billboard LIVE Off Shot Movie」のDVDです。
現時点で小室さん最後の公式ライブの映像ということになります。
スタッフのtwitterによると、「二日間しか開催されなかった伝説のBillboard Liveでの秘蔵オフショット」が収録されているとのことです。
オフショットだけなのか、肝心のライブは入るのか、いまいちよく分からない表現です。
これまで出るかどうかはっきりしなかった「ガーディアンズ」のサウンドトラックも収録されます。
他に、これまで配信音源しかなかった「DEBF EDM 2013 SUMMER」が、今回初のCD化です。
「tk-trap」のライブ映像も、DVDになるのはこれが初めてです(今までVHSしかなかったはず)。
他にEUROGROOVE名義の楽曲を集めた「EUROGROOVE TK Selection」という新編集アルバムも2枚入っています。
以上のような内容の「PROFESSIONAL PRODUCTS」ですが、49枚組という分量のため、定価は108000円というぶっとび価格です。
一万八千円じゃなく、十万八千円です。
いやあ、ファンの高齢化に応じた収奪強化が進んでいますねえ…。
もちろん多くの方にとっては、おいそれと手が出せるものではないでしょうし、それを念頭に置いて売上を予想した上での値段設定なのでしょう。
さらにぶっ飛んでいるのは、本作の豪華版として、「TETSUYA KOMURO ARCHIVES PROFESSIONAL PRODUCTS + Mobile Mini Keyboard reface DX TK Special Edition」なる商品も発売されることです。
こちらは194400円で100セット限定、小室さん直筆サイン入りのミニキーボードが付属します。
しかし驚くべきことにこの豪華版、11/30に予約を開始して1日で売り切れてしまいました。
まじで!?と、びっくりしましたが、考えてみれば11万円出すほどのファンなら、19万だって出しますよね。
ここまで詳しく書いておいてなんですが、今回は(も)私は手を出しません。TM入っていませんしね。
PANDORAのDVDと「ガーディアンズ」サントラは気になりますけど、11万円払ってまで要らないかなあ…。
むしろTMの未発表ライブ映像1曲だけ収録とかという事態になったら、腹が立って仕方なかったと思いますが、今回は特に何も思いません。
ただ注文生産とのことなので、欲しい方は忘れる前にお早めに予約しておくと良いと思います。
他の話題としては、小室さんが2018年レコード大賞で、特別賞の一人に選ばれました。
これが今年の一連の引退記念受賞の最後になるでしょうか。
来年1/20にはNHK総合の「NHKスペシャル」で、「平成史スクープドキュメント 第4回」として、「アムロとコムロ~JPOPふたりのヒットメーカー~」なる特集を組むそうです。
この感じだと小室さんは後世、安室さんをヒットさせたプロデューサーとして語られるようになるんでしょうかね。
あとこの番組、小室さん引退から1年1日目となります。
もう1年になるんですねえ。
ウツは11/23を以って、2ヶ月に及ぶ「Tour Thanatos」を終えました。
これにて還暦記念を冠した2年間の活動も終わりました(ひっぱりすぎの感はありましたが)。
12/10発売の「Keyboard Magazine」2019年冬号には、ライブレポートが載るそうです。
今回のウツソロツアーはこれまでと異なり、MCが一切ない特殊なライブで、サポートもキーボード3人+ギター1人という特殊編成でした。
目的・コンセプトについては明言されていないようですが、小室さん引退の件も意識しているようで、セットリストには5曲も小室さん関連の曲が含まれていました。
(「必然の夢」「if you wish...」「Open Your Heart」「Ignition, Sequence, Start」「Running To Horizon」)
キーボードを強調したのもMCがなかったのも、TMを意識していたのかもしれません。
「Ignition, Sequence, Start」「Running To Horizon」は、2001年の「LOVE-iCE」収録のウツソロバージョンでした。
「Open Your Heart」も「Tour LOVE-iCE」のライブバージョンに準じたアレンジで、小室さん絡みの部分は「LOVE-iCE」関係が多かった印象です。
この3曲は今回のライブでは、本編終盤の盛り上がり5曲(インスト除く)の中で演奏されており、終盤一曲目が「Open Your Heart」、本編ラストが「Running To Horizon」でした。
セットリストにおける小室曲の位置の高さが分かると思います。
あと私、実はこの3曲、生で歌入りで聴くの初めてでした。
まあ「Ignition, Sequence, Start」が「LOVE-iCE」の「tatsumaki remix」というのは、予想もしていませんでしたが(ウツソロだから当たり前なんですけど)。
今回は3曲くらい演奏すると、ウツの休憩も兼ねて、サポートメンバーのソロコーナーが入るのですが、個人的にはnishi-kenさんの「Trilogy」がとても良かったです。
今さらですが、こういう後続世代のミュージシャンがTMをリスペクトしてくれているのは、嬉しいことですね。
あと生で聴いて良いなと思ったのは、「Be Truth」でした。
家で聞き流しても何も感じていなかったんですが、生で聴くと気付く魅力てあるものですね。
ウツはあとは年末のクリスマスディナーショーが控えています。
木根さんも羽田空港のTIAT HALLで、年末ライブ「new STORY」があります。
このライブタイトル、TMの「STORY」とかやるのかな?
