7-39 TM NETWORK play SPEEDWAY and TK Hits!!①
4/21、TM NETWORKが37周年を迎えました。
TMで何かイベントがあったわけではないですが、木根さんはFacebookでTM37周年のコメントを出してくれています。
「いつかまた3人でみんなと会える日を楽しみにしてます」とのことです。
木根さんは4/10・11に、「K-Folk 2021」を開催しました。
予想されたことでしたが、直前になってニコ生配信の告知もありました。
今後のウツや木根さんのライブは、ニコ生配信を前提で行なうのがモデルになりそうです。
ウツの出演はアンコールのみで、年末のようなウツ歌酔曲VS木根フォークの採点コーナーなどはありませんでした。
今回はあくまでも「K-Folk」ですしね。
アンコールはオフコースの「眠れぬ夜」と、TMNの「Another Meeting」でした。
なお4/11のライブ中に告知されたそうですが、ウツが木根さんのラジオ番組「夜ドン!」に、5/9・23にゲスト出演します。
ウツは5/25から東名阪で「「それゆけ歌酔曲!!」ギア-レイワ3」を開催します。
ただ東京・大阪など4府県では、4/25から緊急事態宣言が発出され、公演も無観客で行なうことが要請されました。
現時点で緊急事態宣言は5/11までということになっていますが、どうなるでしょうか。
TM37周年記念日から数日遅れて、ウツFC版のライブBlu-ray「SPIN OFF T-Mue-needs」が会員に向けて発送されました(M-tresへの納品日は4/21だった模様です)。
私はFCには入っていないんですが、会員の方に買っていただき、入手できました(感謝!)。
やはりニコ生より落ち着いて見れますね。音も映像も良いです。
なお前回書きましたが、こちらのBlu-rayの通常版は、6/2リリースとなります。
メインディスクでは、休憩時間とメタルパビリオンの映像がカットされています。
そんなものいらないという方は多いと思いますが、調弦の時間に一瞬だけ演奏してくれた「さよならの準備」も聞けないのは、少しだけ残念です。
なおメタルパビリオンの映像は、エンドロールで少しだけ見ることができます。
FC版の特典ディスクは、メインディスクに収録された2020/12/2中野サンプラザ公演以外の15公演から、1曲ずつ(12/1中野公演のみ2曲)を収録したものです。
ただ大変残念なことに、全部3分程度のダイジェスト収録で、途中で切れるか途中から始まるかしています。
私としては、全曲中途半端な収録になるくらいなら、日替わり曲の「Rainbow Rainbow」「Looking At You」「You Can Dance」「Nervous」「We love the EARTH」の5曲だけを完全収録してくれた方が、数倍良かったです。
特に「Dress」のアレンジが混ざった「Rainbow Rainbow」は全部入れてほしかったですし、個人的には生でも配信でも見られなかった「We love the EARTH」も悔しいです。
ちなみにこの機会に数えてみたら、「SPIN OFF T-Mue-needs」の日替わり曲の演奏回数は以下の通りでした。
・「パノラマジック」:9回
・「Rainbow Rainbow」:7回
・「月はピアノに誘われて」:9回
・「Looking At You」:7回
・「You Can Dance」:8回
・「Nervous」:3回
・「We love the EARTH」:3回
・「Get Wild」:2回
特典ディスクの最後に収録された「年忘れ!!歌酔曲vsフォーク」の「Time Machine」の映像は、ちゃんと全部収録されていました。
ここはTM NETWORK3人での演奏ですし、さすがにカットしちゃいけないとわかっていただけたのですね…
一般流通はしない特典映像とは言え、公式の商品として残してくれて本当に良かったと思います。
次のTMにつながる前史として語るべき映像になると思います。
最後、小室さんですが、TM37周年記念日の眠れない午前2時の少し前、ふくりゅうさんがDJを務めるラジオ番組「Voice Media Talk」で、小室さんのリミックス音源「Running To Horizon (206 Mix)」が流れました。
こちら、先日小室さんがニコ生に出演した時に流したものの完成版で、ミックス名はニコ生の出演日2月6日に因んでいるそうです。
さらに番組内では、この音源が4/28にSONYから配信リリースされることも告知されました。
GW直前の小室さんからの贈り物というところでしょうか。
Spotifyなどサブスクリプションサービスでの配信の他、iTunes・mora・amazonなどでもダウンロードできます。
私は4/28に、早速聞いてみました。
上から即興でピアノをかぶせ、リズムセクションを強調したアレンジです。
私としては、ピアノを中心としたイントロ前半部分の演奏が好きです。
SONYのotonanoのサイトでは、配信に合わせて小室さんのメッセージが公開されました。
「原曲はテープではなく、ハードディスクレコーディング時代の最初期の音として誇れるサウンドだったと、今は思っています。その音を30数年たった今、2020年代に届ける機会を頂き、大変感謝しています」とのことです。
小室さん、今は歌詞の方向性で悩んでいるとのことでしたが、まずはこういう過去曲のリミックスから始めてみるのも良いかもしれません。
なお前回も書いたことですが、小室さんが出演した「玉置浩二ショー」が、5/1にBSプレミアムで放送されます。
BS 4K・BS 8Kで放送された前回は見られなかった方も多いと思うので(私も含め)、関心のある方は御覧ください。
以上がここ1ヶ月のまとめです。
では本題に入ります。
-----------------------
TM NETWORKのツアー「TM NETWORK play SPEEDWAY and TK Hits!!」は、2008/3/27~5/25の2ヶ月間で、9会場で18公演が開催された(その内の3/27・28横浜Blitz公演はFC限定)。
全会場2公演ずつ開催され、日替わり曲を設けて2パターンのセットリストが用意された。
当初発表されたのは5/18までの14公演だったが、後に5/1・2のSHIBUYA-AX公演と5/24・25のZepp Tokyo公演が追加発表された。
それまでのTMの活動歴において、オリジナルアルバムリリースの後は全国ツアーが組まれるのが常だったので、2007/12/5の「SPEEDWAY」リリース後には、ツアーを期待するファンも多かったはずである。
たとえば木根は12/5放送のレギュラーラジオ番組「木根尚登のMy Home Town」で、「TM NETWORK -REMASTER-」を終えた後、地方にも来てほしいというファンのメールを読み上げている。
だが木根はこの時点では、「REMASTER」は25周年(2009年)に向けてのリハビリなので、全国ツアーは25周年まで待ってほしいと述べていた。
「SPEEDWAY」がリリースされても、TMの全国ツアーは告知どころか計画にも言及されなかった。
小室は12/16にMySpaceで、翌年の大雑把な予告として「KCOのソロ、globeのRe-Start、TMのさらなるプログレス」を述べ、「TM、globe、新人のPurple daysをひきつれて ASIA TOURの予定もあるので」としてアジアツアー計画に言及しているが、TMの全国ツアーへの言及はない。