12/6からは、来年の木根さん・佐藤竹善さんのコラボライブ(名古屋・神戸)のチケット一般発売が始まります。
なおまだ分からないのですが、私がこれから数ヶ月多忙になる可能性があり、今後春まではブログの更新ができないかもしれません。
案外普通に更新できるかもしれないのですが、なかなか更新がなくても、気長にお待ちください。
これでやめるということはしません。
何しろ次回からは、いよいよ第七部最大の盛り上がりですからね!
え? こんな最悪の沈む話ばかり続いているのに、何が盛り上がりだ、ですって?
何を言っているんですか!
第七部ではこれが一番ハッピーな時代ですよ!
今がつらいとか言っている方に言っておきますが、あと10回くらいのハッピーシーズンが終わったら、その後はどんどん深く沈む一方ですからね!!
てことで、本題に入ります。
----------------------------
前章では2002年後半から2003年にかけての小室哲哉の状況をまとめたが、その頃ウツと木根は、「TM NETWORK tribute LIVE」と並行してソロ活動も行なっていた。
2人は2002年にソロ10周年を迎えたが、11年目となった2003年には、ともに新たな活動形態を模索する。
まずはウツについて見てみよう。
ウツがソロ名義で活動した1996~2004年の中で、最後の2年はネームバリューのあるミュージシャンの登用を積極的に打ち出した点に特徴がある。
2003年は吉田建、2004年は原田真二である。
ウツが吉田建にアルバムのトータルプロデュースを依頼した後、初めて話し合いの場を持ったのは、1月下旬のことだった。
打診は年末年始頃と思われ、ならば2003年のアルバムリリースが中止になった後のこととなる。
ウツが初めて吉田に会ったのは、2002年9月「Castle in the Clouds」レコーディングの時だったらしい。
ただこの時、ウツはソロツアー「Tour Ten To Ten」の最中だったため、9/2・9・20の3日しかスタジオに入っておらず、吉田ともそれほど深く話すことはなかったようだ。
あまり親しくもなかった吉田に何を求めてプロデュースを依頼したのか、ウツが明言しているのを、私は見たことがない。
あるいはこの件では、主導権はスタッフ側にあったのかもしれない。
吉田もTMやウツソロの曲を聞いたことはあまりなく、プロデュースの話が来てから曲を聞いてみたと言う。
要するにウツと吉田のタッグは、音楽的に親しい間柄で行なわれたものというよりは、「仕事」としてウツから依頼され、吉田が引き受けたものだった。
レコーディングは3月から始まり、「tribute LIVE」を挟んで7/16まで行なわれた。
なお「tribute LIVE」中にレコーディングされた「ウィークエンドファイアー」では、「tribute LIVE」のサポートだった葛城哲哉と阿部薫が参加している。
ソロアルバム制作は、「tribute LIVE」の準備・実施と並行して行なわれた。
かなり無理のあるスケジュールである。
そもそも2003年にはTMの活動を行なう予定だったのだから、ソロ活動は当初想定されていなかった可能性がある。
TMの活動がなくなる可能性が生じた2002年11~12月頃の段階で、急遽ソロ活動の計画が始動したのかもしれない。
吉田とのミーティングが1月からであるのも、そのことを感じさせる。
ウツは5月、「tribute LIVE」開催直前に、9~10月のソロツアー開催の告知を行なった。
またアルバムからの先行シングル「道~walk with you~」は、「tribute LIVE」最終公演前日の6/25にリリースされた。
「tribute LIVE」がソロ活動宣伝の場として活用されたことが分かる。
「道」は米倉利德(利紀)の提供曲である。
意外な提供元だが、どのような縁なのだろうか(吉田経由?)。
この頃になるとウツのCDセールスは低く安定し、「道」の成績も前作と変わるところはないが(71位・3000枚)、個人的には好きな曲だ。