なおアジアツアー計画は2001年・2002年に表明された後うやむやになっていたものである。
妄想に類するものとしても、まだ考えていたとは驚きである。
ところが年が明けて2008/1/17、ウツと木根のオフィシャルサイトで、「TM NETWORK TOUR 2008 SPEEDWAY」の開催が告知された。
2008年の年明け早々に小室が同意したことにより、開催が実現したという。
逆に言えば、2007年中には小室が同意していなかったと考えられる。
小室は2008/1/2のMySpaceに、「来週」(1/6~12)にTMのDVD(4月リリースの「TM NETWORK -REMASTER-」か)について打ち合わせがあることを記している。
おそらくこの時に3人で話し合い、ツアー開催を決定したのだろう。
ツアースケジュールはツアー開催告知の半月後、2/1に発表された。
開催決定が年明けだった以上、会場は1月中に確保されたことになるが、1月の時点で3~5月の会場を押さえることができるのかは疑問もある。
しかもツアー日程は、会場が確保しづらい土日が中心となっている。
本ツアーに関しては情報が少ないので推測しかできないが、2007年の間に開催を想定して会場を仮押さえしていた可能性もある。
たとえば2003年にはTM20周年に先んじたTMの全国ツアーが計画されていたが、これが開催できなくなったため、ウツ・木根による「tribute LIVE」の会場に転用されたと考えられることは、以前述べた。
2007年にもTMのツアーを開催する可能性を想定して、翌年のツアー会場を仮押さえしていたのかもしれない。
またツアー会場の一部には、本来別企画で確保していた会場も含まれていたらしい。
たとえば小室は1/18のMySpaceで、KCOのソロ活動について以下のように告知している。
ここに見えるシングルは「春の雪」、アルバムは「O-Crazy luv」のタイトルで後にリリースされたが、これと前後して4/5・6には、赤坂BlitzでKCOのイベントが企画されていたことが知られる。
だがこの赤坂イベントは結局実現しなかった。
実際には4/5・6の赤坂Blitzでは、KCOのイベントではなく、TMのツアーが開催された。
1月下旬に何らかの事情でKCOのイベントが中止され、会場がTMのツアーに転用されたことになる。
他にも同様に転用された会場があった可能性は高いだろう。
TMのツアータイトルは、1月には「TM NETWORK TOUR 2008 SPEEDWAY」とされていた。
アルバム「SPEEDWAY」リリースに伴うツアーという趣旨である。
ところが2/1のツアースケジュール発表時に、このタイトルは「TM NETWORK play SPEEDWAY and TK Hits!!」に変更された。
ツアータイトルの趣旨は、文字通りに取れば「TM NETWORKがSPEEDWAYとTKのヒット曲を演奏する」ということである。
この場合の「SPEEDWAY」は、TM NETWORKの11枚目のアルバム「SPEEDWAY」の楽曲と、1979~81年に活動したバンドSPEEDWAYの楽曲の双方を含意するもので、実際にツアーでは1980年のSPEEDWAYの楽曲も演奏された。
だがここで注意を引くのは、「SPEEDWAY」よりもむしろ「TK Hits」であろう。
これは小室のソロ曲もしくはプロデュース曲・提供曲などを演奏するという意味に見える。
さらに当時の木根のオフィシャルサイトでは、ツアーの趣旨として以下のような文章が掲載され、ウツ・木根のソロ曲も演奏する可能性を匂わせた(「メンバーが歩んできたそれぞれの軌跡」の文言など)。
tribute LIVEでは2005年・2007年の「Spin Off from TM」「Spin Off from TM 2007」で、ソロ曲の演奏が定例化していたが、それと同様の試みが想定されていたものかもしれない。
もしもそうなれば、TMのライブとしては珍しい企画である。
(先例としては1992年の「EXPO Arena」で小室ソロの「永遠と名づけてデイドリーム」を演奏した例がある)
もっとも実際にはウツ・木根のソロ曲は演奏されず、「TK Hits」に当たるのは小室のソロ曲のインスト演奏1曲(日替わり)のみだった。
この程度ならば、ツアータイトルにあえて「TK Hits」を入れる必要もなかったように思うが、当初の計画では「TK Hits」をより前面に出す案もあったのかもしれない。
本ツアーの特徴として、TM史上唯一のライブハウスツアーだったことが挙げられる。
ウツや木根のソロツアーやtribute LIVEは、すでにライブハウスが中心になっていたが、TMのフルライブはこれまでホールやアリーナで行なわれており、ライブハウスで行なわれたのは、1992年に日清パワーステーションで開催された特別企画「TMN Folk/Metal Pavilion」くらいしかない。
ツアーの会場の大部分はZeppなので、一般のライブハウスと比べれば大規模だが、従来と比べれば観客とTMの距離が近いライブだったということができる。
ツアーの動員規模としては、tribute LIVEの「Spin Off from TM 2007」と同程度であり、TMの動員力への期待値が下がっていたように見える。
日替わり曲を設けて各会場2公演行なうという形式も「Spin Off from TM 2007」と同じである。
観客にとっての大きな変化としては、客席の多くが立見になったことが挙げられよう。
ただし客席前方にはパイプ椅子が置かれ、指定席も設定された(ライブハウスなら前方にスタンディングエリアが設けられることが普通だろうが)。
指定席と立見の比率はよく分からないが、各会場の動員数は1000~2000人程度と見られる。
18公演合わせて2~3万人というところだろう。
延べ人数では「TM NETWORK -REMASTER」と同程度ということになる(パシフィコ横浜5000×2+CCレモンホール2000×2+武道館1万=2.4卍)。
ただし本ツアーでは1本だけ、ホール会場での公演も予定されていた。
4/29のiichiko大分グランシアタ公演で、3月になって渋谷・東京各2公演とともに追加公演として発表された。
4/26・27にはZepp Fukuoka公演があったが、この会場は1Fを全席立見にしても1526人の規模で、実際には指定席を入れて1000人前後の動員だったと見られる。
これに対してグランシアタは全席指定席で2000人規模の会場だから、1日で福岡2日分を動員しようとしていたことになる。
また全ツアー日程中で、大分のみ1日だけの開催という点も特異である。
大分がKCOの実家であることを考えると、これは赤坂Blitzと同様に、本来はKCOのソロライブ会場として確保していたものだったのかもしれない。
グランシアタ公演翌日がKCOのアルバム「O-Crazy luv」のリリース日だったから、これと連動するライブが予定されていたのではないか。
TMの大分公演は、結局中止された。
TMの単独ライブが公式発表後に中止されたのは、後にも先にもこの時しかない(延期の例はある)。
中止告知は3/31に行なわれ、その理由は「スケジュールの確認ミスにより、急遽公演を中止せざるをえない状況となりました」というものだった。
だが「スケジュールの確認ミス」という説明が事実かは、大いに疑問である。
福岡公演の直後で、しかも大分という地の利の悪さもあり、申し込みが少なく、客席が埋まる見込みが立たなかったのだろう。
グランシアタの規約(当時)では、会場使用30日前を過ぎると利用料金全額をキャンセル料として取られることになっていたため、30日前の3/31に中止の決定を下したと考えられる。
他の地方公演は、仙台・札幌・福岡・名古屋・大阪の5会場だった。
広島を入れず大分を入れたのはさすがに不自然な日程だが、関西以西の公演をあえて減らし、ファンを大分公演に集中させようとしたのかもしれない。
サポートメンバーとしては、ギター北島健二とドラムそうる透が参加した。
ベースの吉田建が参加しなかったことを除けば、「TM NETWORK -REMASTER-」と同じ面子である。
このツアーではサポートメンバーを加えての「CAROL」のインスト演奏など、「REMASTER」と同様の演出も見られた。
「SPEEDWAY and TK Hits!!」は「SPEEDWAY」のアルバムツアーとして企画されたものだが、実際に1公演で演奏された「SPEEDWAY」楽曲は、18曲中の4~5曲に留まった。
「REMASTER」武道館公演でも、SEの「Malibu」を入れれば4曲演奏されたから、アルバム「SPEEDWAY」の比率はほとんど変わらない。
しかも「SPEEDWAY」楽曲は多くライブ序盤に演奏されており、終盤を盛り上げる楽曲の大部分は過去のヒット曲だった。
このライブを通して見た時、その看板とは裏腹に、アルバム「SPEEDWAY」のツアーという印象は非常に薄かったと言わざるを得ない。
それだけ新曲を前面に出すことに自信がなかったということだろうか。
この点で、私は当時大変がっかりしたことを覚えている。
結局このツアーはアルバムツアーの体を装いながら、実質的にはヒット曲を中心に組み立てた「REMASTER」と大差ない内容だった。
ウツもこのツアーについて、基本となる核は「REMASTER」から続く流れで、自分たちとしてもまったく新しいツアーがスタートしたという感じではない、と発言している。
演奏曲は「REMASTER」とかぶっているものもあった。
具体的には、当時定番曲化していた「Self Control」「Get Wild」「Be Together」や、「REMASTER」で目玉とされた「Beyond The Time」の他、「Seven Days War」「Come On Everybody」「Love Train」「Welcome Back2」「Action」は重複する。
またアレンジは異なるものの、インスト曲として「CAROL」が演奏されたのも同じだった。
ただ以上を合わせても、全公演で演奏された22曲(日替わり曲を含む)の中の10曲に過ぎず、半分以上の演奏曲は変更されたことになる。
この点は意識的に選曲を変えてきたのだろう。
特に「Girl Friend」をTMのライブでバンド演奏したのは、1988年の「STARCAMP TOKYO」の1公演のみであり、知名度の割には非常なレア曲だった。
「Resistance」も、シングルで人気曲だったにもかかわらず、「TMN 4001 Days Groove」「Log-on to 21st Century」など記念ライブではことごとくセットリストから外されており、1988年の「Kiss Japan Dancing Dyna-Mix」以来の演奏となった。
この2曲の演奏は、極めて貴重だったといえる。
「SPEEDWAY」収録の「Diving」「Priide in the Wind」「Red Carpet」「Teenage」「Malibu」は、このツアーでしか演奏されたことがない。
SPEEDWAYの「Close Your Eyes」も、TMのライブで演奏されたのはこの時しかないが、ウツのソロツアーでは演奏されたことがあり、ウツが気に入っている曲なのだろう。
だがSPEEDWAY楽曲が聞ける珍しい機会だったことを考えれば、他の曲を選んでほしかったようにも思う(「Captain America」「Smile Again」など)。
ライブの時間は2時間超で、初日公演の曲数はSEを除き16曲だった。
ただしセットリストの見直しにより、2日目に「Come On Everybody」が追加され、さらに4/27からは「Malibu」が追加されたため、最終的には18曲になった。
これは2000年代のライブでは、19曲演奏された2004/6/25「Double-Decade Tour Final」に次いで多い曲数である。
2010年代では「START investigation」「Quit30」の演奏曲数はこれよりも多いが、それは短時間の楽曲で構成される「CAROL」組曲や「Quit30」組曲を演奏したためである。
1999年の再始動以後のライブで実質的にもっとも多くの曲を複数会場で演奏したのは、「SPEEDWAY and TK Hits!!」だったことになる。
リハーサルはツアー初日半月前の3/13から始まり、3/24に終わったことが知られる。
5日で終わった「REMASTER」のリハーサルと比べると長期間だが、おそらく連日リハーサルしたわけではないだろう。
小室も「REMASTER」の時よりはリハーサルに来ていたようだが、当時はKCOのアルバムの仕上げ段階だったはずで、万全な状態だったかは一考の余地がある。
ライブ音源も「REMASTER」と同様に、小室自身の関与は限定的だったかもしれない。
ライブアレンジがあまり派手に加えられなかったことは「REMASTER」と共通する。
演奏曲数が多くなったのも、オリジナルアレンジのまま1曲5分程度でこなしたことが関わるだろう。
また「Seven Days War」のように、「REMASTER」と同様のアレンジが行なわれた曲もあった。
ただ「Love Train」「Get Wild」のイントロは、そうる透と小室のセッションによる化学変化を見せており、注目される。
サポートメンバーの音が強く主張し、ロックバンドのライブとなっているのも、「REMASTER」との共通点と言える。
ツアーのコンセプトは「Double-Decade “NETWORK”」や「REMASTER」のように明言されなかったが、小室はMCで70年代ロックを意識したことを述べている。
「SPEEDWAY」自体が自らの音楽的ルーツに戻る作品だったことを考えれば、彼ら自身が若い頃に影響を受けた70年代風のライブを試みたものだったのだろう。
おそらくこれは先行する「REMASTER」においても意識されていたことと思われる。
本ツアーの見せ場であるジャムセッションも、70年代ロックを意識したものだった。
これは小室の提案によるものだったが、木根は「震・電気じかけの予言者たち」で、「70年代、ライブビデオもライブDVDもなかった時代、ライブ盤を聴いても、ライブ会場に足を運んでも、ジャムセッションがお約束だった。小室もそのイメージだったのではないだろうか」と述べている。
「Time To Count Down」イントロから「CAROL」「Malibu」につながるという大枠は決まっていたが、その演奏内容は即興の要素が大きく、毎回異なるものになった。
十数分間の各演者の競演は緊張感もあり、毎回楽しみな時間だった。
私がTMライブのインスト演奏で全体を商品化して欲しいものの筆頭に挙げたいのは、この時のものである。
ステージの背後には、「SPEEDWAY」のジャケットを意識した大きな時計のオブジェが置かれた。
これは「REMASTER」で用いられたものの再利用である。