吉田も良い仕事をしたと思う。
本作を収めたアルバム「wantok」は、9/3にリリースされた。
アルバムタイトルは、パプアニューギニアで使われているピジン語である。
英語「one talk」(同じ言葉を話す人)に由来し、仲間・絆などの意味を持つという。
アルバムはこの「仲間・絆」をテーマに据えたものだった。
「wantok」を掲げた全国ツアー「Tour wantok」は、9/20~10/26に開催された。
途中で寸劇「wantok X」(TV番組「プロジェクトX」のパロディ)が入るなど、余計な演出もあったが、それよりも注目すべきはバンドメンバーである。
キーボード・コーラス以外の3人(ギター・ベース・ドラム)が、Fence of Defenseのメンバーだったのである。

すみませんが、マットシはほとんど見えません(左端)
山田亘は1993年「Live Butterfly」から2000年「Tour White Room」まで、しばしばウツのライブサポートを務めてきたし、北島健二も2002年「Tour Ten To Ten」でサポートを務めたが、西村麻聡も含めて3人で一緒にサポートを務めたのはこれが初めてである。
ライブでも、西村作曲の「Angel」やFence代表曲「SARA」が演奏された。
(「SARA」は2000年「Tour White Room」でも演奏された)
Fenceは1987年にデビューした後、1999年に活動を休止しており、ウツが声をかけた時点ではバンド活動をしていなかった。
しかし「Tour wantok」で一緒にステージに上がったことをきっかけとして、3人はFence of Defenseの活動再開を宣言し、「Tour wantok」ファイナル後、10/31に再始動ライブを行なっている。
その点でこのツアーは、ウツだけでなくFence3人にとっても重要なものだった。
これは2004年TM NETWORK「Double-Decade Tour Final」や、2009年ウツソロ「SMALL NETWORK」でのFence登用の前提にもなっている。
話題を木根に移そう。
2003年の木根は年始から、野心的な試みを提示していた。
2003年に46歳を迎えることに因み、年内に46本のライブを敢行するというものである。
ウツと違って一人でもライブができる木根の強みを生かした企画とも言える。
2003年最初のライブとなったのは、3/6「talk & live 番外編 vol.3」吉祥寺Star Pine's Café公演である。
ツアー前半は7/25まで24本行なわれ、さらに8/23・24には「SUMMER SPECIAL」と題するツアー特別版も開催された。
この間は木根1人、ギターのみでの演奏となった。
このツアーは「tribute LIVE」中も並行して開催されており、「tribute LIVE」の公演日前後に、その近くで開催されることも多かった。
木根もウツと同様に、「tribute LIVE」をソロの宣伝に活用していた。
9/24~10/17のツアー後半9本では、ピアノも導入された(サポートは無し)。
さらに11/22~12/27には、バンドスタイルの「talk & live vol.8~Ci è la musica~」が11本行なわれた。
なお「talk & live vol.8」でキーボードを務めた佐々木真理は、10月までウツの「Tour wantok」にも参加していた。
以上、木根は「talk & live 番外編」「talk & live」を合わせて、宣言通り合計46の公演をやりとげた。
(公演数については本記事コメント欄でharuさんに御確認いただきました)
ツアー期間正味7ヶ月で46本だから、4~5日に1公演をこなしていたことになる。
なおこの他に年末には、年越しライブ「talk talk talk & live」も開催されている。