ステージでは観客から見てウツが中央、小室が右、木根が左に立ち、その後方には左にそうる、右に北島がいた。
吉田建がいない以外は、「REMASTER」と同様の配置である。
衣装は、ウツは赤のYシャツの上に柄のある黒のロングジャケットを羽織り、小室は着崩した白のTシャツにベージュのジャケット、木根は黒のTシャツに赤のジャケットという出で立ちである。
小室はライブ終盤ではジャケットを脱いでTシャツ姿になった。
ただ各会場2公演あったため、別の衣装もあったと思われる。
ウツはジャケットの下に「REMASTER」武道館公演の黒シャツを着た日もあったらしい。
またアンコールでは、ツアーグッズのTシャツを着る日もあった。

本ツアーに関する情報は少ない。
小規模な会場で行なわれたこともあり、テレビや雑誌・webニュースなどでもほとんど取り上げられなかった。
ライブDVDも販売されていない。
最終日に撮影はされたから、DVDリリース自体は計画されていたはずだが(次のTMの活動時にリリース予定か)、その前に小室が詐欺罪容疑で逮捕され、TM25周年企画が流れたため、機会を逸してしまった。
ツアーのドキュメント本なども発売されず、後に出版された書籍でもこの時期への言及はない。
後追いのファンなどは、ツアーの存在自体に気が付かないかもしれない。
ただし2012年にTMが復活した時、4/24・25開催の「Incubation Period」で特典付きチケットを買うと、ニューシングル「I am」やライブパンフレットとともに、ライブDVD「TM NETWORK PLAY SPEEDWAY and TK HITS!! MEMBERS SELECTION!」を入手することができた。
これはツアーファイナルの2008/5/25のZepp Tokyo公演から11曲を抜粋したものである。
収録曲は「SPEEDWAY」楽曲を中心としている。
具体的な内容は以下の通りである(なおMC等は全部カット)。
「Action」「Teenage」「Pride in the Wind」「Close Your Eyes」「Girlfriend」「Seven Days War」「Kiss You」「Be Together」「Malibu」「Love Train」「Welcome Back 2」
特典DVDとしてはまずまずの収録内容と思うが、ここまで出したのならば残りの7曲も出してほしいと感じる。
特に私は「CAROL」「Malibu」「Love Train」の流れが大好きだったので、「CAROL」も含めてこの部分を通して見たいと強く願っている。
「Girl Friend」と並ぶレア曲だった「Resistance」や、そうるのドラムが加わった大迫力のイントロで始まる「Get Wild」も収録してほしかったところである。
また5/25以外には収録カメラが入っていなかったようなので商品化は不可能だが、日替わり曲の「Diving」「Red Carpet」もぜひ見たかった。
しかしこのツアーへの関心はファンの間で高くないこともあり、今後も完全版の商品化は絶望的だろう。
むしろこのツアーの映像を埋もれさせず半分以上を公式に発表してくれたことに感謝すべきかもしれない。
以上が本ツアーの概略である。
具体的なライブの内容については、次章で扱うことにしたい。

SPEEDWAY - TM NETWORK
TMで何かイベントがあったわけではないですが、木根さんはFacebookでTM37周年のコメントを出してくれています。
「いつかまた3人でみんなと会える日を楽しみにしてます」とのことです。
木根さんは4/10・11に、「K-Folk 2021」を開催しました。
予想されたことでしたが、直前になってニコ生配信の告知もありました。
今後のウツや木根さんのライブは、ニコ生配信を前提で行なうのがモデルになりそうです。
ウツの出演はアンコールのみで、年末のようなウツ歌酔曲VS木根フォークの採点コーナーなどはありませんでした。
今回はあくまでも「K-Folk」ですしね。
アンコールはオフコースの「眠れぬ夜」と、TMNの「Another Meeting」でした。
なお4/11のライブ中に告知されたそうですが、ウツが木根さんのラジオ番組「夜ドン!」に、5/9・23にゲスト出演します。
ウツは5/25から東名阪で「「それゆけ歌酔曲!!」ギア-レイワ3」を開催します。
ただ東京・大阪など4府県では、4/25から緊急事態宣言が発出され、公演も無観客で行なうことが要請されました。
現時点で緊急事態宣言は5/11までということになっていますが、どうなるでしょうか。
TM37周年記念日から数日遅れて、ウツFC版のライブBlu-ray「SPIN OFF T-Mue-needs」が会員に向けて発送されました(M-tresへの納品日は4/21だった模様です)。
私はFCには入っていないんですが、会員の方に買っていただき、入手できました(感謝!)。
やはりニコ生より落ち着いて見れますね。音も映像も良いです。
なお前回書きましたが、こちらのBlu-rayの通常版は、6/2リリースとなります。
メインディスクでは、休憩時間とメタルパビリオンの映像がカットされています。
そんなものいらないという方は多いと思いますが、調弦の時間に一瞬だけ演奏してくれた「さよならの準備」も聞けないのは、少しだけ残念です。
なおメタルパビリオンの映像は、エンドロールで少しだけ見ることができます。
FC版の特典ディスクは、メインディスクに収録された2020/12/2中野サンプラザ公演以外の15公演から、1曲ずつ(12/1中野公演のみ2曲)を収録したものです。
ただ大変残念なことに、全部3分程度のダイジェスト収録で、途中で切れるか途中から始まるかしています。
私としては、全曲中途半端な収録になるくらいなら、日替わり曲の「Rainbow Rainbow」「Looking At You」「You Can Dance」「Nervous」「We love the EARTH」の5曲だけを完全収録してくれた方が、数倍良かったです。
特に「Dress」のアレンジが混ざった「Rainbow Rainbow」は全部入れてほしかったですし、個人的には生でも配信でも見られなかった「We love the EARTH」も悔しいです。
ちなみにこの機会に数えてみたら、「SPIN OFF T-Mue-needs」の日替わり曲の演奏回数は以下の通りでした。
・「パノラマジック」:9回
・「Rainbow Rainbow」:7回
・「月はピアノに誘われて」:9回
・「Looking At You」:7回
・「You Can Dance」:8回
・「Nervous」:3回
・「We love the EARTH」:3回
・「Get Wild」:2回
特典ディスクの最後に収録された「年忘れ!!歌酔曲vsフォーク」の「Time Machine」の映像は、ちゃんと全部収録されていました。
ここはTM NETWORK3人での演奏ですし、さすがにカットしちゃいけないとわかっていただけたのですね…
一般流通はしない特典映像とは言え、公式の商品として残してくれて本当に良かったと思います。
次のTMにつながる前史として語るべき映像になると思います。
最後、小室さんですが、TM37周年記念日の眠れない午前2時の少し前、ふくりゅうさんがDJを務めるラジオ番組「Voice Media Talk」で、小室さんのリミックス音源「Running To Horizon (206 Mix)」が流れました。