木根はツアーと並行して、ミニアルバムの制作も行なった。
木根は2002年にソロ10周年を終えるとともに、「CAROL」以来となるファンタジー小説執筆を計画していた。
すでに2002/12/21には、「Ci è la musica〜約束された物語」がリリースされていたが、これはその小説のストーリーに沿った内容だった。
小説とアルバムの連動という企画は、「CAROL」を意識したものかもしれない。
木根としては、ソロ十周年の節目に第二の出発点となる作品を書きたいという意欲だったという。
木根は「talk & live 番外編vol.3」と並行して、春から夏まで執筆を行なった。
春の木根はソロツアー・「tribute LIVE」・小説執筆の3つを、同時並行で行なっていたことになる。
「talk & live 番外編vol.3」が終わった後は、8月を挟んで(この間に目の手術を行なっている)9月から、ミニアルバム「Ci è la musica due」の制作に入る。
「Ci è la musica」の続編である。
これは11/19にリリースされ、さらに11/28には小説「七つの角笛〜Ci è la musica〜」が発売された。
「Ci è la musica due」リリース直後から開催された「talk & live vol.8」は、「Ci è la musica」2作を軸に行なわれた。
木根はこのように1年間の周到な活動を経て、2枚のミニアルバム・小説・46本のツアーという構想を実現させた。
ただ「七つの角笛」は、2018年時点で木根の最後の単行本の小説となっている。
この頃になると執筆業もあまり成果が出なくなって来ていたのだろうか。
一方2003/3/14には木根の著作物として、「まっすぐ進む夢へのヒント54」なる本も出ている。
3月に始まった「talk & live 番外編 vol.3」は、この本の販促も一つの目的だった。
「まっすぐ進む夢へのヒント54」は人生指南書のような内容で、それまで小説を中心としてきた木根の執筆業の中では異質である。
小説業の雲行きが怪しくなってきた中で、新分野への進出も考えるようになったものかもしれない。
しかしこの方面の出版も後に続くことはなかった。
結局木根の継続的な執筆業は、TMファンをターゲットとした「電気じかけの予言者たち」シリーズを除くと、2003年の2作を以ってほぼ終わりを告げた。
(一応あと数作は断続的に出るが)
これに代わって木根は、2005年から舞台に力を注ぐようになる。
この前提として注目される木根の仕事が、2003/11/6~12/10に開催されたミュージカル「天使は瞳を閉じて」への楽曲提供である。
「天使は瞳を閉じて」は、1988年以来長く上演されてきた舞台演目だが、その演出を担当した鴻上尚史が、これをミュージカル版に作り替えた。
音楽プロデューサーは森雪之丞が担当したが、杏里・デーモン閣下・高橋幸宏・岸谷香・中西圭三・山本恭司など錚々たる面々の中の一人として、木根も森から声をかけられた。
舞台音楽は「天使は瞳を閉じて・ミュージックファイル」としてリリースされたが、インスト担当のRay Cameronを除くと、木根は最多の3曲が収録されている。
(「誰もいなくなってしまった」「世界で一番倖せな歌」「HISTORY」)
この時点では木根は舞台に出演はしていないものの、以後舞台への進出を考えるようになる一つの前提となったのかもしれない。
以上のように2003年の木根は、ミニアルバム制作、頻繁なソロライブ、書籍の出版、ミュージカル音楽の提供などを行なった。
もちろんこれに加えて、「tribute LIVE」出演や断続的なTMの仕事もあった。
この年の木根の精力的な活動には驚かされる。
2004年のTM20周年まで実質的にTMをひっぱってきたことも含め、木根の努力は評価されるべきだろう。
以上前章からこれまで、2003年の小室・ウツ・木根の活動を見てきたが、TM名義ではない形で3人が接点を持つこともあった。
2003/12/1「AAA」である。
ウツ・木根は1993年の第一回「AAA」以来、本イベントの常連として出演し続けた。
そして1997年年末にTM再始動宣言が出されてからは、1998年以後毎年このイベントで、TMの曲を1曲演奏してきた。
2003年にもやはり、TMの曲が演奏された。
ところがこの時は、少し事情が違った。
以下、この時の公演の様子を見てみよう。
最初はウツ・木根が狩人の「あずさ2号」を演奏したが、その途中で狩人本人らがサプライズ出演し、4人で一緒に昭和歌謡5曲のメドレーを歌った。
メドレーの選曲はウツ・木根と狩人の加藤高道で決めたと言う。
そして狩人が退場すると、今度は入れ替わりで小室とKEIKOがサプライズ出演した。
小室はKEIKOソロシングル「KCO」のリリースを宣伝した上で、KEIKOがメインボーカルを取って、「Dreams of Christmas」を演奏した(小室もキーボードで演奏に参加)。
アレンジは「KCO」収録のKEIKO版で、ウツはサビのコーラスを担当しただけである。
一応TMの曲で締めた形にはなったが、ウツによるTM曲を期待したファンには期待外れだっただろう。
(別にTM曲をやるという告知があったわけではないが)
なおウツ・木根は2004・2005年にも「AAA」に出演したが、TMの曲は演奏していない。
結局この「Dreams of Christmas」が、「AAA」で最後に演奏されたTM曲となった。
「AAA」と比べると参加できたファンはかなり限定されるだろうが、TMファンとしては盛岡都南文化会館の「宇都宮隆・木根尚登 Christmas Accoustic Live」の方が、参加の意味はあったかもしれない。
12/10にFM岩手主催で800名を抽選で無料招待し、公開録音したものである(12/23放送)。
このライブにはウツ・木根が出演し、山本英美もゲスト出演した。
それぞれのソロ曲や歌謡曲の他、TMの「Another Meeting」「Dreams of Chistmas(TMN版)」を演奏した。
ライブ中にはTM20周年の宣伝が行なわれ、これと関連して小室のテープでのコメントも流された(大したコメントではない)。
12/23小田原ダイナシティから公開生放送されたFM横浜「Day Light Splash」も、ウツ・木根2人が出演したが、この時も20周年の宣伝および4月の横浜アリーナライブの告知が行なわれた。
概していえば、この頃のTMの宣伝活動はウツ・木根2人が行ない、小室はKEIKOと一緒に自宅・スタジオに籠るという形態だった。
この形態はTMのレコーディングの体制にも影響するのだが、これについては別章でTMの活動を取り上げる際に触れることにしたい。
この記事へのコメント
前半戦最終盤の7月21日に鳥取県米子市で木根さんがライブをやるのを知って、既に松江市に住んでいた私は片道一時間の所に来られるならと思い、チケットを買って見に行きました。場所はジャズバーで観客は50人位だったでしょうか、それでも一杯になる程の部屋の広さでした。
さすがに当日のセットリストは忘れてしまいましたが、オープニングの「LOOKING AT YOU」を出だしから間違えてやり直したり、米子に入る前に松江城に行った話をされたのは今でも覚えています。
グッズを購入したらライブ後直接サインしていただける、ということだったので私はグッズの手拭いを買ってサインをしてもらいました。小6の秋からずっと憧れていたTMのメンバーに近距離でお会いすることが出来てホントに嬉しかったなぁ…。
その約半年後、今度は「talk & live vol.8」を見るために上京し原宿に行きました。この頃の私は個人的な理由で部屋に閉じ籠もることが多かったのですが、翌年はTM20周年だったこともあり、遠出してでも積極的にライブを見に行こうと思うようになり、実際行きました。今思えば自分がちょっとだけ変わるきっかけをいただいたtalk & live 番外編でした。