こちら、先日小室さんがニコ生に出演した時に流したものの完成版で、ミックス名はニコ生の出演日2月6日に因んでいるそうです。
さらに番組内では、この音源が4/28にSONYから配信リリースされることも告知されました。
GW直前の小室さんからの贈り物というところでしょうか。
Spotifyなどサブスクリプションサービスでの配信の他、iTunes・mora・amazonなどでもダウンロードできます。
私は4/28に、早速聞いてみました。
上から即興でピアノをかぶせ、リズムセクションを強調したアレンジです。
私としては、ピアノを中心としたイントロ前半部分の演奏が好きです。
SONYのotonanoのサイトでは、配信に合わせて小室さんのメッセージが公開されました。
「原曲はテープではなく、ハードディスクレコーディング時代の最初期の音として誇れるサウンドだったと、今は思っています。その音を30数年たった今、2020年代に届ける機会を頂き、大変感謝しています」とのことです。
小室さん、今は歌詞の方向性で悩んでいるとのことでしたが、まずはこういう過去曲のリミックスから始めてみるのも良いかもしれません。
なお前回も書いたことですが、小室さんが出演した「玉置浩二ショー」が、5/1にBSプレミアムで放送されます。
BS 4K・BS 8Kで放送された前回は見られなかった方も多いと思うので(私も含め)、関心のある方は御覧ください。
以上がここ1ヶ月のまとめです。
では本題に入ります。
-----------------------
TM NETWORKのツアー「TM NETWORK play SPEEDWAY and TK Hits!!」は、2008/3/27~5/25の2ヶ月間で、9会場で18公演が開催された(その内の3/27・28横浜Blitz公演はFC限定)。
全会場2公演ずつ開催され、日替わり曲を設けて2パターンのセットリストが用意された。
当初発表されたのは5/18までの14公演だったが、後に5/1・2のSHIBUYA-AX公演と5/24・25のZepp Tokyo公演が追加発表された。
それまでのTMの活動歴において、オリジナルアルバムリリースの後は全国ツアーが組まれるのが常だったので、2007/12/5の「SPEEDWAY」リリース後には、ツアーを期待するファンも多かったはずである。
たとえば木根は12/5放送のレギュラーラジオ番組「木根尚登のMy Home Town」で、「TM NETWORK -REMASTER-」を終えた後、地方にも来てほしいというファンのメールを読み上げている。
だが木根はこの時点では、「REMASTER」は25周年(2009年)に向けてのリハビリなので、全国ツアーは25周年まで待ってほしいと述べていた。
「SPEEDWAY」がリリースされても、TMの全国ツアーは告知どころか計画にも言及されなかった。
小室は12/16にMySpaceで、翌年の大雑把な予告として「KCOのソロ、globeのRe-Start、TMのさらなるプログレス」を述べ、「TM、globe、新人のPurple daysをひきつれて ASIA TOURの予定もあるので」としてアジアツアー計画に言及しているが、TMの全国ツアーへの言及はない。
なおアジアツアー計画は2001年・2002年に表明された後うやむやになっていたものである。
妄想に類するものとしても、まだ考えていたとは驚きである。
ところが年が明けて2008/1/17、ウツと木根のオフィシャルサイトで、「TM NETWORK TOUR 2008 SPEEDWAY」の開催が告知された。
2008年の年明け早々に小室が同意したことにより、開催が実現したという。
逆に言えば、2007年中には小室が同意していなかったと考えられる。
小室は2008/1/2のMySpaceに、「来週」(1/6~12)にTMのDVD(4月リリースの「TM NETWORK -REMASTER-」か)について打ち合わせがあることを記している。
おそらくこの時に3人で話し合い、ツアー開催を決定したのだろう。
ツアースケジュールはツアー開催告知の半月後、2/1に発表された。
開催決定が年明けだった以上、会場は1月中に確保されたことになるが、1月の時点で3~5月の会場を押さえることができるのかは疑問もある。
しかもツアー日程は、会場が確保しづらい土日が中心となっている。
本ツアーに関しては情報が少ないので推測しかできないが、2007年の間に開催を想定して会場を仮押さえしていた可能性もある。
たとえば2003年にはTM20周年に先んじたTMの全国ツアーが計画されていたが、これが開催できなくなったため、ウツ・木根による「tribute LIVE」の会場に転用されたと考えられることは、以前述べた。
2007年にもTMのツアーを開催する可能性を想定して、翌年のツアー会場を仮押さえしていたのかもしれない。
またツアー会場の一部には、本来別企画で確保していた会場も含まれていたらしい。
たとえば小室は1/18のMySpaceで、KCOのソロ活動について以下のように告知している。
single will be 3/12 album will be 4/30
solo event will be 4/5 & 4/6 2days @blitz akasaka.
ここに見えるシングルは「春の雪」、アルバムは「O-Crazy luv」のタイトルで後にリリースされたが、これと前後して4/5・6には、赤坂BlitzでKCOのイベントが企画されていたことが知られる。
だがこの赤坂イベントは結局実現しなかった。
実際には4/5・6の赤坂Blitzでは、KCOのイベントではなく、TMのツアーが開催された。
1月下旬に何らかの事情でKCOのイベントが中止され、会場がTMのツアーに転用されたことになる。
他にも同様に転用された会場があった可能性は高いだろう。
TMのツアータイトルは、1月には「TM NETWORK TOUR 2008 SPEEDWAY」とされていた。
アルバム「SPEEDWAY」リリースに伴うツアーという趣旨である。
ところが2/1のツアースケジュール発表時に、このタイトルは「TM NETWORK play SPEEDWAY and TK Hits!!」に変更された。
ツアータイトルの趣旨は、文字通りに取れば「TM NETWORKがSPEEDWAYとTKのヒット曲を演奏する」ということである。
この場合の「SPEEDWAY」は、TM NETWORKの11枚目のアルバム「SPEEDWAY」の楽曲と、1979~81年に活動したバンドSPEEDWAYの楽曲の双方を含意するもので、実際にツアーでは1980年のSPEEDWAYの楽曲も演奏された。
だがここで注意を引くのは、「SPEEDWAY」よりもむしろ「TK Hits」であろう。
これは小室のソロ曲もしくはプロデュース曲・提供曲などを演奏するという意味に見える。
さらに当時の木根のオフィシャルサイトでは、ツアーの趣旨として以下のような文章が掲載され、ウツ・木根のソロ曲も演奏する可能性を匂わせた(「メンバーが歩んできたそれぞれの軌跡」の文言など)。
彼らがこれまでに作り上げてきた世界を
TM NETWORKからソロワーク、 そしてプロデュースまで、さまざまな形で魅せていきます。
TM NETWORKとして、最新アルバム「SPEEDWAY」を届けに・・・。
そしてメンバーが歩んできたそれぞれの軌跡を届けに・・・。
どんなステージが繰り広げられるかは会場で体感してください!