れっきとしたシンセサイザーです。
4~5万くらいですが。
木根さんにサインしていただいた手拭いには番外編前半のスケジュールが印刷されていました。さらにvol.8を見た際に購入したパンフレットには番外編を振り返るインタビューが載っていて、後半戦を含めた全日程が記されていました。
それぞれの期間は管理人さんが書かれたとおりですが、手拭いに記されたスケジュールを数えると24本でした。9月からの後半戦をパンフレットを見ながら数えたら9本で合っていました。
で、パンフレットをもう一度よく見たら8月23・24日に台場のStudio DREAM MAKERというところで番外編を開催していることがわかりました。さらにこの会場をネットで調べてみたら以下のページを見つけました。
https://www.barks.jp/news/?id=52321548
前半戦24本のあとスペシャル2本、後半戦9本を終えてvol.8を11本(CD「Ci è la musica due」の帯に記してありました)行い、宣言通り年内に46本のライブをやった、というわけですね。
ウツソロと木根ソロにはほとんど興味がなかったので、知らないことだらけでした。
ウツと木根さんが、20周年の宣伝をしていたということは、3人でどこかのタイミングで活動再開を話し合ったということですね。
次回あたりに、その経緯が説明されるのでしょうか、楽しみにしています。
ちなみに、この時期のRandCのサイトはよく見ていました。
Rojamにはもう情報が何も上がらなくなっていたので、
RandCのサイトで、TMの情報がないかとか、小室プロデュースの情報はないかとか、チェックしていました。
しかし、TM関係のCDがプッシュされている形跡はほとんどなかったように思います。
もうTMも小室さんもセールス的には見込めないんだな……と悲しくなった時期であり、かといって次に熱中できる音楽を見つけられてもいなくて、つまらない時期でもありました。
ウツのライブ、自分も参加しました!
アンコールの「ゼロよりも少ない始まり」がウツから小室さんへのエールのようにもきこえました。
もう一度、TMで復活してもらいたいです。
引退宣言しても復帰する人もいるから、「なかったこと作戦」でしれっとしらばっくれて戻るか、「世間の声を聞いて戻ってきました。」と言うかですね。
引退を撤回するのは全然カッコ悪くないですから。
私もTMブルーレイBOX事件を思い出しました。
2004年世界遺産25000円→ブルーレイBOX5万円→小室BOX10万と、着実に進化していますが、次は20万でしょうか…て、それはすでに今回のシンセ付きBOXでクリアしてるんですね。
次は40万?
>やまびこさん
おお、10万円行きましたか。私が行けなかったものを、ありがとうございます。
入手したらPANDORAとガーディアンズの感想を聞かせて下さい。
この頃はTMは本当に動くのか?という低いレベルでやきもきしていました。
黒い封筒て、クリスマスのですか?
nishikenさんのは、あれは普通のショルダーキーボードではなく、KX-5だったんですね。
ショルダーキーボード、小室を意識しているんだろうなあとは思っていましたが。
ヤマハのブログにも出ていますね。http://yamahaartblog.lekumo.biz/backstage/2018/12/thanatos-c93c.html
>haruさん
haruさんにとって重要なライブだったんですね。
この頃だとウツもTMも地方都市も大きいところしか行かなくなるから、
木根さんの46公演は地方の方には貴重な機会だったんですね。
こういう地道な活動て大事なんだなあ…と考えさせられます。
46公演の内容もありがとうございます。
8月の2回の公演も把握はしていたんですが、これも含めて46というのは知りませんでした。
ブログを修正しておきます。
どうもありがとうございました!