tribute LIVEでは2005年・2007年の「Spin Off from TM」「Spin Off from TM 2007」で、ソロ曲の演奏が定例化していたが、それと同様の試みが想定されていたものかもしれない。
もしもそうなれば、TMのライブとしては珍しい企画である。
(先例としては1992年の「EXPO Arena」で小室ソロの「永遠と名づけてデイドリーム」を演奏した例がある)
もっとも実際にはウツ・木根のソロ曲は演奏されず、「TK Hits」に当たるのは小室のソロ曲のインスト演奏1曲(日替わり)のみだった。
この程度ならば、ツアータイトルにあえて「TK Hits」を入れる必要もなかったように思うが、当初の計画では「TK Hits」をより前面に出す案もあったのかもしれない。
本ツアーの特徴として、TM史上唯一のライブハウスツアーだったことが挙げられる。
ウツや木根のソロツアーやtribute LIVEは、すでにライブハウスが中心になっていたが、TMのフルライブはこれまでホールやアリーナで行なわれており、ライブハウスで行なわれたのは、1992年に日清パワーステーションで開催された特別企画「TMN Folk/Metal Pavilion」くらいしかない。
ツアーの会場の大部分はZeppなので、一般のライブハウスと比べれば大規模だが、従来と比べれば観客とTMの距離が近いライブだったということができる。
ツアーの動員規模としては、tribute LIVEの「Spin Off from TM 2007」と同程度であり、TMの動員力への期待値が下がっていたように見える。
日替わり曲を設けて各会場2公演行なうという形式も「Spin Off from TM 2007」と同じである。
観客にとっての大きな変化としては、客席の多くが立見になったことが挙げられよう。
ただし客席前方にはパイプ椅子が置かれ、指定席も設定された(ライブハウスなら前方にスタンディングエリアが設けられることが普通だろうが)。
指定席と立見の比率はよく分からないが、各会場の動員数は1000~2000人程度と見られる。
18公演合わせて2~3万人というところだろう。
延べ人数では「TM NETWORK -REMASTER」と同程度ということになる(パシフィコ横浜5000×2+CCレモンホール2000×2+武道館1万=2.4卍)。
ただし本ツアーでは1本だけ、ホール会場での公演も予定されていた。
4/29のiichiko大分グランシアタ公演で、3月になって渋谷・東京各2公演とともに追加公演として発表された。
4/26・27にはZepp Fukuoka公演があったが、この会場は1Fを全席立見にしても1526人の規模で、実際には指定席を入れて1000人前後の動員だったと見られる。
これに対してグランシアタは全席指定席で2000人規模の会場だから、1日で福岡2日分を動員しようとしていたことになる。
また全ツアー日程中で、大分のみ1日だけの開催という点も特異である。
大分がKCOの実家であることを考えると、これは赤坂Blitzと同様に、本来はKCOのソロライブ会場として確保していたものだったのかもしれない。
グランシアタ公演翌日がKCOのアルバム「O-Crazy luv」のリリース日だったから、これと連動するライブが予定されていたのではないか。
TMの大分公演は、結局中止された。
TMの単独ライブが公式発表後に中止されたのは、後にも先にもこの時しかない(延期の例はある)。
中止告知は3/31に行なわれ、その理由は「スケジュールの確認ミスにより、急遽公演を中止せざるをえない状況となりました」というものだった。
だが「スケジュールの確認ミス」という説明が事実かは、大いに疑問である。
福岡公演の直後で、しかも大分という地の利の悪さもあり、申し込みが少なく、客席が埋まる見込みが立たなかったのだろう。
グランシアタの規約(当時)では、会場使用30日前を過ぎると利用料金全額をキャンセル料として取られることになっていたため、30日前の3/31に中止の決定を下したと考えられる。
他の地方公演は、仙台・札幌・福岡・名古屋・大阪の5会場だった。
広島を入れず大分を入れたのはさすがに不自然な日程だが、関西以西の公演をあえて減らし、ファンを大分公演に集中させようとしたのかもしれない。
サポートメンバーとしては、ギター北島健二とドラムそうる透が参加した。
ベースの吉田建が参加しなかったことを除けば、「TM NETWORK -REMASTER-」と同じ面子である。
このツアーではサポートメンバーを加えての「CAROL」のインスト演奏など、「REMASTER」と同様の演出も見られた。
「SPEEDWAY and TK Hits!!」は「SPEEDWAY」のアルバムツアーとして企画されたものだが、実際に1公演で演奏された「SPEEDWAY」楽曲は、18曲中の4~5曲に留まった。
「REMASTER」武道館公演でも、SEの「Malibu」を入れれば4曲演奏されたから、アルバム「SPEEDWAY」の比率はほとんど変わらない。
しかも「SPEEDWAY」楽曲は多くライブ序盤に演奏されており、終盤を盛り上げる楽曲の大部分は過去のヒット曲だった。
このライブを通して見た時、その看板とは裏腹に、アルバム「SPEEDWAY」のツアーという印象は非常に薄かったと言わざるを得ない。
それだけ新曲を前面に出すことに自信がなかったということだろうか。
この点で、私は当時大変がっかりしたことを覚えている。
結局このツアーはアルバムツアーの体を装いながら、実質的にはヒット曲を中心に組み立てた「REMASTER」と大差ない内容だった。
ウツもこのツアーについて、基本となる核は「REMASTER」から続く流れで、自分たちとしてもまったく新しいツアーがスタートしたという感じではない、と発言している。
演奏曲は「REMASTER」とかぶっているものもあった。
具体的には、当時定番曲化していた「Self Control」「Get Wild」「Be Together」や、「REMASTER」で目玉とされた「Beyond The Time」の他、「Seven Days War」「Come On Everybody」「Love Train」「Welcome Back2」「Action」は重複する。
またアレンジは異なるものの、インスト曲として「CAROL」が演奏されたのも同じだった。
ただ以上を合わせても、全公演で演奏された22曲(日替わり曲を含む)の中の10曲に過ぎず、半分以上の演奏曲は変更されたことになる。
この点は意識的に選曲を変えてきたのだろう。
特に「Girl Friend」をTMのライブでバンド演奏したのは、1988年の「STARCAMP TOKYO」の1公演のみであり、知名度の割には非常なレア曲だった。
「Resistance」も、シングルで人気曲だったにもかかわらず、「TMN 4001 Days Groove」「Log-on to 21st Century」など記念ライブではことごとくセットリストから外されており、1988年の「Kiss Japan Dancing Dyna-Mix」以来の演奏となった。
この2曲の演奏は、極めて貴重だったといえる。
「SPEEDWAY」収録の「Diving」「Priide in the Wind」「Red Carpet」「Teenage」「Malibu」は、このツアーでしか演奏されたことがない。