>1977さん
refaceについて、書き方が悪かったですね。
小さいだけでちゃんとした音が出るようで…
書き直しておきます。
ご指摘ありがとうございます。
20周年も、実はまだかなり難航したと見ています。
それについては次々回に…
2003年はTMがプッシュされていなかったというよりは、
小室さんが何もやっていなかったからプッシュするものもなかったということだと思います。
たしかにR&Cのプロモーション体制はひどかったですが。
>エドさん
ゼロよりも少ない始まり、実際そうだったのかもしれませんね
昔小室さん逮捕直後にやったフォークパビリオンでも、
何も言わずにFightingを演奏していましたが、
あれも間違いなく小室さんへの応援歌だったのだと思います。
>アザラシさん
シティハンターの報道、来ましたね
Get Wildをここまで引っ張るってことは、
やっぱり本来はTMを絡ませる計画もあったのかなあて妄想してしまいます。
2月公開で今から戻るのは無理な気もしますが、
今後復帰するためのきっかけになると良いですね。
「PROFESSIONAL PRODUCTS」のショックからしばらく立ち直れませんでした。まるで、今までソロを追いかけて、去年「JOBS #1」をインスト盤をも買った自分を否定されてるみたいで…。「ひとりにしないで」「P.A.」もない…リマスター作業してないのかよ…「EUROGROOVE」「t jungle m」はオムニバスの要素を持っていることが売りのはずだろ…ライブ映像はばら売りにしてくれ…「SPEED TK-REMIX」抜けてるナンバーがある…どうせなら坂本龍一さんの「Year Book」レベルで気合いれてくれ…もう色々突っ込みどころが多すぎて、流石に買う気が失せました。今回ばかりは擁護できません。逆に言えば、小室先生もこういうさだまさしさんのビデオBOXみたいな団塊ファン向け作品が発売される程の伝説クラスになっていたんだな…私も年をとっているんだな…と複雑な気分です。
この頃、何故か「ごきげんよう」の木根さん出演回をリピートしていました。「木根さんがサインの文字を間違えた」「竹馬に乗ったままで何時間も待たされた」「今の自分に憤り、ライブは年の数にした」等の話が今でも思い出します。
それでは、失礼いたしました。
「シティーハンター」の新作映画に「Get Wild」が使われる、ということでソニーとavexがまた便乗して何か出すんでしょうか。アナログレコードと4枚組CDの次はライブ映像を集めてくるのかなぁ…?
当初はアルバムの #01 ~ #04 の小室曲全てとノンストップミックス盤のおまけ8cmCDの曲が順番に並べられただけでしたが、
今回、#03 のリミックスのうち2曲を抜いて他の3曲を増やすという変更がなされました。
・SCAN ME(Club Mix)をやめて、 IT'S ON YOU(SCAN ME)(FKB EDIT) ※曲名が変えられるほど大胆なリメイクがされています。ノンストップミックス盤からでなければ海外盤からということになります!!
・RESCUE ME(Sex Groove)をやめて、RESCUE ME(Radio Edit) ※シングルバージョンですね
・Let's go (RADIO MIX)を収録 ※ラストシングル、当時深夜のフジテレビF1中継で流れてましたね~
英断だと思いますし、買われる皆様には朗報だと思います
シティハンターのエンディング近くのget wildの映像、ウツ、そして木根さん、映像で見れて最高でした。
「ひとりにしないで」「P.A.」は、
小室さんは音楽担当ではあっても、
作曲は主題歌を除いてほとんどしていないからではないでしょうか。
「サイボーグ009」が入っていないのも、
作曲の過半は小室さんではないからかもしれません。
「SHARAKU」「ゾイドフューザーズ」なんかもありましたね。
>haruさん
笑神様、せっかく教えてもらったのに見忘れました!
まあバラエティ関係はわざわざ見なくても良いかな…
シティハンターは、もうさすがにないと思います。
TMが動けるなら何かあったかもしれませんけどね。
>かっとさん
EUROGROOVEのLet's goはもともと入っていなかったんですか。
そういう微妙なところのチェックを今行なっているんですね。
天と地とを除いたのは不可解です。いったいなぜ?
むしろシングルカップリングのMOVIE MIXを追加収録しても良いくらいだと思うんですが。
>カツさん
ミュージックシティハンター、私はBSで見ました。
要チェックというほどの内容はありませんでしたが、
しゃべるウツをテレビで見られるのは結構レアでしたね。
つい最近知ったんですが、麻生香太郎さんがお亡くなりになられてたんですね。ああ、歳をとったなあ。
昨年末にふとTMのことを思い出し、かつてものすごく好きだったころのことをもっと思い出したくなりこちらのブログにたどり着きました。
20数年前のある日を境にTMからすっぱり去ってしまい、「終了」も「復活」も、30周年も、さらには逮捕や引退まで完全スルーだったのに2018年12月、ふと思い出したのは何かの縁かもしれません。
こちらのブログ、年末年始休暇やインフルエンザ感染による強制休暇(!)を使ってようやく4期まで読み進めたところです。併せてYouTubeで映像確認…そして思わずポチってしまったDVDたち。人生傾いた大人(初老)になった今、改めてTMの良さを再確認するとともに、今後はもう見れないのだな…という言いようのない悲しさや虚しさも覚えました。
遡って過去日記にもコメントさせていただくかもしれません。
まだ全部読んでいないしもっとしっかり読みたいのでまた来ます。個人的にはとりあえず明日から仕事に専念しますので一区切りでご挨拶させていただきました。
鍵垢ですがTwitterもフォローしました。今後もそーっとよろしくお願いします。
引退するまで、安室さんが小室さんを忘れてなかった事に感銘を受けました。
声帯が良くなったら、また復帰してくれる事を願います。
あと最後まで小室さんの新規インタビューが出なかった事に寂しさを感じます
何人もの方々がずっとリプライし続けてたのにこれだけなぜか反映しなかったのですが、ディスク交換になる前に修正したほうがいいという指摘でようやく反映したというていたらく
引退から早一年が経ちましたね。
TKブームの時赤ちゃんだった私が初めて小室さんをきちんと認識したのは逮捕の時でした。あの頃はワイドショーの報道しか見ていなかったので「ホリエモンみたいなイケイケ成金な人だったんだな」という感想しか抱かなかったのですが、数年前に小室さんの音楽にめちゃくちゃハマりまして、小室さんへの認識も変わり、このブログもずっと読んでいます。
私が逮捕で小室さんを認識したように、引退で小室さんを初めて認識した若い子はおそらく結構いると思っています。そのような子達が近いうちに小室さんの音楽に触れてハマってくれないかなあと密かに願っています。引退は悲しい出来事でしたが、きっと、それで広がっていく何かも必ずあると思っています。。。
あと、20代として思うのは、(私の周りだけかもしれませんが、)今の若い子は懐メロも好きな傾向あるので、小室さんの曲好きな人も案外ちらほらいるんですよね。。。
(もちろん今の曲も聴きますが、youtubeで気軽に色んな曲聴けますし、TVの歌番組が懐メロだらけだったり、流行歌が少なくなってるせいで、懐メロに手を出すんです)
小室さんは昔の自分を超えられない苦しみがあるのだろうから、これを言っても気休めになるかわかりませんが、若い層にも小室さんの音はきちんと届いてるのに。。。って思ってます。
シティハンター、公開まもなくですね。
実は私はシティハンターには特に思い入れはないので見には行かないのですが、
関係者も盛り上がっていることですし、成功してほしいです。
NHKスペシャルは、小室さんのインタビューは無理でしょうね…。
>kuri566さん
TM35周年ですね。
30thが終わった頃は、次は遅くて35周年かなとか思っていたんですが、
まさかこんなことになるとは(汗)。
ユーログルーブ、そういうことありますね。
私はいくら探しても見つからず、最近Easy Listeningの中古を買ったのですが、
その直後に見つかって、なぜかTMのアルバムでこれだけが2枚あります…
>通りすがりさん
麻生さんは、亡くなった頃に訃報が報じられたと思います。
35周年。小室さんは動かなくても、年内に何か記念商品の発売くらいはあるかもしれませんね。
>kimberliteおさん
welcome back 2!
思い出したタイミングは引退ではなかったんですね。
まあこの年になると、ふと思い出すと言うことはよくあります(何様?)。
「終了」もスルーされていたのなら、
未消化コンテンツは際限なくあると思いますので、
どうぞお楽しみください。
最後に30周年の活動をご覧になれば、
これで終わるなんてもったいない…と感じると思います。
ブログも気楽にコメント下さいね。
>かっとさん
BOXは、まだ微調整していたんですね。
正直、これまでの仕事量を考えれば、
全貌を反映しているスタッフはほぼいないと思います。
ディスクのエラーも起こるかもしれませんが、
購入したファンもちゃんと気づくかどうか…
お若いファンもいらっしゃったんですね。本当に嬉しいです。
特定の世代以外に届かないてのもやはり寂しいものですから…。
その点ではyoutubeや定額配信サービスなどで、
昔の音楽にも簡単に触れられる環境が整えられている現代は、
若い方が遡って昔の曲を聞きやすい時代なのだろうと思います。
実は今も「Get Wild」ではまっている若い人がいるのかもしれないし。