SPEEDWAYの「Close Your Eyes」も、TMのライブで演奏されたのはこの時しかないが、ウツのソロツアーでは演奏されたことがあり、ウツが気に入っている曲なのだろう。
だがSPEEDWAY楽曲が聞ける珍しい機会だったことを考えれば、他の曲を選んでほしかったようにも思う(「Captain America」「Smile Again」など)。
ライブの時間は2時間超で、初日公演の曲数はSEを除き16曲だった。
ただしセットリストの見直しにより、2日目に「Come On Everybody」が追加され、さらに4/27からは「Malibu」が追加されたため、最終的には18曲になった。
これは2000年代のライブでは、19曲演奏された2004/6/25「Double-Decade Tour Final」に次いで多い曲数である。
2010年代では「START investigation」「Quit30」の演奏曲数はこれよりも多いが、それは短時間の楽曲で構成される「CAROL」組曲や「Quit30」組曲を演奏したためである。
1999年の再始動以後のライブで実質的にもっとも多くの曲を複数会場で演奏したのは、「SPEEDWAY and TK Hits!!」だったことになる。
リハーサルはツアー初日半月前の3/13から始まり、3/24に終わったことが知られる。
5日で終わった「REMASTER」のリハーサルと比べると長期間だが、おそらく連日リハーサルしたわけではないだろう。
小室も「REMASTER」の時よりはリハーサルに来ていたようだが、当時はKCOのアルバムの仕上げ段階だったはずで、万全な状態だったかは一考の余地がある。
ライブ音源も「REMASTER」と同様に、小室自身の関与は限定的だったかもしれない。
ライブアレンジがあまり派手に加えられなかったことは「REMASTER」と共通する。
演奏曲数が多くなったのも、オリジナルアレンジのまま1曲5分程度でこなしたことが関わるだろう。
また「Seven Days War」のように、「REMASTER」と同様のアレンジが行なわれた曲もあった。
ただ「Love Train」「Get Wild」のイントロは、そうる透と小室のセッションによる化学変化を見せており、注目される。
サポートメンバーの音が強く主張し、ロックバンドのライブとなっているのも、「REMASTER」との共通点と言える。
ツアーのコンセプトは「Double-Decade “NETWORK”」や「REMASTER」のように明言されなかったが、小室はMCで70年代ロックを意識したことを述べている。
「SPEEDWAY」自体が自らの音楽的ルーツに戻る作品だったことを考えれば、彼ら自身が若い頃に影響を受けた70年代風のライブを試みたものだったのだろう。
おそらくこれは先行する「REMASTER」においても意識されていたことと思われる。
本ツアーの見せ場であるジャムセッションも、70年代ロックを意識したものだった。
これは小室の提案によるものだったが、木根は「震・電気じかけの予言者たち」で、「70年代、ライブビデオもライブDVDもなかった時代、ライブ盤を聴いても、ライブ会場に足を運んでも、ジャムセッションがお約束だった。小室もそのイメージだったのではないだろうか」と述べている。
「Time To Count Down」イントロから「CAROL」「Malibu」につながるという大枠は決まっていたが、その演奏内容は即興の要素が大きく、毎回異なるものになった。
十数分間の各演者の競演は緊張感もあり、毎回楽しみな時間だった。
私がTMライブのインスト演奏で全体を商品化して欲しいものの筆頭に挙げたいのは、この時のものである。
ステージの背後には、「SPEEDWAY」のジャケットを意識した大きな時計のオブジェが置かれた。
これは「REMASTER」で用いられたものの再利用である。
ステージでは観客から見てウツが中央、小室が右、木根が左に立ち、その後方には左にそうる、右に北島がいた。
吉田建がいない以外は、「REMASTER」と同様の配置である。
衣装は、ウツは赤のYシャツの上に柄のある黒のロングジャケットを羽織り、小室は着崩した白のTシャツにベージュのジャケット、木根は黒のTシャツに赤のジャケットという出で立ちである。
小室はライブ終盤ではジャケットを脱いでTシャツ姿になった。
ただ各会場2公演あったため、別の衣装もあったと思われる。
ウツはジャケットの下に「REMASTER」武道館公演の黒シャツを着た日もあったらしい。
またアンコールでは、ツアーグッズのTシャツを着る日もあった。

本ツアーに関する情報は少ない。
小規模な会場で行なわれたこともあり、テレビや雑誌・webニュースなどでもほとんど取り上げられなかった。
ライブDVDも販売されていない。
最終日に撮影はされたから、DVDリリース自体は計画されていたはずだが(次のTMの活動時にリリース予定か)、その前に小室が詐欺罪容疑で逮捕され、TM25周年企画が流れたため、機会を逸してしまった。
ツアーのドキュメント本なども発売されず、後に出版された書籍でもこの時期への言及はない。
後追いのファンなどは、ツアーの存在自体に気が付かないかもしれない。
ただし2012年にTMが復活した時、4/24・25開催の「Incubation Period」で特典付きチケットを買うと、ニューシングル「I am」やライブパンフレットとともに、ライブDVD「TM NETWORK PLAY SPEEDWAY and TK HITS!! MEMBERS SELECTION!」を入手することができた。
これはツアーファイナルの2008/5/25のZepp Tokyo公演から11曲を抜粋したものである。
収録曲は「SPEEDWAY」楽曲を中心としている。
具体的な内容は以下の通りである(なおMC等は全部カット)。
「Action」「Teenage」「Pride in the Wind」「Close Your Eyes」「Girlfriend」「Seven Days War」「Kiss You」「Be Together」「Malibu」「Love Train」「Welcome Back 2」
特典DVDとしてはまずまずの収録内容と思うが、ここまで出したのならば残りの7曲も出してほしいと感じる。
特に私は「CAROL」「Malibu」「Love Train」の流れが大好きだったので、「CAROL」も含めてこの部分を通して見たいと強く願っている。
「Girl Friend」と並ぶレア曲だった「Resistance」や、そうるのドラムが加わった大迫力のイントロで始まる「Get Wild」も収録してほしかったところである。
また5/25以外には収録カメラが入っていなかったようなので商品化は不可能だが、日替わり曲の「Diving」「Red Carpet」もぜひ見たかった。
しかしこのツアーへの関心はファンの間で高くないこともあり、今後も完全版の商品化は絶望的だろう。
むしろこのツアーの映像を埋もれさせず半分以上を公式に発表してくれたことに感謝すべきかもしれない。
以上が本ツアーの概略である。
具体的なライブの内容については、次章で扱うことにしたい。

SPEEDWAY - TM NETWORK
この記事へのコメント
SPEEDWAYツアーのDVD、知り合いからお借りして見たのですが、想像以上に良かったのでびっくりしました。
恐らく非売品、販促品という扱いのため全曲収録されず編集も予算的に厳しい状況だった筈なのでしょうが、世に出してくれた事自体後追いとしては非常に有り難いです。(本文に書かれている未収録の楽曲も世に出る機会があれば...とも思ってしまいますが)
圧巻だったのがMALIBUでの小室さんと北島さんとのソロの掛け合いで、このお二人のTM以前からの関係を思うとグッとくるものがあります。
余談ですがいつかこのDVDは手に入れねばと思った矢先に都内某所でDVD未開封のパンフが置いてあってあっさり入手できました。。
最後に、リマスター期と合わせてこの時期のライブはもっと評価されて欲しいと思っています。
このツアー、私は大阪の1日目に行きました。開演直前に着くと、小さい会場であったにもかかわらず当日券が出ていて複雑な心境になりました。ライブの記憶も、ほとんどないです。確か、1曲目がCome on Everybody だったかな、というくらいです。ちなみに、東京ファイナルはチケットを持っていたのですが、大阪公演を見た後に売り払ってしまいました。今思い出しても、「TM NETWORKはもう終わった」という印象しか残りませんでした。1度見れば充分、という気持ちで、その日は赤坂で Riverdance の公演を見た記憶が残っています。
その後、逮捕を経て、2012年に武道館のライブが告知された時には、「またSPEEDWAYの時のようなものだろう」と思って、二日目だけのチケットを取りました。が、念のため初日も見ておこうと思い直して、両日とも見たのですが、、、、本当に素晴らしい内容でした。
やはり、2008年頃の先生は、迷走していたのだろうと思います。
今回の記事を見ながら、話題の Timemachine の映像を見たのですが、とても感動しました。静かな演奏なのに、メンバーと会場の気持ちがものすごく詰まっているように感じました。
何度も沈んで、復活してきた TM NETWORK の今後に、期待したいと思います。
インキュベの2日目には行ってたので、苗場イベントみたいに会場限定発売なら買えたんですが、当時はそれを知らなかったので入手できず…
やはりリアルタイムで常に情報を追わないとこういう所で後追いの人間は泣きを
見る事になりますね…
一部とは言え映像化してるのはBANG THE GONGやKISS JAPAN、EXPOツアーが全く映像化していないのを考えるとありがたいですよね。
ちょうど今、この記事が書かれている当時の記事、4期を読んでいたので、個人的にタイムリーです。(特に近況の部分)
このライブDVD、某動画サイトにアップされていて、見ることができました。一般に売られていない上、一般発売も絶望的なのは残念です。
個人的にプレイヤーとしての小室さんや木根さんも好きなので、セッションをもっと見たかった。
TMは、今回のSPINNOFFも含め、特典の仕方が微妙ですよね。その出し惜しみはなんなのか。惜しんでそののち出す気はあるのか。見に来てくれた人特別扱いにしても、見に行った人も見たいだろうに。
会場も狭いですし、他の方のコメントにもありますが、
当日券があったなんてこの頃のTMに対する期待の無さがわかりますね。
インキュベパンフの付録で付いてたDVDは今やお宝扱いでしょうか。
その後のインキュベから30TH FINALのライブを観ると、
やはりモチベーションって大事なんだなと実感しますね。
今の哲ちゃんはモチベーション上がり気味でしょうから、
今年中に何か動きがあると嬉しいな。
SPEEDWAYツアーは、ライブの中身は正直面白くなかったんですが、小室さんはプレイヤーとしては意外と積極的に演奏してくれていて、サポートの演奏もあわせて、演奏を見るライブとしては見るべきものがあったんじゃないかと思います。
DVDは、Malibuを収録してくれたのは本当にうれしいところです。
北島さんと小室さんは、STAY時代なんかには同様のプレイもやっていたのかもしれませんね。
>やまびこさん
東京ファイナルのチケを人に譲ったとは、よほど絶望されていたんですね。
いや、まあ、私も当時はブログでめちゃ批判していましたけど…
ただ私は逆に、これでTMの活動が終わるという変な予感が働いて、何公演も見に行きました(その予感は半ば的中しました)。
不満は大いにありましたが、SPIN OFF以上TM以下のライブという感じでしょうか。
2012年の九段下で偶然お会いした時は、やまびこさんが大変満足気で嬉しそうだったことを覚えています。
私もその時は、本当にTMが復活したと、感激していました。
>氷山さん
SPEEDWAYのDVDは、incubation Periodのパンフ(特典付き)を検索すれば、結構中古で出ていると思います。
特典付きパンフのチケットの方が良席が期待できたため、2日ともそれで申し込んで、同じパンフを2つ持っている人が結構いるはずなので。
>みーこさん
動画、アップされているんですね。
売られていないから取り締まられてもいないんですかね。
ライブ会場のみ入手可能ていう商法、いかにもavexですよね。
2013年にはGreen Daysのシングルを会場のみ販売というのがあり、表題曲とカップリングのI am 2013は後にCD化されたけど、I am (TK EDM Mix)は未だにこのシングルでしか聞けません。
将来何かの特典に使うのかもしれませんけども、私も残念に思っています。
>椎名さん
TMのライブでTKを入れないで欲しいてのは、私も思いました(当時ブログでも書いていました)。
当初の計画では普通にTKプロデュース曲をやることを考えていた可能性もあると思います。
この頃と比べると、30周年は本当にすばらしかったですね。
じっくりと企画できたことも大きいのかなとも思います。
自分はREMASTERツアーで初めて生のTMを見て、続けてSPEEDWAYツアーも複数回見に行ったので、思い出深いライブです。
この時の「DIVING」がすごくかっこよくて印象に残っています。原曲をベースに生ドラムを加えたバンド用のアレンジだったと記憶してますが、こういうシンプルかつ効果的なアレンジを施せるところにミュージシャンとしての地力を感じました。残念ながら映像は撮影されてないようですが、音源だけでも何らかの形で日の目を見て欲しい一曲です。
小室さんの演奏力もまだまだ健在だったし、個人的にはライブハウスの近い距離感で見られたことや初参加の新鮮さもあって総じてポジティブな印象なので、ちゃんとした形とタイミングでツアーのDVDがリリースされてたらなぁ、と今でも思います。
SPEEDWAYツアーはサポートが実力者揃いで、演奏はしっかりしていたと思います。
当時は小室さんのやる気がないとか非難する人が多かったですが(20周年の演奏スタイルの記憶だけで非難し続ける人がいました)、実際にはちゃんと演奏に参加していたと思います。
ただこの時ちょっと残念だったのは、小室さんがコーラスに全然参加しなかったことです。
TeenageとかRed Carpetとか、CDであれだけ歌っているんだから、ライブでも歌えばいいのに…
ちゃんとしたライブDVDが欲しいというのは、本当にそう思います。
エイベは商品化しないものすら見せないって方針本当に嫌いです。
ちゃんと商品化するなら買うのに…
SONYは逆にその辺は寛容ですね
もしもまた見つけたら、すぐにDLしておくことをお勧めします。
ちゃんと商品化して欲しいですね。